無頼の文士は

 無頼の文士は、敗戦の焦土の中で人も国も「堕ちよ」と言った。坂口安吾ありせば、いまの世にどんなたんかを切るか。きょうの忌日に、作家藤沢周さんが編んだ『安吾のことば』(集英社新書)をひも解く▼「戦争は終った。永遠に。我々に残された道は、建設のみである」(「戦争論」)。歴史を修正してはならぬ。戦前への回帰を正義としてはならぬ。それが安吾の覚悟であり、出発点であった。戦後70余年。「回帰」の気配が忍び寄っていないか▼憲法観も明快。「人に無理強いされた憲法だと云うが、拙者は戦争はいたしません、というのはこの一条に限って全く世界一の憲法さ」(「もう軍備はいらない」)。ちっぽけな自衛権など無用の長物とも。泉下で今日の改憲論議にほぞをかんでいる姿が浮かぶ▼原子力の未来を案じていた。これを制御し平和な秩序を考え、限度を発見するのが学問だとの卓見を世界の指導者に聞かせたい。衆愚政治を嫌い、政党政治に厳しかった。「時の民意の多数を制するものが真理ではないのである」との警句は、1強の安倍首相にささげる▼胸に響くのは「政治は無限の訂正だ」という言葉。政治は国民の幸福という理想に向かって、改良を重ねる作業だと。この国は誤りを正し前に進んでいるだろうか。

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