経営多角化の支援強化 専門家チームを派遣 農水省
2018年01月10日

農水省は、法人化や規模拡大、6次産業化といった新たな経営展開を目指す農家への支援体制を強化する。各県域で農業・商工団体と行政一体で経営相談の窓口を設置。そこでの相談内容を踏まえ、専門家で支援チームをつくり、農家に派遣する。1カ所の相談窓口で、幅広い経営課題に対応できる体制を整え、効果的、効率的な支援につなげる。
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その男の真骨頂は三振の多さだろう。プロ野球生活で通算1587三振。フルスイングを貫いた衣笠祥雄さんが逝った▼語り継がれる三振がある。1979年8月1日、広島・巨人戦。西本聖投手の投じた宝刀シュートが死球となり、衣笠選手は左肩を骨折する。誰もが連続出場記録は途絶えたと思ったが、翌日代打に立つと、3球全てフルスイングで三振した。のちに衣笠さんは語る。「1球目はファンのために、2球目は自分のために、3球目は西本君のために振りました」▼西本さんには一生忘れられない言葉になった。「あれほど驚き、感動し、感謝した三振はありません」と日刊スポーツに追悼文を寄せた。常に死球を恐れず立ち向かう。ハードルを乗り越えるたびに力がつくと努力を惜しまなかった▼「無事これ名馬」を体現した衣笠さんこそ「鉄人」の称号にふさわしい。引退の時、「野球の神様に感謝します」と言ったが、広島カープファンならずとも、多くの人が不屈の闘志に勇気をもらった▼「どんな時でも投げてくる球をしっかり見据えて、フルスイングしないと何も残らない。明日につながらないんです」。失敗を恐れず全力で挑む人に明日は開けると教えてくれた。赤いヘルメットを飛ばしたあの豪快な三振が眼裏(まなうら)に浮かぶ。
2018年04月26日

野党 種子法復活案を提出 来週審議入りめざす
立憲民主、希望の党など野党6党は19日、今年度から廃止された主要農作物種子法(種子法)を復活させる法案を衆院に提出した。米、麦、大豆の優良種子の安定供給を都道府県に義務付けてきた廃止前の内容を骨格とする。「現場では都道府県による種子生産が後退するとの不安が大きい」とし、法案をまとめた。早ければ来週にも開く衆院で審議入りを目指す。
2018年04月20日
TPP以上拒否 焦点 与党冷静、野党は批判 日米新協議
日米首脳会談で、日米貿易を巡る新たな協議の開始が決まり、与党は「想定内」と比較的冷静に受け止め、環太平洋連携協定(TPP)を超える譲歩は受け入れない姿勢を改めて強調した。一方、野党は「米側の要求をのみ、事実上の2国間協定を受け入れた」と一斉に批判。国会で厳しく追及する方針だ。
今後の日米間の貿易の在り方について、日本はTPP、米国は2国間協定をそれぞれ求め、両者の意見に隔たりが出ている。「想定の範囲内だ」。自民党の議員連盟「TPP交渉における国益を守り抜く会」会長の江藤拓氏(衆・宮崎)は冷静に受け止めている。今回の新協議は日本側が提案し、その通り設置が決まった。
一方、「(2国間交渉に)一歩踏み出したとも取れる」と指摘する。「(国内で)TPPを受け入れるのにどれだけ苦労したか。TPPがギリギリの線。それ以上は絶対あり得ない。体を張って止める」と語気を強めた。
日本は米国にTPP復帰を促すため、発効を急ぎたい考え。このため今国会に提出した協定承認案と関連法案の早期成立を目指している。
公明党のTPP等総合対策本部長を務める石田祝稔政調会長は「(日本としては)国会に提案されているTPP11の審議を粛々と進めていく」と強調。「(米国が)現在のTPPの枠組みに戻ってくるのはいいが、TPPを超える2国間交渉を考えることは絶対にできない」とけん制した。
