GAP認証と五輪 本質は持続可能な経営

 2020年の東京五輪・パラリンピックの選手村で提供する食材の調達基準として、農業生産工程管理(GAP)の認証取得が条件となり、GAPへの産地の関心が集まった。だが、期間中に必要とされる農林水産物の量は多くない。「五輪に自分たちの農産物を」と意気込む全産地の農産物が使われるわけではない。産地はGAPの本来の趣旨を踏まえ、長期的な視野に立って取り組む必要がある。

 東京五輪でGAPが調達要件となるのではと注目されたのは3年前ごろ。「持続可能性」を前面に打ち出した12年のロンドン大会は、農産物の調達基準として英国のGAP「レッドトラクター認証」の取得、または推奨基準としてグローバルGAPが選ばれた。

 世界規模のイベントでは、環境への負荷をかけないことなど、持続可能性への配慮が強く求められる。開発や生産活動における資源の保全、人権尊重、適切な働き方など、人や環境への配慮が欠かせない。こうした持続可能性の観点から、東京五輪でも、農産物の調達基準としてGAPが取り入れられた。

 一方で、組織委員会が発表した選手村の必要量は農畜産物全般で600トンにすぎない。米類はわずか13トン。1戸の農場でも十分賄える量であることが判明した。12月には農水省がGAPの認証を取得した農産物の年間出荷量について初めて調査結果をまとめたが、穀類と青果物の合計26品目で10万トン。東京五輪で使う分も十分足りることがデータから裏付けられた。

 日本では、GAPは「農産物の安全性の基準」との誤解も多い。GAPを取得した農産物は安全面だけでなく、環境保全や労働者の安全性にも配慮しており、経営の持続可能性を実現するのが狙いだ。“五輪狙い”だけの取得では、本来のGAPの趣旨を見誤ることになる。

 4法人とJAが協力してグローバルGAPの団体認証を取得した、滋賀県近江八幡市の「JAグリーン近江老蘇集落営農連絡協議会」。本紙「転機・展望」欄に登場した仙波健三代表の言葉が、GAPの本質を示唆している。「費用はかかったがGAP認証取得のための投資ではなく、組織や農地を継続的に維持していくための投資だ。食品安全や農作業事故などのリスクを回避する方策を考えるきっかけ」と言い切る。

 生産管理のルール化を進めるため、早くからGAP認証に取り組んできた西日本のある農家は「長年、付き合っている取引先がある。一過性の五輪や万博といったイベントのために無理して農産物を出す気はない」と冷静に受け止める。

 2年後に控えた東京五輪。出場するアスリートや訪日客には、日本の安全・安心でおいしい農産物を存分に味わってほしい。一方で、産地側は持続可能性という本質からGAPと向かい合い、経営改善につなげてもらいたい。

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