GAP認証と五輪 本質は持続可能な経営
2018年01月10日
2020年の東京五輪・パラリンピックの選手村で提供する食材の調達基準として、農業生産工程管理(GAP)の認証取得が条件となり、GAPへの産地の関心が集まった。だが、期間中に必要とされる農林水産物の量は多くない。「五輪に自分たちの農産物を」と意気込む全産地の農産物が使われるわけではない。産地はGAPの本来の趣旨を踏まえ、長期的な視野に立って取り組む必要がある。
東京五輪でGAPが調達要件となるのではと注目されたのは3年前ごろ。「持続可能性」を前面に打ち出した12年のロンドン大会は、農産物の調達基準として英国のGAP「レッドトラクター認証」の取得、または推奨基準としてグローバルGAPが選ばれた。
世界規模のイベントでは、環境への負荷をかけないことなど、持続可能性への配慮が強く求められる。開発や生産活動における資源の保全、人権尊重、適切な働き方など、人や環境への配慮が欠かせない。こうした持続可能性の観点から、東京五輪でも、農産物の調達基準としてGAPが取り入れられた。
一方で、組織委員会が発表した選手村の必要量は農畜産物全般で600トンにすぎない。米類はわずか13トン。1戸の農場でも十分賄える量であることが判明した。12月には農水省がGAPの認証を取得した農産物の年間出荷量について初めて調査結果をまとめたが、穀類と青果物の合計26品目で10万トン。東京五輪で使う分も十分足りることがデータから裏付けられた。
日本では、GAPは「農産物の安全性の基準」との誤解も多い。GAPを取得した農産物は安全面だけでなく、環境保全や労働者の安全性にも配慮しており、経営の持続可能性を実現するのが狙いだ。“五輪狙い”だけの取得では、本来のGAPの趣旨を見誤ることになる。
4法人とJAが協力してグローバルGAPの団体認証を取得した、滋賀県近江八幡市の「JAグリーン近江老蘇集落営農連絡協議会」。本紙「転機・展望」欄に登場した仙波健三代表の言葉が、GAPの本質を示唆している。「費用はかかったがGAP認証取得のための投資ではなく、組織や農地を継続的に維持していくための投資だ。食品安全や農作業事故などのリスクを回避する方策を考えるきっかけ」と言い切る。
生産管理のルール化を進めるため、早くからGAP認証に取り組んできた西日本のある農家は「長年、付き合っている取引先がある。一過性の五輪や万博といったイベントのために無理して農産物を出す気はない」と冷静に受け止める。
2年後に控えた東京五輪。出場するアスリートや訪日客には、日本の安全・安心でおいしい農産物を存分に味わってほしい。一方で、産地側は持続可能性という本質からGAPと向かい合い、経営改善につなげてもらいたい。
東京五輪でGAPが調達要件となるのではと注目されたのは3年前ごろ。「持続可能性」を前面に打ち出した12年のロンドン大会は、農産物の調達基準として英国のGAP「レッドトラクター認証」の取得、または推奨基準としてグローバルGAPが選ばれた。
世界規模のイベントでは、環境への負荷をかけないことなど、持続可能性への配慮が強く求められる。開発や生産活動における資源の保全、人権尊重、適切な働き方など、人や環境への配慮が欠かせない。こうした持続可能性の観点から、東京五輪でも、農産物の調達基準としてGAPが取り入れられた。
一方で、組織委員会が発表した選手村の必要量は農畜産物全般で600トンにすぎない。米類はわずか13トン。1戸の農場でも十分賄える量であることが判明した。12月には農水省がGAPの認証を取得した農産物の年間出荷量について初めて調査結果をまとめたが、穀類と青果物の合計26品目で10万トン。東京五輪で使う分も十分足りることがデータから裏付けられた。
日本では、GAPは「農産物の安全性の基準」との誤解も多い。GAPを取得した農産物は安全面だけでなく、環境保全や労働者の安全性にも配慮しており、経営の持続可能性を実現するのが狙いだ。“五輪狙い”だけの取得では、本来のGAPの趣旨を見誤ることになる。
4法人とJAが協力してグローバルGAPの団体認証を取得した、滋賀県近江八幡市の「JAグリーン近江老蘇集落営農連絡協議会」。本紙「転機・展望」欄に登場した仙波健三代表の言葉が、GAPの本質を示唆している。「費用はかかったがGAP認証取得のための投資ではなく、組織や農地を継続的に維持していくための投資だ。食品安全や農作業事故などのリスクを回避する方策を考えるきっかけ」と言い切る。
生産管理のルール化を進めるため、早くからGAP認証に取り組んできた西日本のある農家は「長年、付き合っている取引先がある。一過性の五輪や万博といったイベントのために無理して農産物を出す気はない」と冷静に受け止める。