一方、立憲民主党の佐々木隆博副代表は「『米国にTPPに復帰してもらう』などと強気で言いながら、結果的には米国に押し込まれた。実質的に自由貿易協定(FTA)交渉に踏み出した」と批判。「協議の場ができた以上、米国にとっての成果を求められる。国益に反した方向になるのは明確」と国会で厳しく追及する考えを示した。
「通商分野は厳しい結果だ」。希望の党の玉木雄一郎代表は、ツイッターでそう強調した。さらに「安倍(晋三)総理は面前でトランプ大統領からTPPには戻らないと明言され、さらに事実上、2国間協定に向けた協議を約束させられ、それなのに(米国が日本に課した)鉄鋼・アルミニウムの輸入制限(からの除外)は勝ち取れなかった」と批判。米側が市場開放圧力を強めてくることを念頭に「牛肉と自動車は要注意だ」と指摘した。
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日米、貿易新協議へ 「TPP」「2国間」溝鮮明
2018年04月20日
図書館にはいろいろ人生模様がある
図書館にはいろいろ人生模様がある▼今日こそは一番乗りだろうと思っても、既に新聞を読んでいるシニアの人が結構多い。衰えない向学心ならいいが、居場所探しも結構多いと聞く。先日、拡大鏡を使って丹念に新聞を読む白髪の人に声を掛けられた。「お仲間ですな」▼若者の本離れが一段と進む。全国大学生協連の調べでは半数以上の大学生が1日の読書時間が「ゼロ」。同志社大学准教授の浜島幸司さんは「高校までに読書習慣のない大学生が入学している」と見る。確かに調べ物はスマホで足りる。「読書はしなければいけないものなのか?」。若者の新聞投書にびっくりした元中国大使の丹羽宇一郎さんは、読書は「知」を鍛え、「真に自由な世界に導いてくれる」(『死ぬほど読書』)と諭す▼出版社6社のフェア「教養はチカラだ!」の小冊子は、それぞれの編集長が「こんな時に読むとチカラになる」60冊を紹介する。スマホいじりに飽きた時に勧めるのが『浮世絵鑑賞事典』(角川ソフィア文庫)。絵の見どころや必須の知識を直木賞作家の高橋克彦さんが手ほどきする▼本はヒントの宝庫。それを手にできるのは読んだ人だけである。きょうは、子ども読書の日。小さい時からの本を読む習慣が大切である。親の手本が導く。
2018年04月23日
改正介護保険法 利用者に不安与えるな
改正介護保険法が4月、スタートした。介護保険財政の逼迫(ひっぱく)は深刻な現実だが、給付費削減へ向けて利用者や事業者に負担を求めるだけでは課題は解決しない。「介護の社会化で生活の質を高める」という創設の原点に立ち返って、「地域福祉」の在り方を考える必要がある。
今回の制度改定は「2025年問題」への対策が柱。自己負担額の見直しや、介護予防を強化し「自立支援」に積極的に取り組む事業者への報酬を手厚くすることなどが特徴だ。
「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳以上となって超高齢社会が到来し、介護や医療など社会保障の給付と負担が一段と増すことを指す。25年には、75歳以上が約2200万人になるという推計があり、総人口に占める割合は2割。1割だった10年に比べると、急速に高齢化が進んでいく。
この問題を視野に入れた主な改正のポイントは、自己負担額での3割負担の導入や、介護予防による「自立支援」を重視したことだ。医療との連携や、リハビリテーションの強化で介護不要な状態までの改善を目指し、成果を上げた事業者へ報酬を手厚くする。
だが、事業者が改善の見込みがある人だけを選んだり、保険料を払っても望むサービスを受けられなくなったりする懸念がある。身体的な介護予防に力点を置いた場合、認知症の人への支援はどうするのかなど、さまざまな課題がある。
介護保険制度は2000年にスタート。背景にあったのは、①家族介護で特に女性に重い負担がかかる②在宅介護ができないと病院へ(社会的入院)③病院で尊厳が軽視される──といった社会状況だった。
