和子牛高3年目 繁殖経営の強化を急げ

 和牛子牛の高値が肥育農家の経営を圧迫している。1頭70万円超の相場は3年目に入り、赤字幅は一層増えると危惧される。子牛価格を安定させ、和牛飼育が維持できる手だてを早期に打たねばならない。

 肥育農家は冬の時代に突入した。しばらく生産費割れの赤字経営を強いられそうだ。家畜市場で和牛子牛が70万円を超えたのは2015年11月。16年12月には87万円を記録、以降は若干下がったものの高水準が続く。

 現在、食肉市場に出荷される肉用牛は、ピーク時に子牛を導入して肥育した。もと畜費は生産費の実に6割を占めるまでになった。経営の厳しさは昨年10月、肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)が九州全県と沖縄、広島の9県で発動したことで明らかだ。過去の発動は枝肉価格の下落が要因だったが、今やもと畜費の上昇が経営を左右している。

 年明け以降、東京食肉市場の和牛枝肉は高値疲れが出ている。スーパーは安価な輸入品の販売を強化し、和牛の荷動きは鈍い。このままでは肥育農家は経営難となり、子牛導入もままならなくなる。

 鍵を握るのが繁殖基盤の強化だ。農水省の調査によると16年に農業所得が最も伸びた個別経営は繁殖牛である。1経営体の農業所得は557万円と前年に比べ48%増加。子牛価格が好調なためだ。

 環境が良好なうちに繁殖農家の体質強化を急ぎたい。将来、子牛価格が下がっても黒字経営が続けられる力を身に付けるべきだ。価格が下がった分、出荷頭数を増やせば総収入は変わらない。規模拡大が進めば一層のコスト低減が見込まれる。和牛生産を振興する上で必要不可欠といえよう。

 具体的には「飼料自給」「増頭」「後継者育成」の取り組みだ。飼料費は生産費で最も多く4割を占める。配合飼料高を乗り切るため餌の自給は最重要課題だ。耕畜連携による飼料稲、飼料用米の利用を進めたい。自給飼料の生産基盤を構築することで遊休農地の活用にもなる。

 増頭の近道は放牧だ。牛舎は要らないし、排せつ物処理、飼料給与の手間も不要となる。水田や里山放牧の技術は確立されており、周年放牧も成果を出している。自然資源と地域資源を生かした中山間地域こそ放牧を普及させたい。

 後継者の育成はもうかっている時がチャンス。家族経営協定を結んで給与、定期的な休日の導入、経営分担など生活の質向上に配慮しよう。研修生も積極的に受け入れて雇用の受け皿とすれば人材育成につながる。

 持続的な繁殖経営とは何か。市場で子牛がどれだけ高く売れたかでなく、どれだけ手元にもうけが残ったかが重要だ。

 農村の荒廃に歯止めをかけ、低コスト、安定生産により肥育農家がもうかることも大切だ。繁殖経営のあるべき姿が求められている。

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