2年後に控えた東京五輪。出場するアスリートや訪日客には、日本の安全・安心でおいしい農産物を存分に味わってほしい。一方で、産地側は持続可能性という本質からGAPと向かい合い、経営改善につなげてもらいたい。
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3月輸入野菜 13年ぶり13万トン超 ハクサイ18倍キャベツ4倍 中国産敬遠薄れる
3月の生鮮野菜の輸入量が13万3847トンと、単月としては13年ぶりの高水準だったことが、財務省が26日公表した貿易統計で分かった。輸入野菜離れを起こした2007年の中国製冷凍ギョーザ中毒事件以降では最大。国産の高騰が長期化するとの懸念が拭えず、中国産の結球野菜を中心に業務・加工業者からの輸入物への需要が強かった。業者は4月以降も輸入量が前年を上回る可能性が高いと見通す。
生鮮野菜の輸入量が13万トンを超えるのは、05年3月以来。今年2月に続いて、10万トンを超えた。
輸入量を押し上げたのはハクサイやキャベツなどの結球野菜。国産が品薄高となった1月から、外食店といった業務筋からの需要に加え、カット野菜など加工需要の引き合いも依然強い。3月のハクサイの輸入量は前年の18倍となる5211トン、結球キャベツは3・7倍の2万7585トンで、共に過去10年間で最多。中国産の輸入業者は「3月も国産の出回りが少ないと予測し、仕入れ数量を十数年ぶりに大幅に増やした」と話す。
結球野菜をはじめ、輸入が増えたニンジンやネギなどは軒並み中国産が大半を占める。飲食店への納入業者は「低価格を重視する顧客が増えてきた。中国産の仕入れに慎重な声をあまり聞かなくなった」と明かす。
一方、3月に入って天候が回復し、国産の出回りは急増。相場は安値基調で推移する。だが、国産が需要を取り戻すのは簡単ではないとの見方がある。別の輸入業者は「急に仕入れを増やしただけに、国産が安くなったことを理由に今後の取引を断れない」と打ち明ける。輸入業者は、今後も輸入物の潤沢な出回りを予想している。
2018年04月27日

全国一律 見直し提言 飼料米“誘導”を問題視 転作助成で財政審
財務省の審議会が25日、米政策の見直しで提言をまとめた。飼料用米に対して国が全国一律に措置する助成金について、飼料用米による転作を過度に誘導していると課題を提起。野菜や麦など需要がある作物の増産が各産地で進むよう、飼料用米を含む転作作物の助成単価について、都道府県が決められる仕組みを検討するよう求めた。
2018年04月26日

トマト 2農場がGAP認証 全農みやぎ事務局 全国連支援の第1号
JA全農みやぎは20日、宮城県内の2農場がグローバルGAPをトマトで取得したと発表した。JA全中、JA全農、JA共済連、農林中央金庫の4者で取り組む「JAグループGAP第三者認証取得支援事業」を活用した農業生産工程管理(GAP)認証取得の第1号。全農みやぎが事務局を務め、団体認証として取得した。労働環境や経営などの改善につなげ、国内外への販路確保を後押しする。
取得した農場は、松島町のサンフレッシュ松島とマキシマファーム、山元町のやまもとファームみらい野の3法人2農場。申請面積は合計で2・66ヘクタール。
JAを超えて複数の大規模法人が参加したことから、全農みやぎが団体事務局を担当。今後も県内大規模法人の参加を呼び掛ける予定。
サンフレッシュ松島とマキシマファームの代表・内海正孝さん(61)は「農家が単独で挑戦するのは難しい。全農の支援により、専門家の指導などを受けられ、認証を取得できてうれしい」、やまもとファームみらい野の代表・島田孝雄さん(63)は「今後も全農と協力し、他の露地野菜でも認証を取得したい」と述べた。
全農みやぎの高橋正運営委員会会長は「輸出にもつながる第一歩。宮城の農作物の安全や安心をさらに高め、国内外にPRしよう」と強調した。
JAグループGAP第三者認証取得支援事業は、2017年度からスタート。GAP支援チームが産地に出向き、団体認証取得を支援する。
2018年04月21日

農業リスク 訪問点検 診断システム本格始動 共済連 対策提案 全国展開へ
JA共済連は2018年度、災害時や加工食品の異物混入による損害賠償発生など、農家のリスクを点検し、対策を提案する「農業リスク診断活動」の全国展開を目指す。タブレット端末でリスクを診断できるシステムを4月から本格始動。JA職員が農家を訪問し、やりとりを通じてリスクを明らかにし、共済から営農指導まで幅広い範囲での対策を提案する。
2018年04月24日
TPP 見えぬ国会論戦 疑惑続出、野党欠席 米復帰へ急ぐ政府 「衆院優越」自然承認も
米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定(TPP11)の承認案の国会審議の行方が、見通せない状態になっている。承認案は17日に審議入りしたが、国会では財務事務次官のセクハラ疑惑など政府の不祥事を受けて主要野党が審議を欠席し、不正常な状態になっているためだ。政府、与党は27日に衆院外務委員会で承認案採決を目指すが、野党の欠席が続けば、審議が深まらないまま衆院を通過する恐れもある。
