生産所得の増加 改革の成果とは言えぬ

 国会の序盤戦で、安倍農政の“成果”が焦点になっている。安倍晋三首相は、生産者の手取りにつながる指標「生産農業所得」が増え、高水準を実現したことを誇らしく説明するが、農政改革の効果と言えるのか疑問である。生産縮小による単価の上昇が背景にあるとすれば、持続性が危ぶまれる。むしろ深刻に受け止めなければならない。

 直近の生産農業所得(2016年)は3兆7558億円で、2年間に9000億円以上増えた。この10年は3兆円前後で推移していることを考えれば目覚ましい実績で、安倍首相は「攻めの農政」の果実だと胸を張る。大本の農業総産出額も同様の動きを見せる。16年は9兆2025億円で、2年間に約8000億円増えた。

 これらを押し上げた大きな要因は何か。品目別に見ていくと、決して単純に喜べない現実が浮かび上がってくる。

 まず米だが、好調なのは安倍首相が比較対象とした14年産は価格が暴落し、そこから回復に向かっているからだ。産出額はこの2年間で約2000億円以上増えたものの、長期的には漸減が続いている。

 野菜の産出額は16年が2兆5567億円と2年間で3000億円以上増え、安倍農政の“優等生”のように映る。卸売価格が期間中に1キロ217円から246円に13%高となったことが大きい。だが、産地の供給力である卸売数量は落ち込んでいる。14年の1019万トンを境に1000万トンを割り込み、16年は948万トン。業務需要の国産志向という追い風はあるものの、生産拡大という好循環をつくりだせていない。

 畜産も生産の減少に歯止めがかからない。産出額で肉用牛は14年の5940億円から16年に7391億円と大きく増えた。一方で、と畜頭数は8%落ち込んでいる。豚は豚流行性下痢(PED)による頭数減から回復に向かいつつあり、同期間にと畜頭数は1%増やした。この結果、価格が落ち着き、産出額は逆に3%減らしている。

 どの品目も生産基盤の弱体化が進み、供給過少から価格の上昇を招く構図だ。今後さらに産地の供給力が弱まれば、農業総産出額や生産農業所得の拡大は一時的なものに終わりかねない。成果を持続的に出していくことが、本当の改革である。

 生産農業所得の増大を達成できた手段として安倍首相が力を込めた「攻めの農政」のほとんどが、実は政府自身の評価で及第点に届いていないという皮肉な現実を指摘しておく。

 農地集積は、農地中間管理機構(農地集積バンク)に施策と財源を集中させるも、8割集積の目標に対して実績は54%でB判定。6次産業化も、10兆円の市場規模目標に実績5兆5000億円で同じくB判定。農林水産物輸出もB判定だ。政権発足から5年。“処方箋”が適切なのかを含め、安倍農政を丁寧に検証すべき時ではないか。

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