田園、農へ 流れ加速

宮川さん(左)から葉物野菜の見極め方について指導を受ける大野さん(山梨県笛吹市で)

ふるさと回帰支援センターへ寄せられた相談件数

 農村への移住情報を提供するふるさと回帰支援センター(東京・有楽町)に寄せられた相談件数が2017年、センター開設以来初めて3万件を超えた。10年前の13倍と移住相談件数は増え続け、「田園回帰」の動きが加速している。20、30代の相談者が増加傾向にある。各県の移住相談会の開催回数が増えていることなどが後押ししている。同センターを通じた農家と若者の出会いが山梨県笛吹市で農業の経営継承につながるなど、新たな縁を結んでいる。
 

地元も就農歓迎 経営継承 視野に 山梨県笛吹市 大野さん夫妻


 山梨県笛吹市。畑の脇にあるプレハブの農作業小屋で、ベテラン夫婦と若い夫婦が談笑する。まるで親子のよう。2組の夫婦を運命的な縁がつないだ。

 16年3月。笛吹市で葉物野菜を1・7ヘクタール栽培する農家、宮川良雄さん(71)の妻・節子さん(70)は、移住希望者の中から自身の後継者を探そうと同センターを訪問した。「農業は一から始めると大変な時間とお金がかかる。技術や農機具など自分の財産を受け継いでもらいたい」。良雄さんの強い思いを受け止め、節子さんは同センターに向かった。

 偶然にもちょうど同じ日、時間差で横浜市出身の大野拓己さん(29)は妻のみかさん(28)と移住相談に訪れた。子育て環境や農業への興味から、農村への移住を決断した。

 相談を受けた「やまなし暮らし支援センター」の移住暮らし専門員・倉田貴根さんは、宮川さん夫妻を訪ねるよう助言した。

 笛吹市を訪れた大野さん夫妻は移住を即決。「地元の優しさと、野菜のおいしさに感動した」と拓己さんは振り返る。東京都内の広告会社を退職、16年6月に移住した。

 良雄さんは農業歴53年の大ベテラン。大野さん夫妻の師匠だ。19年中の経営継承を目指し、営農や経営の指導を受ける。血縁関係がなく世襲を超えた継承は、県内でも珍しいという。「若い人が来てよかった。地域の農業の方向性が見えてきた」(良雄さん)。

 大野さん夫妻には17年6月、長男の暖(はる)君が誕生。規模拡大を目指して、将来の法人化と正社員雇用を視野に入れる。地元スーパーに全量直接出荷しているが、将来は販路拡大も考える。拓己さんは「移住してよかった。周囲には耕作放棄地も多いので、いろいろな人を巻き込んでいきたい。また、家族の時間もつくり、子育てにも継続して協力していきたい」と新たな生活環境を楽しんでいる。
 

移住相談3万件超 20、30代半数近く 17年 ふるさと回帰センター


 同センターの17年の相談件数は3万3165件で、前年より7000件近く増加した。特に20、30代の相談者が増えている。08年は20、30代の割合が合計16%だったのに対し、16年は45・9%まで上昇。17年も同様の傾向が続いている。その背景として同センターは、リーマン・ショックや東日本大震災、地域おこし協力隊事業の広がりなどが要因と指摘する。

 同センターの嵩和雄副事務局長は「20代後半の若者の相談が多い。転勤や結婚などライフステージの変化のタイミングで、東京の価値が相対的に下がるために、地方移住を考えるのではないか」と分析する。(若者力キャンペーン取材班)

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