先の日米首脳会談では、新たな貿易協議の枠組みを設けることで合意。2国間交渉を求める米国に対し、日本はあくまで米国にTPP復帰を促す方針。日本政府は、米国復帰の呼び水にするため、TPP11の今国会での承認にこだわる。
しかし、今後の日米協議で米国から自由貿易協定(FTA)を求められた場合、農業の追加開放を余儀なくされるなど裏目に出る危険がある。そのため国会審議ではTPP11の内容の是非だけでなく、米国との新たな貿易協議に向けた政府の対応も大きな焦点となる。
ただ、国会正常化の見通しは立たない。野党は、麻生太郎副総理兼財務相の辞任や加計学園問題を巡る柳瀬唯夫元首相秘書官の証人喚問を要求しており、長期の欠席も辞さない構えだ。
条約は、憲法の衆院優越規定で、参院が議決しない場合でも、参院送付から30日で自然承認となる。大型連休前に参院に送付すると、連休中の1週間が使えず、参院での実質的な審議日程の確保が難しくなる。
政府、与党は今国会での承認を確実にするため5月の大型連休明け早々にも衆院本会議で採決し、参院に送付する方針。大型連休前の27日には、外務委員会の審議を終えたい考え。野党欠席のまま審議、採決に踏み切る可能性もある。
一方、TPP11の発効に向けた国内手続きを完了するには、協定の承認とともに関連法案の成立が不可欠だが、関連法案は審議入りしていない。27日の本会議で審議入りする方向だったが、流動的だ。
2018年04月22日
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JA組織基盤強化 直売所と広報誌が鍵に
JA組織基盤の強化が改めて問われている。正組合員と共に准組合員への対応も急務だ。焦点は対話を通じ「多様な組合員」に具体的にどう向き合うのか。基盤強化は、人づくり運動でありJA運動の再構築でもある。鍵を握る直売所と広報誌の活用を位置付けたい。
間もなく政府による「農協改革」議論の二つの大きな節目を迎える。中家徹JA全中会長が繰り返し今年度を「正念場の一年となる」と強調する理由だ。まずは1年余り先の来年5月末の「農協改革集中推進期間」の期限、いま一つは、あと3年を切った2021年3月末の准組合員の事業利用規制の是非を問う農協法5年後検討条項の期限だ。いずれも結果次第で、今後のJAグループ全体の組織・事業に大きな影響を及ぼしかねない。
全中が提起している「アクティブメンバーシップ」。長いカタカナに意味を測りかね、戸惑う向きもあろう。組織参画の人づくり運動と考えれば分かりやすい。組合員への対応強化と言ってもJAごとに大きく異なる。地域実態を把握し客観的なアンケート調査などの数字を基に、正組合員・准組合員別の階層分けをした上で、戦略的な対応が必要だろう。
全中が25日まで東西2カ所で開いた准組合員との関係強化に向けた初のセミナーは意義がある。事例を基に意見交換したことを、先の農協改革の時間的な節目を念頭に各JAの自己改革と組織基盤強化に生かしたい。今後は、担い手対応の戦略会議である営農・経済フォーラムと組織基盤強化セミナーを表裏一体で進める必要もあろう。
JAごとに状況が全く違い、「多様な組合員」が重層的に存在している。全国一律的な対応には無理がある。広域的な大型合併が進み、1JAで都市型もあれば純農村や中山間地など地域ごとで事業環境も組合員構成も大きく異なる。支店単位でのきめ細かな自己改革と組織基盤強化の実践が問われる。
自己改革を進める上で、准組合員が600万人に達する現実を直視しなければならない。准組がJAの理解者となり、「食の応援団」となり、さらに一歩進んで農産物を作ることを通じて「農の応援団」となることは、組織の体質を強める。
先の准組セミナーの事例発表で明らかになったのは、地域住民の接点であるJA直売所を、組織基盤強化にどう有効活用できるかの視点だ。これと総合ポイント制度を絡め、事業や組織参画へ導いていく。もう一つはJA広報誌の内容充実と活用だ。一方的な情報提供では意味がない。広報誌に准組の声も反映する参加型、情報の双方向型展開が欠かせない。地域住民への全戸配布もJA理解の一助となる。
いま一度、「聞く・話す・動く」のステップを踏みながら、JAと組合員の対話運動で組織基盤強化を進めたい。
2018年04月27日
米買い取りリスク 差損への備え忘れるな
米の買い取りを手掛けるJAや全農県本部は年々増えているが、差損リスクに対する備えは大丈夫だろうか。赤字が発生しても複数年かけて解消してきた共同計算方式と違って、JAの経営を直撃する。差損に備えた積立金を持つJAも一部あるが、多くは不十分のままだ。2年続いた売り手市場が今後も続く保証はない。買い取り水準の設定を含め、十分なリスクへの対応が必要だ。