制度導入前、介護は家族内の問題であり、“できれば家の奥に隠しておきたいこと”だった。取材を受けてくれる家族を探すのも困難だった。公的介護サービスが当たり前になっている現在と比べると、制度が定着していることを実感する。状況は明らかに改善した。
一方で、3年ごとに行われる制度の見直しが財政面にばかりに目が向くきらいがある。制度の安定的な運用は重要だが、「高齢者自らがサービスを選び、決定することで尊厳が守られる」とした制度の理念を置き去りにするようなことは許されない。介護サービスを必要とする高齢者が安心して利用できる制度が「尊厳」の出発点となる。
介護の目的は食事や排せつ、入浴などの支援(サービス提供)だけにあるのではない。人と人の良い関係に基づいた支援により、人間らしい生活を送ることにある。地域に密着したJAの強みは、このような関係性を築いてきたことだ。
地域の食と農を生かし、女性部パワーを活用したきめ細かな対応で、利用者に喜ばれる高齢者支援活動を続けていきたい。
2018年04月21日
農政の新着記事

全国一律 見直し提言 飼料米“誘導”を問題視 転作助成で財政審
財務省の審議会が25日、米政策の見直しで提言をまとめた。飼料用米に対して国が全国一律に措置する助成金について、飼料用米による転作を過度に誘導していると課題を提起。野菜や麦など需要がある作物の増産が各産地で進むよう、飼料用米を含む転作作物の助成単価について、都道府県が決められる仕組みを検討するよう求めた。
2018年04月26日
異業種間で労力融通 繁忙期に相互支援 北海道・留萌モデル地区
経済産業省北海道経済産業局と北海道は、労働力不足に対応するため、農林水産や食品加工、建設などの異業種間で労働力をマッチングし合う仕組み作りに乗り出す。各業種の繁忙期や閑散期などを“見える化”し、兼業や副業、派遣など多様な勤務形態で支援し合う。モデル地区を留萌地方で立ち上げる方針で、地元JAなど各業界団体などが同市で24日、初会合を開いた。2019年度に運用を始める計画だ。
道内の労働力確保が大きな課題となっているため、同局では、異業種の支援に着目。モデル地区では、留萌地方8市町村の他、管内のJA南るもいやJA苫前町、JAオロロン、JAてしお、漁協、森林組合、商工会議所、建設協会などが「留萌管内働き手対策検討会」を設立し推進する。
具体的には、工事の受注が少ない時期に建設業者の社員が農作業を手伝ったり、農家が農閑期に海産物の箱詰め作業を担ったりする環境をつくる。今年度は、参加団体の協力を得て、各業種の繁忙期や閑散期などを調査し、マッチングする方法や賃金、副業や兼業を進めるための課題などを洗い出す。地元企業の経営者らの理解を得るためのセミナーも開く予定だ。来年度以降、兼業などで生じる労務上の課題について社会保険労務士らが経営者らに助言する機会も設ける。
会合では、参加団体が各業界の人手不足の状況を報告。改善に向けて協力を確認した。北海道経済産業局は「個人のキャリアアップではなく、地域の担い手を確保するという観点で兼業などの働き方改革を進めたい」(地域経済部)としている。
2018年04月25日
新たな日米協議 閣僚会合、6月以降 「FTA念頭にない」 TPP担当相
茂木敏充TPP担当相は24日の閣議後会見で、日米の新たな貿易協議について、閣僚級の初会合は6月以降になるとの見通しを示した。新協議で米国側は日米自由貿易協定(FTA)も念頭に、2国間協議で農産物の市場開放を求めてくる可能性がある。茂木担当相は「2国間のFTAは念頭に置いていない」と述べ、FTAに意欲的な発言が相次ぐ米国側をけん制した。
