昆虫食 美味? ブームの予感

番メニューのイナゴ(左)と蜂の子

オオグソクムシの姿揚げ

 蜂の子やイナゴなど古くから農村部を中心に根付いてきた昆虫食に、注目が集まっている。長野県伊那市では昆虫食を見つめ直そうと「大昆蟲(こんちゅう)食博」が開かれ、東京の若者向け居酒屋ではイナゴのつくだ煮などが人気メニューに。世界でも国連食糧農業機関(FAO)が貴重な食料資源として昆虫食の普及を呼び掛ける他、宇宙食としての研究も始まっており、“未来の食材”として期待が集まる。
 

居酒屋 人気メニュー FAO 飢餓救う食材


 東京・高田馬場で野生鳥獣の肉(ジビエ)料理を提供する居酒屋「米とサーカス」には、昆虫食を目当てに多くの客が来店する。人気は「6種の昆虫食べ比べセット」。定番のイナゴのつくだ煮に加え、ゲンゴロウやタガメの素揚げなどを提供する。値段は1780円と安くないが、客は“意外な美味”に満足げだ。

 同店は2016年のバレンタイン企画で「イナゴ載せチョコ」が好評だったのを機に、昆虫メニューを定番化。広報担当の宮下慧さんは「変わったものを食べたいというニーズが根強い。そのままの形を楽しんでもらえるよう、調理している」と手応えをつかむ。

 古くから昆虫食文化が根付く長野県の加工食品メーカーでも、需要に供給が追い付かない状況だ。伊那市でイナゴや蜂の子、ざざ虫などの加工品を製造・販売する塚原信州珍味は「原料が足りない」とうれしい悲鳴を上げる。「売り上げは数年前の倍以上に伸びているが、仕入れ先の高齢化で原料調達が課題」とみる。同社の塚原保治社長は、近年のブームについて「FAOの提唱が報道された頃から引き合いが強まった」と感じている。

 昆虫食が食料不足を解決する──と、FAOが飢餓撲滅の重要な食料資源として食用昆虫の普及を提案したのは12年。世界各地では、昆虫を直接食用する試食会や昆虫成分を混ぜ込んだ加工食品の開発に力を入れる。

 FAO調査によると昆虫を食用として利用する国は、アジアで29カ国、アフリカで39カ国、南米が23カ国。利用者数は25億人に上る。国別で最も多いのが中国で、次にタイ、日本、南アフリカの順だ。アジアでは主にコオロギやミミズなどを食用や薬用として使うのが特徴だ。オーストラリアの先住民も、食用昆虫をそのまま食べる習慣がある。(福井達之)
 

蜂の子、ざざ虫・・・ 無駄ない生活 「知って」 “本場”の長野県伊那市で展示会


 長野県伊那市の社会教育施設「創造館」は、地元地域や世界の昆虫食文化を紹介する「大昆蟲食博」を5月上旬まで開いている。伊那谷(伊那盆地)で生活の一部として受け継がれてきた昆虫食を見つめ直す展示会として同館が企画。採取に使う道具や食材となる虫の写真、標本などを展示して、昆虫食の豊かさを伝えている。

 この地域と関わりの深い食材では、イナゴ、水生昆虫の幼虫のざざ虫、蜂の子、蚕のさなぎなどを紹介。昆虫食は樹脂で固めた標本や写真、映像などを用意して、リアルに伝えた。見学に訪れた人は、食卓にざざ虫やイナゴのつくだ煮が盛られた様子に、目を見張っていた。

 東南アジアを中心にした世界のコーナーでは、ラオスのカブトムシ、ゲンゴロウ、セミ、カンボジアのタランチュラ、コオロギ、サソリなどを展示。タイではコオロギが美食とされ、その粉末を2割も配合したパスタがあるという。

 同館館長の捧(ささげ)剛太さん(58)は、この企画展に向けて信州大学農学部をはじめ各地の研究者を取材した。蚕を例に挙げ「さなぎを食べる他にも食用油を取ったり、ふんをお茶にしたりするなど無駄にする物はなかった」と先人の工夫を解説する。

 捧さんは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に、昆虫を宇宙食に活用する研究を取材したこともある。既に蚕のさなぎは宇宙食として研究が進み、宇宙で飼育することを想定した試験が始まっていることも展示で紹介した。「昆虫食は未来に向けた文化であることを、この企画展から学んでほしい」と力を込める。

 同展は5月7日まで、午前10時~午後5時。毎週火曜日は休館。入場無料。問い合わせは同館、(電)0265(72)6220。

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