この10年間だけでも、米の共同計算や買い取りを導入したJAは2度危機に見舞われた。1度目の2009年産は、リーマン・ショックによる不景気のあおりを受け、出来秋からじりじり相場を下げ、主産地の東北や北陸を中心に、委託販売の共同計算が赤字に見舞われた。多くの県は、翌年からの概算金を引き下げ、数年かけて赤字を処理することになった。
4年後の13年産は、高値に沸いた前年から一転して相場が低迷。特に終盤の販売に苦戦し、北関東を中心に共同計算の赤字が発生した。この時も数年かけて赤字を処理する方式を選ぶ県が多かった。買い取りを手掛ける県本部はまだほとんどなく、取り組むJAも少数だった。
買い取りの動きは、この2年で急増した。相場の好転で、商系業者との集荷競争が厳しさを増したこともあるが、JA改革でそのムードが広がったことが大きい。西日本では、中国地区で移行が目立つ。JAが買い取る県と、JAは委託のままで県本部が買い取る県と、買い取りJAから県本部が買い取る県など、方式はさまざまだ。
北関東でも、JAだけでなく県本部で増えてきた。飼料用米への転換で主食用米の集荷が激減する中、取扱量確保のため買い取りを増やしている。その結果、4年ほど前に2割弱だった割合が、5割にまで高まった県もある。
買い取り方式に移行したJAや県本部の担当者の多くは、相場の行方に神経をとがらす。「この2年は上げ基調で、買い取りリスクの不安は少なかったが、これからは安心できない。いつ変わってもおかしくない」という。
差損に備え、数億円の積立金を持つJAも一部あるが、多くは通常の決算で処理してきた。4年前にも、委託された60万俵(1俵60キロ)の「コシヒカリ」が、1俵当たり600円の差損で、共同計算が3億円を超える赤字となった県本部や、2億円を超える赤字が発生した買い取りJAが出るなど、差損額は大きな金額となる。
こうしたリスクへの対策として、積立金などの備えも一つだが、最も重要なのは、無理のない買い取り価格の設定だ。組合員からは高値を期待されるだろうが、赤字を出して組合員全体への迷惑は避けなければならない。さらに、一部JAのように、追加払いを前提とした価格設定でリスクを減らす対策も必要ではないか。
2018年04月26日
切り花 新JAS 日持ちの信頼を武器に
花壇苗や鉢花はよく買うが、切り花はあまり買わないという消費者が結構いる。鉢花などより観賞期間が短く、日持ち(花持ち)の程度が分からないという不安感が背景にある。今年度から始まった、新しい日本農林規格(JAS)では、日持ち性を高めるための栽培・出荷方法を実践する生産者の切り花を認証する。消費者は店頭でJASマークを見て、「日持ちの良さ」を確認できる。信頼を武器に新たな販路を広げたい。
従来のJAS法は、規格の対象を農林水産物・食品の原材料や成分などの品質に限っていた。新JAS法では生産方法や取り扱い方法なども基準に加えた。品質以外の価値を「見える化」し、他の国内外の商品と区別できるようにする。切り花では、栽培から出荷までの日持ちを良くする管理方法の基準を定め、「日持ち生産管理切り花」として認証する。
基準は、まず清潔さ。病気の花は捨て置かない。使う水は水道水に限り、他の水はきれいでも抗菌剤を入れる。はさみは使う前に消毒する。茎内で増殖した菌が日持ちを悪くすることは知られているが、管理は意外と徹底されていない。日本花き生産協会の2年前の調べでは、はさみのきれいさに6割の生産者が「留意していない」と答えた。清潔な環境は基本だ。
採花時や保管時の温度、採花の作業時間や出荷までの時間なども定める。採花時の温度が高温だった場合には早めの出荷でカバーできる。これらの対策は、多くの生産者が品質管理で日ごろ心掛けていることばかりだろう。部会などで取り組む場合には、共通の目的意識を持ち、相互の検証が大切になる。農業生産工程管理(GAP)の切り花向けの団体認証と考えれば難しい取り組みではない。
小売店や卸など流通関係者の日持ちへの関心は高い。日本農業新聞は昨年末、国産花きに求める2018年のキーワードを尋ねた。「日持ち」が3分の2とトップ。前年トップだった「安定出荷」は4割弱で、意識の変化がうかがえる。花は必ずしも生活必需品と見られていない。堅い財布のひもを緩めさせるには、日持ちの良さという「お得感」の提供が効果的だろう。
日持ちの改善には、生産と流通、小売りの連携が欠かせない。産地や生産者は新JASを活用し、川下の要望に応えつつ、積極的に優位点をアピールしていくべきだ。一定の日数の日持ち期間を保証する小売店の販売方法も、産地との連携がなくては広がらない。