新協議は、日米首脳会談で合意。茂木氏と米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が担当する。茂木氏は、閣僚級の初会合について「6月中旬以降になるだろうと(米国側に)話をしている」と明かした。その理由について「わが国の国会の日程であるとか日米双方で準備を行う必要がある」と述べた。
政府関係者によると、森友・加計学園の問題などで混乱が続く中、今国会会期中での開催は難しい。今国会で環太平洋連携協定(TPP)の国内手続きを完了させた後で新協議に臨み、米国に復帰を改めて呼び掛けたい思惑もある。米国側も北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、まだ新協議に臨む余裕はないとみられている。
11月に中間選挙を控える米国では、日本に大幅な市場開放を求める強硬論が強まる可能性が高く、既に日米FTAに意欲を示す発言も目立ち始めている。茂木担当相は新貿易協議について「日米FTA交渉と位置付けられるものではなく、予備協議でもない」と指摘。TPP復帰を訴えていく考えを重ねて強調した。
2018年04月25日
「TPP超え認めぬ」 日米新協議で自民 党の了解必ず 対策本部
自民党は24日、TPP・日EU等経済協定対策本部の会合を開き、日米首脳会談の結果について議論した。首脳会談では、貿易と投資に関する新たな協議の枠組みを設けることで合意したが今後の協議に向けて、合意済みの環太平洋連携協定(TPP)を超える農産物の市場開放は認められないとの方針を確認した。
首脳会談では、新たな協議は茂木敏充TPP担当相とライトハイザー米通商代表の間で行うことで一致。日本は引き続き米国のTPP復帰を促す方針だが米国側は2国間協定にこだわり、今後の行方が注目されている。
これに関し、同本部長を務める森山裕・党国会対策委員長は「国内の農家や水産業者などに迷惑をかけることのない形で成就できるように頑張っていかなければならない」と強調。今後の日米協議に向けて「党との連携は非常に大事だ。いい情報、厳しい情報、しっかり入れて政府、与党が一体的に対応できるようお願いしたい」と述べ、党の了解なしに安易な譲歩に踏み切ることがないよう政府に念押しした。
会合は、自民党国会議員有志による議員連盟「TPP交渉における国益を守り抜く会」と合同で開いた。新たな協議では今後、米側が自由貿易協定(FTA)交渉を求めてくる恐れがある。
同会の江藤拓会長は「決してFTAやそれに準じるものの地ならしのために、ましてやTPPの枠組みを超える合意を形成するために新たな協議の場を設けたわけではないとはっきり確認したい」と、政府の対応方針をただした。
首脳会談に同席した茂木氏は、新たな協議は「日米FTA交渉と位置付けられるものでもないし、その予備協議でもない」と強調。「特に農産品に関しては、TPPで合意したものが最大限であると(米国側に)明確に伝えた」と語った。
市場開放圧力に懸念 公明
公明党は24日、TPP等総合対策本部(総合本部長=石田祝稔政調会長)と内閣部会、外交部会の合同会議を開き、米国との新たな貿易協議について議論した。牛肉、豚肉の市場開放に向けて米国が圧力を強めてくる可能性があるとして、TPP以上の譲歩をしないよう、政府に強く求めた。
TPP11や日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効した場合、特に牛肉や豚肉で、米国が対日関税で不利になることを指摘する意見が挙がった。
同本部の稲津久本部長は「米国はこのまま黙っていない」と、新協議で新たな市場開放を強く求めてくることへの懸念を示した。こうした要求を受け入れないよう、TPPへの復帰を粘り強く、徹底して訴えるよう政府に求めた。
2018年04月25日

[特区 外国人就労] 期待と不安と 費用負担は? 日本語は?
