[つながる 5] 海外×日本 SNSで農村PR 誘客、地域に好循環

地元のネギについて教えてもらう蔡さん㊨(新潟県妙高市で)

 若者の行動力、発信力は世界をまたに掛ける。インターネット上の交流サイト(SNS)で日本の農村文化をPRすることで、海外の目を日本に引き付ける。

 銀世界の広がる新潟県妙高市矢代地区。時には2、3メートルの雪が積もる。いくつものスキー場があり、台湾や香港などから観光客が、来日する。インバウンド(訪日外国人)誘致の仕掛け人は、農家の服部純さん(34)の妻、蔡紋如(サイ・ウェンル)さん(30)だ。

 蔡さんはSNSのフェイスブックや写真共有アプリ「インスタグラム」に写真を定期的に投稿。観光名所や絶景ではなく、積雪の様子や農作業など、農村の日常を伝える。「台湾は布団を敷く文化がなく、そういったことにも新鮮さを感じている」と蔡さん。

 蔡さんは台湾出身。学生時代から日本で交流を広め、大学卒業後には、ワーキングホリデー制度を利用して来日。服部さんと出会い結婚、2014年に移住した。同市が台湾への観光誘致に力を入れ始めたタイミングと重なり、市と同市の民間業者で組織する「妙高観光推進協議会」のインバウンド担当に抜てきされた。

 蔡さんの投稿により、海外から「今まで見たことがない日本の農村の風景に感動した」などの声が寄せられる。フェイスブックを通じて農家民宿の手配依頼を受けることも増えた。「妙高の人の温かさを旅行者に感じてもらい、祖国に帰っても伝えて欲しい。妙高を盛り上げたい」(蔡さん)。

 同市へのインバウンドは15年の150人から16年は320人に倍増。農家民宿利用者も当初は2、3カ月に1組だったが、現在は1カ月に1組以上が訪れる。

 民泊の受け入れが、地域の刺激になっている。受け入れ農家の丸山信之さん(70)と妻・美津子さん(62)は、「同じ集落の人とあいさつだけの関係だったが今では酒を飲み交わすほど関係が深まった」と話す。旅行者への対応を話し合ったりすることで、近所付き合いが深まった。想定外の効果が生まれている。

 茶畑や竹林が広がる静岡県藤枝市で竹を出荷する梶山大輔さん(34)はイスラエル人の妻・イラさん(37)と農家民宿を経営する。自らバックパッカーで世界を巡った経験と、語学力を生かし、米国の民宿紹介サイト「エアビーアンドビー」に登録。同市の自然や農業、日本文化をPRし、海外からの宿泊者を募る。米国やオーストラリアなどから、これまでに600人が宿泊。その宿泊者が友人に紹介し、その友人が宿泊に来るという好循環も生まれている。梶山さんは「民宿は日本の文化や人間模様を感じることができ、ホテルでは感じられない良さがある」と明かす。

 藤枝市中山間地域活性化推進課の小林麻佐子さん(46)は「地域の人たちは海外の人たちとの出会いを喜んでいる。地域が明るくなった」と実感する。若者の行動が、地域と海外との絆を深めるだけでなく、地域間の絆を深めている。(おわり)
 

識者の目 体験や思い共有 カジュアルに 東洋大学 国際地域学部・沼尾波子教授


 若者は農山村で、国内外問わず人や場所とつながっている。インターネットによって、世界との距離が近くなっている。若者と世界との関わりを見ると、政府が進めるグローバル化、輸出、英語教育といったイメージとは少し異なる。もっとカジュアルに海外とコミュニュケーションを深め、体験や思いを共有しているのが特徴だ。海外に行き日本の農山村を見つめ直す若者も多い。

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