日持ちの改善は輸入切り花への対抗策になる。低価格、安定供給が売りの輸入品のシェアは年々増え、16年には26%に達した。多彩な品種と日持ち性の良さが消費者に浸透すれば、国産シェアの奪還につながる。輸出にも好材料だ。「消費地での効果が見えにくい」と後ろ向きにならず、新JASの活用を検討すべきだ。
2018年04月25日
公共牧場の活用 担い手集めに将来像を
日本草地畜産種子協会は、公共牧場の新たな活用方法に関する中間報告をまとめた。整備された牧場の草地は、畜産の生産基盤であるばかりか、地域住民の憩いの場になり、観光資源にもなり得る。牧場への関心が高まっている時期でもあり、各牧場は新たな活用法を入れた将来ビジョンを示してほしい。
公共牧場は戦前から、入会地として共同で管理してきた牧野が起源とされる。旧農業基本法農政時代の選択的拡大で畜産が脚光を浴びると、農家から育成を預かる組織として重宝され、国が予算を投入し、各地で受け入れ頭数増に向けた草地造成が進んだ。1970年代にかけて牧場数は増え、80年には全国で1179牧場になった。
近年は畜産農家が減り牧場数も減少。2016年に723牧場にまで減った。利用頭数も80年の21万3000頭が16年には12万9000頭に。だが、このところの増頭意欲の浸透で、1牧場当たりの受け入れ頭数は10年前より1割ほど増えている。農家の規模拡大に貢献することから、関心は高まっている。
公共牧場の牧草地は、国内牧草地面積の14%を占める。一大飼料基盤だ。農水省は13年度に26%だった飼料自給率を25年度までに40%にする目標を掲げており、飼料自給率向上の一翼を担うとの期待もある。関心が高まっている間に、公共牧場の今後の利用方法について、将来ビジョンを策定しておきたい。
中間報告は、牧場の管理・運営技術を継承する人材の不足を問題視する。70代の作業員が山道を車を走らせて通い、牛の管理をしているような牧場もある。牧場作業を引き継ぐ若い世代は全国的に育っていない。農村での人員・人材の不足は公共牧場に限ったことではないが、広く畜産の生産基盤を担っている施設であるだけに、早急に担い手を確保したい。そのためにも、新たな事業展開と活用方法を考えたいところだ。
若い人を引き付けるには魅力的な職場づくりが欠かせない。厚生労働省などの調査では、若い世代が仕事を選ぶ尺度として、収入を重視する傾向が高まっているが、一方で社会貢献に関心を持ち生活の楽しさを追求する人も多い。牧場の施設を生かして楽しい仕事や社会貢献ができれば、関心を持ってもらえる可能性はある。
酪農ヘルパーをしながら多くの酪農経営を観察して技術を身に付け、酪農経営で自立したときに学んだことを生かすように、公共牧場で働けば放牧技術を学べる。国内外の先進地で研修を受けられるような制度も作れば、将来の放牧を志す若者には魅力が増すかもしれない。
施設を生かし、自ら生乳や肉牛、飼料作物の生産・販売を手掛ける公共牧場や、ふれあい牧場や観光事業に結び付けるケースもある。将来ビジョンで魅力ある仕事と環境を目指すことで、公共牧場の技術を引き継ぐ若者も引き付けてもらいたい。
2018年04月24日
政治農政意識調査 官邸主導 農家は問題視
日本農業新聞が農政モニターを対象に行った意識調査結果(回答者数812人)によると、安倍内閣の支持率は30%台と低空飛行が続く。農政の批判的な受け止めに加えて、森友・加計学園問題で安倍晋三首相への不信が高まった。不支持率は65%に上り、農村部でも厳しい目にさらされている。
大手マスコミの世論調査で内閣支持率が急落したのは、財務省による公文書改ざんが発覚した3月以降だ。農政モニター調査では、2012年の発足当初こそ60%を超えたものの、2015年以降はおおむね30%台で推移する。環太平洋連携協定(TPP)の推進や、農協改革など一連の急進的な農政改革への厳しい評価が背景にある。
今回の調査で不支持の理由に「安倍首相を信用しない」が5割もあった点に注目したい。官邸の関与が取り沙汰される森友・加計学園問題が一向に収束しないことが響いている。首相その人への不信が支持率低落の主因である以上、短期に反転させるのは難しい。得意の外交でも日米首脳会談をはじめ目覚ましい成果はなく、内閣改造による政権浮揚も期待薄だ。
政治意識では、支持する政党のトップが自民党の45%で他党を圧倒した。農政の期待値も39%と高い。この傾向はこれまでの調査でも同様だ。安倍内閣や農政への厳しい評価と自民党の支持率は連動していない。野党の非力が要因の一つだろう。
安倍内閣の農業政策に対する評価では、「どちらかといえば」「まったく」を含め「評価しない」が7割に上る。農地中間管理機構による農地集積、農業所得増大、米政策の転換、農協改革など、主要な農業施策のいずれも評価が低い。政府・与党関係者はこの結果を厳しく受け止める必要がある。