農業分野への外国人労働者の受け入れで国家戦略特区に指定されている愛知県、京都府、新潟市は今週から順次、「適正受入管理協議会」を設立し、外国人の受け入れ準備に本腰を入れる。農業の労働力不足は深刻で現場からの期待は高まるが、「本当に外国人が来てくれるのか」「派遣業者にどこまで費用を払うのか」など、課題を指摘する声が上がっている。(猪塚麻紀子、尾原浩子)
求人の幅 広がる 新潟市の野菜苗法人
新潟市で野菜苗を生産する鈴木農園。同園で作業するベトナムの技能実習生、ダオティー・クィーン・アイーンさん(26)は「仕事は楽しいし、みんな優しいけれど、(特区で可能となっても)再来日して農業したいと思わない。帰ったら家族と暮らすの」と将来を語る。同社で実習を始め、1年半。3年で母国に帰るつもりだ。日常レベルの日本語は話せるが、漢字は読めない。指導を受け、漢字のラベルを商品に挿す作業を進める。
同園は関連会社の「エンカレッジファーミング」と合わせ、2007年からこれまで40人の実習生を受け入れてきた。今後は特区での受け入れを目指す。鈴木孝常務は「日本人は、求人しても高齢者しか集まらない。特区なら働き手が確保できる」と期待する。
特区に関心はあっても、金銭的負担が課題となる。特区では、日本人と同等以上の報酬が要件となっているが、鈴木常務は「個人差はあるものの技術や会話のレベルを踏まえると、技能実習を経た人でも農作業の工程管理を任せるまでは難しい。日本人のパートの賃金と比べて飛び抜けて高い人件費は支払えない」とみる。
同園では現状でも、残業代を除き、技能実習生に1人年間200万円は要する。管理費や住宅維持費なども必要で、日本人パートの労働賃金より高くなる計算だ。さらに、現場では技能実習生と特区で働く外国人が混在することになり、労働体系の整備も必要となる。
同市は協議会を設立した後、派遣元となる特定機関募集に取りかかる。市によると、現状で雇用に関心を示す農業法人は2社。同市ニューフードバレー特区課は「どれだけ外国人が来てくれるか見えない。掘り起こせば農家のニーズはある」とみるが、JAや農家は静観している状況だ。
市内農地の過半の面積を管内とするJA越後中央は「稲作中心の地で、特区に期待する農家は(鈴木農園以外に)聞いたことがない。特区に反論はないが、地域密着のJAとしてまずは地元雇用を大切にしたい」(営農部)と話すにとどまる。
配慮忘れず制度活用 愛知京都
26日に全国に先駆けて協議会を立ち上げる愛知県は、稲作地帯とは事情が異なる。施設園芸が盛んな上、自動車などの工業地帯を抱え農業の人手不足が深刻。技能実習生の受け入れ実績がある東三河地域などから、特区への期待は大きい。
派遣元となる特定機関について、既に民間事業者から問い合わせが多く、県は「技能実習生の監理団体などで、新たに派遣事業の許可を得て特定機関への参入を検討するところもある」(農林政策課)と明かす。JA愛知中央会は「農家からは外国人受け入れに期待がある。制度を生かす方策を考えていきたい。JAグループ愛知として労働力確保の手法の一つとして検討していきたい」と話す。
3市府県ともに共通して認識するのは、働く環境整備への配慮だ。京都府は「外国人労働者に来てよかったと言われる制度にしていくことが重要だ」(農政課)と説明。JA京都中央会は「農業の現場での労働力不足は深刻。組合員の期待に応えられるよう、JAグループ京都としてしっかりと対応していきたい」と強調する。
2018年04月24日
畜産クラウド構築 牛の情報一括提供 乳量や疾病履歴ネット上で集約 農水省 20年まで
農水省は2020年までに、畜産農家がスマートフォン(スマホ)などで牛の飼養管理に関する情報を把握できるシステムを立ち上げる。畜産関係の各組織が個別に保有している乳量や疾病の履歴などの情報をインターネット上で集約し、牛の固体識別番号を基にその牛に関する情報を一括して入手できるようにする。「情報を基に牛の特徴を把握し、経験や勘に頼る飼養管理からの脱却を図る」(同省)狙いだ。
