[達人列伝 38] シイタケ 秋田県横手市・藤原信博さん 菌床見抜く経験と勘 適度な刺激鍵 厚みと質維持

菌床シイタケを収穫する藤原さん(秋田県横手市で)

 かさが張り出したシイタケ。ひときわ大きなサイズは口に入れた時、ジューシーな食感を生み出す。秋田県横手市の藤原信博さん(52)が作る菌床シイタケだ。

 裏側までかさが詰まり、厚みも十分なシイタケは火を通しても、しっかりとした歯応えを保つ。藤原さんが所属するJA秋田ふるさと菌床椎茸(しいたけ)部会では優れた形状をA、B品として扱う。藤原さんの菌床シイタケの7割以上はA、B品となり、部会の平均を上回る。

 質の高いシイタケを生産するため、藤原さんが徹底するのは菌床の管理だ。シイタケを発生させるには菌床に刺激を与える。菌床の中に、しっかり菌糸が張った状態で刺激を与えないと、大きなシイタケは出ない。いろいろな要素から菌床の中を想像し、タイミングを見極める。

 栽培歴25年の中で培った眼力で適期を見抜く。おがくずで作られた菌床の色は基本的に茶色。「明るい色になった時が頃合い。こればかりは自分で養った勘が頼り」と藤原さんは打ち明ける。

 大ぶりのシイタケを作り続けるため、刺激の与え方にも細心の注意を払う。菌床はたたかず、水を吹き掛けるだけ。刺激が強過ぎると菌床に負荷がかかり、2回目以降の収穫ではサイズの小さく、ジューシーさに乏しいシイタケが多くなる可能性がある。

 藤原さんは「1回の発生を8割程度に抑えることで、常にボリューム感のあるシイタケが取れる」と強調する。

 失敗も経験してきた。菌床をフィルムで包み、下部に水を入れて上部からシイタケを出す上面栽培を採用しているが、15年前の導入当初は水を入れるタイミングを誤り、雑菌が多発したこともあった。

 シイタケの菌が、おがくずの中の栄養体を食べ切っていない状態のまま水を入れたことが原因だった。その後も栽培を続ける中、栄養体を食い切ると、わずかだが菌床が縮み、ぴんと張っていたフィルムが緩むことに気付いた。以来、水を入れる時期はフィルムを確認してから決める。

 「自分の目を信じていなかった。見据えるべきだったのは菌床の状態だった」と振り返る。

 JAの部会では指導役を務める。「自ら考え、失敗を恐れず、忘れずに細かく覚えておくことで次の気付きにつながる」と説く。部会員は100人を超え20、30代の若手も多い。「栽培技術を語り合える仲間がどんどん増えてほしい」と願う。(柘植昌行)
 

経営メモ


 年間菌床4万6000個でシイタケを栽培。他に水稲2.9ヘクタール、リンゴ20アール。労働力は自身と妻、従業員3人。
 

私のこだわり


 うまいシイタケを作り続けるにはマニュアルだけでは不可能。失敗を含め経験を重ね、引き出しを多くつくることが大事。

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