逆に看板施策で評価が高いのは農産物輸出拡大だ。「大いに」「どちらかといえば」を合わせ「評価する」は5割を超えた。海外市場の開拓が農業所得の増大につながるかどうかは議論のあるところだが、官民挙げてのチャレンジに対する生産現場の期待感は高い。
今回は政策決定の在り方についても聞いた。規制改革会議などを使って官邸主導型の政策決定を進めることについて、「農家や生産現場の声よりも経済界の意見を重視し、評価できない」が8割を超え、農業者が厳しく見ていることが分かった。一方で、役割発揮を期待する機関として、生産者、消費者の代表や有識者らで構成する農水省の審議会が77%に上った。
農政改革の中身と併せて、農政の決め方についても、農業者が違和感を感じている。政府・与党はこのことを重く受け止め、政策決定の在り方を是正していく必要がある。現場から「一方的」と疑念が出る状況はあるべき姿ではない。
農政の起点は現場である。関係者の理解と協力なくして進まないことを肝に銘じるべきだ。
2018年04月23日
小回り利く加工で活路 女性起業の強み
若手女性農業者の起業が増えている。活動内容は食品加工が圧倒的に多い。拡大・新規展開したいことも食品加工がトップ。女性の強みは柔軟さだ。しなやかな発想で商品を作り、インターネットも利用したい。
地元の農産物を使った加工品作りは大きな投資が要らず、女性が取り組みやすい起業といえる。農水省の2016年度の「農村女性の起業活動実態調査」によると、活動内容は食品加工が71%と最も多かった。起業数は全国で9497件。個別経営が5178件と全体の55%を占め、14年度の前回調査に比べ5ポイント上昇した。個別経営は49歳以下の年齢層で増えている。
女性農業者の特徴の一つは、身近にある材料を使い、加工している点だ。自宅加工であれば、一つのものだけでなく、少量でもいろいろなものを作り、品ぞろえをよくすることができる。食品大手よりも、小回りが利くところが強みだ。売れる商品のトレンドやブームはさまざまで、一過性で終わってしまうものも多い。ころころ変わる客の心をつかむには、品ぞろえを増やし、バリエーションを豊かにすることが重要だ。
コミュニケーション力を生かして、客との何気ない会話からヒントを得て、素早く対応できるのも強みだ。
キウイフルーツ農家の女性は、規格外品を活用してコンポートを作った。しかし、それだけでは客に飽きられてしまうと考え、商品を次々と考案した。ジャム、ケーキ、アイスクリームなど、いつも新商品を用意することで売り上げを伸ばしている。
加工を手掛けるブドウ農家の女性は、日本ではあまり知られていないイタリアの伝統菓子をアレンジしたオリジナル商品を生み出した。ホームステイで受け入れたイタリア人留学生との交流から、加工品のヒントを得たもので、今では看板商品となっている。
もちろん、新しい商品を作ればいいというものではない。作った後のチェックも重要だ。売れ行きや客の反応を調査・研究し、変えるべきところは変える。そういう努力も必要だ。
干し柿農家の女性は、干し柿のドレッシングを作った。ドレッシングを置いてくれた店に足しげく通い、客の感想を聞き取った。「酸味が強い」と言われれば、マイルドな味に変えた。「量が多過ぎる」と聞けば、量を減らした。消費者視点で商品に手を加え、味や量などを改良することで、消費の裾野がぐっと広がるケースが多い。
今はインターネットを駆使してPRしたり、販売したりできる。以前は数量が少ないことや消費地から遠いことは大きな不利だったが、ネット社会の到来で食品加工分野で女性が活躍しやすい環境になっている。
規模が小さい、個人だからと最初から諦めるのはやめよう。過度の投資は禁物だが、いろいろなやり方を模索してほしい。
2018年04月22日
改正介護保険法 利用者に不安与えるな
改正介護保険法が4月、スタートした。介護保険財政の逼迫(ひっぱく)は深刻な現実だが、給付費削減へ向けて利用者や事業者に負担を求めるだけでは課題は解決しない。「介護の社会化で生活の質を高める」という創設の原点に立ち返って、「地域福祉」の在り方を考える必要がある。
今回の制度改定は「2025年問題」への対策が柱。自己負担額の見直しや、介護予防を強化し「自立支援」に積極的に取り組む事業者への報酬を手厚くすることなどが特徴だ。
「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳以上となって超高齢社会が到来し、介護や医療など社会保障の給付と負担が一段と増すことを指す。25年には、75歳以上が約2200万人になるという推計があり、総人口に占める割合は2割。1割だった10年に比べると、急速に高齢化が進んでいく。
この問題を視野に入れた主な改正のポイントは、自己負担額での3割負担の導入や、介護予防による「自立支援」を重視したことだ。医療との連携や、リハビリテーションの強化で介護不要な状態までの改善を目指し、成果を上げた事業者へ報酬を手厚くする。