構築するのは「全国版畜産クラウド」というシステム。農家がスマホなどでインターネットに接続すれば、どこからでも情報を引き出せる仕組みにする。
例えば、現状で牛の乳量や乳成分に関する情報は、家畜改良事業団が牛群検定を行い把握しており、各農家は検定結果を書類で受け取るなどしている。一方、農家が導入した牛の疾病や治療の履歴を知りたい場合、その牛の治療を担当していた獣医が所属する農業共済団体に問い合わせるといった、個別の対応が必要になる。
こうした情報収集の手間を省くため、各組織の持つ情報をインターネット上で集積する。人工授精の回数や給与された飼料、市場での牛の取引価格などの情報も収集する。
牛は生産履歴を把握する国のトレーサビリティ制度に基づいて、一頭一頭に固体識別番号が割り振られている。飼養している牛の同番号を基に、その牛に関する一連の情報を引き出せるようにする。
情報を基に農家が各牛の特徴を把握し、乳量を効果的に伸ばすための飼養管理や、人工授精や出荷するタイミングの判断などに生かしてもらう。将来的には、畜産農家向けの経営分析ソフトを開発する民間企業も情報を共有できる仕組みにし、こうした企業の商品開発も後押しする。
同省は全国版畜産クラウドの構築に向け、18年度予算で2400万円を計上し、システム整備費などに助成している。19年度以降も継続的に予算を措置したい考えだ。
2018年04月23日
外国人農地取得2件 法律違反確認されず 農水省が初の調査
外資や外国人による農地取得が、2017年は2件で7・2ヘクタールに上ったことが、農水省の初調査で分かった。外資が出資した農地所有適格法人(農業生産法人)が7・1ヘクタールを、外国人個人が相続に伴い10アールを取得した。農地法の規定に違反して、農地が取得された例は確認されなかった。
同省は、外資による森林買収の拡大を受け、森林では毎年、外資の取得面積を調べてきたが、「農地の外資買収も進みかねない」との懸念の声を受けて調査に乗り出した。
具体的には①外国に本店がある法人(外資)②居住地が海外の外国人③農地が所有できる農地所有適格法人のうち、外資や外国人が議決権を持つなどした法人──を対象に、17年の1年間の農地の取得状況を調べた。
外資を含め、一般企業による農地取得は農地法上、認められていない。調査では、農地法に基づく許可書などを基に取得状況を調べたが、外資による農地の違法取得はなかった。
一方、北海道函館市では、フランスに本店があるワイナリーが49%を出資した農地所有適格法人が7・1ヘクタールを取得。醸造用ブドウの栽培に向け、地元農家と法人を立ち上げ、農地を取得した。農地所有適格法人は、農業者の出資割合が過半などを要件に、農地取得が認められている。
愛知県稲沢市では、中国人が10アールを取得。もともと日本人だったが中国人との結婚を機に中国籍にし、その後、親からの相続が発生し所有権が渡った。農地法では個人で農地を取得する場合、原則で年間150日以上農作業に従事するなどの要件がある。海外に住む外国人がこうした要件を満たすのは難しく、事実上、取得できない。一方、相続で所有権が渡った場合は、農地法の要件は対象外となる。
同省は18年以降も同様の調査を続ける方針だ。
2018年04月23日
TPP 見えぬ国会論戦 疑惑続出、野党欠席 米復帰へ急ぐ政府 「衆院優越」自然承認も
米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定(TPP11)の承認案の国会審議の行方が、見通せない状態になっている。承認案は17日に審議入りしたが、国会では財務事務次官のセクハラ疑惑など政府の不祥事を受けて主要野党が審議を欠席し、不正常な状態になっているためだ。政府、与党は27日に衆院外務委員会で承認案採決を目指すが、野党の欠席が続けば、審議が深まらないまま衆院を通過する恐れもある。
