[達人列伝 33] 桜島大根 鹿児島市・重久清隆さん 伝統野菜を絶やさず 消費拡大一役 若手指導役も

桜島大根を抱え上げる重久さん。この状態から、さらに倍ほどになるという。(鹿児島市で)

 鹿児島県のシンボル、桜島大根を次代に残そうと奮闘する“伝道師”がいる。栽培歴半世紀以上のベテラン、鹿児島市の重久清隆さん(83)だ。地元の子どもたちに栽培方法を伝え、島の文化を継承する。流通業者と手を組み、首都圏など桜島大根になじみの薄い地域での消費拡大にも一役買う。

 桜島大根は200年以上の歴史を誇る地域の伝統野菜。「火山から出た軽石を含む土壌だから、大きく柔らかいものが育つ。他の場所ではこうはいかない」と重久さん。重さなどを競うコンテストで何度も入賞してきた腕利きだ。

 地元のJAグリーン鹿児島は「まじめで研究熱心。育てたダイコンは、大きさはもちろん、食味もすばらしい」(企画管理部)と評価する。

 自身のダイコンの質を追い求めるかたわら、島のシンボルでもある伝統野菜を後世に残そうと、地元の小学生を対象にした栽培指導に力を入れる。毎年、4年生を受け入れ、種まきから収穫までの作業を体験してもらう。

 教えは丁寧だ。マルチに開けた穴に10粒ずつ種をまくよう指導。生育後も、間引きする株の選び方を伝授する。「葉や根が赤みを帯びたものを残すのがポイント」と重久さん。手塩にかけたダイコンに愛着が湧き、自ら畑の雑草取りを申し出る子どももいるという。

 収穫後は子どもたちもコンテストに出品する。重久さんの教えで、周囲の大人たちに引けを取らない立派なダイコンが育っており、学校部門で10連覇を達成。今年のコンテストで11連覇を狙う。

 毎年、栽培指導終了後に届く子どもたちの絵やコメントが励みという。「長生きして、ずっと続けてください」。そんな子どもたちの気持ちが、伝統を教える原動力になっている。大きさに感動した子どもたちも、自ら栽培した桜島大根のおいしさにファンになるという。

 消費者へのPRにも貢献する。「希少野菜を絶やさない」との思いで、JAを通じて小売大手のイオンと連携。首都圏などで開くフェアに提供する。物珍しさだけでなく、食味でも心をつかみ遠く離れた地域のファンを増やしている。

 桜島大根の生産量は高齢化の影響で減っているが、重久さんの熱意は消えない。「歩ける限り作り続ける。ぜひ味わってほしい」と目を細める。(柗本大輔)
 

経営メモ


 1.5ヘクタールで桜島大根を年間1万本栽培。鹿児島市の「世界一桜島大根コンテスト」で複数回、胴回り賞に輝く。自己最高記録は約140センチ。
 

私のこだわり


 「複数の肥料を独自にブレンドし、出来によって翌年の配合割合を変える。無農薬栽培で安全・安心も追求する」 

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