だが、事業者が改善の見込みがある人だけを選んだり、保険料を払っても望むサービスを受けられなくなったりする懸念がある。身体的な介護予防に力点を置いた場合、認知症の人への支援はどうするのかなど、さまざまな課題がある。
介護保険制度は2000年にスタート。背景にあったのは、①家族介護で特に女性に重い負担がかかる②在宅介護ができないと病院へ(社会的入院)③病院で尊厳が軽視される──といった社会状況だった。
制度導入前、介護は家族内の問題であり、“できれば家の奥に隠しておきたいこと”だった。取材を受けてくれる家族を探すのも困難だった。公的介護サービスが当たり前になっている現在と比べると、制度が定着していることを実感する。状況は明らかに改善した。
一方で、3年ごとに行われる制度の見直しが財政面にばかりに目が向くきらいがある。制度の安定的な運用は重要だが、「高齢者自らがサービスを選び、決定することで尊厳が守られる」とした制度の理念を置き去りにするようなことは許されない。介護サービスを必要とする高齢者が安心して利用できる制度が「尊厳」の出発点となる。
介護の目的は食事や排せつ、入浴などの支援(サービス提供)だけにあるのではない。人と人の良い関係に基づいた支援により、人間らしい生活を送ることにある。地域に密着したJAの強みは、このような関係性を築いてきたことだ。
地域の食と農を生かし、女性部パワーを活用したきめ細かな対応で、利用者に喜ばれる高齢者支援活動を続けていきたい。
2018年04月21日
日米首脳会談 2国間協定を阻止せよ
日米首脳会談が終了した。焦点の通商問題は、貿易協定を巡る両国の立場の違いが埋まらない中、トランプ大統領が重視する貿易赤字削減に向け、新たな協議の枠組みを作ることで合意した。これが実質の2国間交渉と化し、日米自由貿易協定(FTA)の呼び水となることを危惧する。農業を“身売り”してはならない。貿易収支の改善にもつながらない。
2日間の首脳会談では、北朝鮮に対し非核化への具体的な行動を求めることで一致し、拉致被害者の救出にトランプ大統領が協力を約束した。安倍晋三首相にとっては、急展開する国際情勢の中で日本は取り残されていないことを示し、やれやれという思いだろう。だが、解決への道筋がついたわけではない。日米結束の政治的な演出を優先するあまり通商問題で譲歩しなかったか、舞台裏を含めて会談結果を注視する必要がある。
通商問題では、697億ドル(約7兆5000億円、2017年)に上る対日貿易赤字の是正に執念を燃やすトランプ大統領の姿勢が目立った。11月の中間選挙を控え、早期の目に見える成果づくりへ政権が前のめりになっている。この間、対日貿易戦略は2国間協定と環太平洋連携協定(TPP)復帰の二つの選択肢で揺れ動いているかに見えたが今回、大統領の意思が明確に示された。安倍首相に対して「2国間貿易協定の方が望ましい」と、直接に表明した政治的な意味は重い。
首相は会見で「米国が2国間交渉に関心を有していることは承知しているが、わが国はTPPが日米両国にとって最善と考えている」と述べた。要求に追随しなかったものの、単に日本の立ち位置を語ったようにも見える。地の利もあろうが、政治的意思の表明という点ではトランプ大統領の迫力に及ばない。
新たな協議は、茂木敏充経済再生相とライトハイザー米通商代表が責任者になる。日米経済対話に比べ、テーマを貿易分野に絞り込んで早期の解決を目指すと見られる。TPP離脱で得られるはずの「果実」を失った米農業団体が、日本市場の開放要求を強めている。トランプ大統領の支持母体だ。農業が標的にされる恐れが強い。
しかし、農業の市場開放が巨額の貿易赤字を解消する材料にならないことは明白だ。米国も交渉に参加した上で合意したTPP協定は自由化純度が極めて高く、日本農業への重大な脅威である。政治的にも収まっていない。その水準を超える譲歩をのめば、農業者への背信行為だ。所管する農水省がこの協議に権限を持って関与できる国内体制を作らなければならない。
気掛かりなのは、安倍政権が森友・加計問題や公文書隠蔽、財務省次官のセクハラ問題などで手いっぱいとなり、対米協議への備えがおろそかにならないかという点だ。総力を挙げ、日米FTA交渉への変質を止めなければならない。
2018年04月20日
夏場の生乳ピンチ 都府県向け緊急対策を
2017年度の全国の生乳生産量が30年ぶりに700万トンの大台を割り込んだ。異常事態である。特に都府県の基盤弱体化に歯止めがかからない。夏場の飲用牛乳逼迫(ひっぱく)の懸念が一段と高まってきた。緊急的な都府県酪農対策が必要だ。
中央酪農会議(中酪)がまとめた指定生乳生産者団体(指定団体)の17年度総受託乳量(沖縄県を除く)は約698万トンとなった。700万トン割れは1987年以来。大台割れは弱体化が進む酪農生産構造の象徴的な意味を持つ。問題は増産に転じた北海道とは逆に減産幅が大きくなっている都府県の実態だ。