先の日米首脳会談では、新たな貿易協議の枠組みを設けることで合意。2国間交渉を求める米国に対し、日本はあくまで米国にTPP復帰を促す方針。日本政府は、米国復帰の呼び水にするため、TPP11の今国会での承認にこだわる。
しかし、今後の日米協議で米国から自由貿易協定(FTA)を求められた場合、農業の追加開放を余儀なくされるなど裏目に出る危険がある。そのため国会審議ではTPP11の内容の是非だけでなく、米国との新たな貿易協議に向けた政府の対応も大きな焦点となる。
ただ、国会正常化の見通しは立たない。野党は、麻生太郎副総理兼財務相の辞任や加計学園問題を巡る柳瀬唯夫元首相秘書官の証人喚問を要求しており、長期の欠席も辞さない構えだ。
条約は、憲法の衆院優越規定で、参院が議決しない場合でも、参院送付から30日で自然承認となる。大型連休前に参院に送付すると、連休中の1週間が使えず、参院での実質的な審議日程の確保が難しくなる。
政府、与党は今国会での承認を確実にするため5月の大型連休明け早々にも衆院本会議で採決し、参院に送付する方針。大型連休前の27日には、外務委員会の審議を終えたい考え。野党欠席のまま審議、採決に踏み切る可能性もある。
一方、TPP11の発効に向けた国内手続きを完了するには、協定の承認とともに関連法案の成立が不可欠だが、関連法案は審議入りしていない。27日の本会議で審議入りする方向だったが、流動的だ。
2018年04月22日

輸出1兆円に迫る 17年最高更新 政府支援、日米向け増 韓国の農林水産物
韓国の農林水産物などの輸出額が1兆円規模に迫っている。「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配置問題で関係が悪化した中国向けが減少したものの、主力の日本や東南アジア、米国向けなどが大きく増えているためだ。政府は今年、東南アジアなど五つの国・地域を戦略輸出先として指定し、支援策を一層強化する方針だ。
韓国農水産食品流通公社によると、2017年の農林水産物などの輸出額は、前年比6・5%増の92億ドル(約9840億円)で過去最高となった。うち農林畜産物は5・6%増の68億ドル(7276億円)で、輸出総額の75%を占め、08年から7ポイント増えた。
18年1~3月の輸出額も、前年比4%増の22億ドル(2354億円)。
品目別に見ると、生鮮農産物のイチゴは、香港や東南アジアのシンガポール、タイ、ベトナムなど需要が増え、前年比29%増の4400万ドル(47億円)と過去最高を更新した。薬用ニンジンは、中国産の在庫不足で、米国在住の中国系住民向けが増えた。日本向けはトマトが増えた。
半面、鳥インフルエンザの影響で家禽(かきん)類の輸出は減った。THAAD問題で中国向けのゆず茶なども落ち込んだ。パプリカは、国内生産量の増加で、日本向けの輸出量は増えたが、輸出額は減った。
政府は、この実績を踏まえ、18年には五つの最優先輸出戦略地域に絞り、支援策を強化する。東南アジア(台湾、マレーシア)、中南米(ブラジル)、ヨーロッパ(ポーランド)、中東・中央アジア(カザフスタン)、アフリカ(南アフリカ共和国)となる。
五つの地域に対し、現地商談会の開催や農食品青年海外開拓団の派遣を強化する。同開拓団は、昨年の60人から100人に増やし、現地での農産物、食品紹介や輸出企業とのマッチングなど市場開拓に注力する。
2018年04月22日
日米新協議 「FTAではない」 議論内容は今後調整 農相
斎藤健農相は20日の閣議後会見で、日米首脳会談で合意した両国間の貿易に関する新たな協議について「FTA(自由貿易協定)と位置付けられるものではなく、その予備協議でもない」と述べ、米国が求める2国間の貿易協定締結につながるものではないとの考えを示した。一方、新たな協議でどのような議論をするかは「これから米側と調整することになる」としており、今後の展開は予断を許さない状況となっている。
2018年04月21日