一般教書演説 TPP再交渉拒否貫け

 トランプ米大統領の一般教書演説は、経済政策の成果を自画自賛する一方で、通商政策では改めて2国間協議最優先の姿勢を示した。一貫性のないトランプ政治に左右されてはならない。環太平洋連携協定(TPP)の再交渉なら“深掘り”されるだけだ。安倍晋三首相は断固、拒否宣言を行うべきだ。

 一般教書演説は、政権の内政と外交の基本方針を述べるだけに、国際的に注目を集める。30日(日本時間31日午前)の演説でトランプ氏は就任後に「240万人の雇用が生まれている」と経済成長の実績を誇示した。11月6日に米議会の中間選挙を控える。現在、与党・共和党が上下院とも多数を占めるが、特に与野党の議席が僅差の上院で激戦が予想される。与野党逆転の“ねじれ議会”ともなれば、政権運営は一段と難しさを増すのは間違いない。

 通商政策に世界の耳目が集まった。演説約1時間20分の中で通商部分はわずか1分余り。先のスイスでの世界経済フォーラム(ダボス会議)で、トランプ氏は「全ての国の利益になるならば、TPP参加国と多国間で交渉することを検討する」と突如、復帰を示唆した。1年前、大統領就任直後に“永久離脱”したばかり。手のひらを返す言葉は「変心」か「乱心」か。トランプ氏の真意を確かめようと注目された。

 結果は、TPPの3文字を言わなかった。そして「悪い貿易協定は修正し、新しい協定の交渉に入る」と述べた。基本は、通商法301条など強硬手段もちらつかせながらの2国間協議だが、多国間交渉も拒否しない。トランプ氏得意の「ディール」(取引)と見た方がいいだろう。ただ、選択肢を示すことは、米国側がいくつかの交渉カードを持つ裏返しでもある。そして、大前提は既存協定の“修正”に重きを置く。

 今月上旬に来日するペンス副大統領の姿勢に注目したい。安倍首相は31日の参院予算委員会での質疑で3月8日のチリでの署名を念頭に「まずはTPP11の早期署名・発効の実現を最優先に進める」と強調した。TPP11の合意内容でも国内農業の打撃は避けられない。さらに“深掘り”に結び付く再交渉拒否を明言すべきだ。

 安全保障に絡め演説では中国を名指しした。膨張主義を強める中国への警戒感を示したものだ。習近平主席は経済版シルクロード戦略「一帯一路」を展開中だ。単なる経済政策ではなく、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の資金援助と併せ、TPPに対抗した中国の権益拡大の側面が強い。

 演説と同じ頃、訪中したメイ英国首相は中国の李克強首相と会談し、経済連携強化を確認した。中国の欧州戦略浸透の表れである。中国はトランプ氏の指摘にどんな反応をするのか。3月上旬の国会に当たる全国人民代表大会で、習主席がどう言及するのか注目したい。

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