中酪まとめは指定団体の受託乳量ベース。Jミルクは、これ以外の集荷業者なども含めた2018年度生乳生産量を725万トンと予測する。前年度比99・5%、約3万5000トンの減少となる。
一時、バター不足など乳製品需給が問題となった。都府県の地盤沈下の進行は、国内酪農の次の危機的な局面、つまり輸入代替が利かない飲用牛乳の逼迫に結び付きかねない。都府県の原料乳不足を補うため、ホクレンからの道外移出生乳は前年比で2桁増の異例の多さになっている。だが、道内の乳製品工場の操業度も踏まえれば、移出対応にも限界がある。
特に業界が懸念しているのは、生乳生産が落ちる一方で、学校給食牛乳が再開し需給逼迫が一挙に高まる9月の動向だ。猛暑など夏場の天候の推移によっては、牛乳の出荷制限の動きが強まりかねない。大手乳業では「夏場にはスーパーの特売自粛が不可欠だ」の声も出ている。都府県の供給を補うための北海道からの生乳移出量は1カ月で約6万トンと限られる。ドライバー確保など輸送面での課題も多い。
乳製品主体の北海道と飲用向けが大半の都府県のすみ分けが、国内の用途別需給バランスを保っている。都府県の生乳生産の安定供給が欠かせない。
畜産クラスターなど各種事業はあるが、北海道をはじめ大型酪農を想定したものが多い。都府県の家族酪農を後押しした基盤強化で増産に結び付く対策の拡充が重要だ。Jミルクの前田浩史専務は開催中のブロック会議で、受託乳量700万トン大台割れを念頭に「新しい視点で新しい対策の構築を急ぐべき」と都府県支援の必要性を訴えた。
4月からは、これまでの加工原料乳不足払い法を廃止し、改正畜産経営安定法が施行された。生乳取引の多様化を促すもので、貿易自由化の進展とともに生乳需給の見通しが一段と不透明となってきた。制度改革の論議の中で懸念された、部分委託や酪農家の「二股出荷」の動きが一部で出てきた。こうした中で、都府県酪農てこ入れが課題となっている。
自民党は特別対策チームを立ち上げ緊急対策の検討に入るべきだ。実効性の高い生産基盤対策が問われている。
2018年04月19日
米中貿易紛争 WTOでの解決めざせ
米国の経済制裁に端を発した中国との貿易紛争は、にらみ合いが続いている。長引けば世界貿易が混乱し、日本などにも影響が及ぶ。経済大国同士の動向に目が離せない。
米フロリダで17、18日開催の日米首脳会談は、北朝鮮の非核化を巡る米朝首脳会談への調整が主議題とみられるが、通商問題にも及ぶ。安倍晋三首相は米中間で発生した貿易紛争について、世界貿易機関(WTO)での解決を主張すべきである。
WTOはこうした事態に備えて紛争処理機能がある。先の多角的貿易交渉で多大なエネルギーを投入して作り上げたものだ。こうした時こそWTOを利用すべきだ。
中国の習近平国家主席は、10日の「ボアオ・アジアフォーラム」で、輸入拡大による貿易黒字の削減を表明した。自動車やその他産品の輸入関税を削減し、外資企業の出資比率制限を緩和する。外資企業の知的財産権を保護する姿勢も示した。米国の要求を意識したような姿勢であり、貿易紛争の解決に前向きな意向を持っていることをうかがわせる。話し合いによる解決に応じる可能性を示すものだ。
習主席の発言に対しトランプ米大統領は、自身のツイッターで「思いやりのある言葉」として歓迎した。WTOで禁じている通商法301条による一方的措置に訴える構えだが、取り下げるべきだ。問題をこじらせるだけである。11月の中間選挙を意識しているのだろうが、国際経済の安定にはつながらない。
かつて農産物の輸出補助金を巡って米国と欧州が激しく対立した時にも、多国間交渉で話し合いで解決した。あの教訓を生かすべきである。
中国は2001年のWTO加盟を契機に急速に発展してきた。今では国内総生産(GDP)で世界第2位である。航空・宇宙、医薬品、通信などハイエンド製造業でも欧州連合(EU)を上回るほどの成長を見せている。
中国は、1人当たりのGDPが低いことを根拠にWTOで「途上国」扱いを受けているが、疑問の声が高まっている。途上国扱いすることの正当性を議論するタイミングでもある。「途上国」の定義をはっきりさせる必要がある。
米中貿易紛争の激化は日本にとっても歓迎すべきことではない。日本経済は、両国との関係に深く組み込まれており、紛争が長引いて農畜産物の国際価格が乱高下すれば、国内農業への打撃も考えられる。
日米首脳会談で米国は、自由貿易協定(FTA)を迫るか、環太平洋連携協定(TPP)の変更を条件にTPP復帰をほのめかす可能性がある。どちらも日本にとっては受け入れがたい。安倍首相は譲歩すべきではない。経済は国際的なつながりを強めており、「米国一国主義」に従ってはかえって問題を複雑にするだけだ。多国間による解決を主張すべきだ。
2018年04月18日