[緊急インタビュー 針路を問う 2] 元金融相 亀井静香氏 土のにおい消えた 地方の声生きた政策を

亀井静香氏

 だんだん政治から土のにおいがしなくなった。ITとかお金のにおいばっかり。農業が総生産の何%なんて関係ない。日本人の魂の根っこにあるのが農業。生活を形づくっている基本の中の基本だ。そのにおいが薄れてきたら日本でなくなって、漂い始める。そういう状況だ。

 人が東京に集まって土地から離れた。昔は東京に出ても田舎に帰る家があったが、今は都会に出た者は故郷を失っている。家族関係が崩壊している。いろんな意味で土のにおいが消えた。

 世の中、金、金、金になった。ビットコインだか何だか知らんけど、貨幣と兌換(だかん)が保証されていない得体の知れないものが宙に浮いて舞い出した。虚が虚を生んで富の世界をつくる。そういう時代になれば、根っこのあるものが消えていく。人類全体が狂って破滅に向かっている。

 農政も農業に関係のない連中が仕切っている。安倍晋三(首相)は間違えている。官邸主導というのは、官僚主導と同意語だ。官邸という政策を作る機械があるわけじゃないんだから。

 党が力を持たないといかんのだが、今は議員がサラリーマンみたいになっている。大臣になりたい。いいポストに就きたい。だから上に反抗しない。そんなところに農政をどうするかという議論が生まれるはずがない。小選挙区制度の弊害だ。

 晋三はいい政治家だが、もっと地に足を着けた政治をやったらいい。地方議員を大事にして自治体の声をよく聞く。生産性が低くても人の心を大事にする。土地を耕す、米を作る、野菜を作る、そこに生きがいを感じている人を大事にする政治をやらないかん。

 田舎の土地で生活できる人たちがいないといかん。農業政策の基本はそこだ。土地を何十町歩も集約して機械でやっておしまいの農業でいいというのは間違い。小規模でも兼業でも、やっていける環境をつくらないと駄目だ。残念ながら農協すら効率的に農産物を生産すればいいという団体になっている。

 地方の生きていく力を大事にする金の使い方をしないといかん。植物も根っこに水をやり過ぎると枯れる。自力がつく地方の育て方というのは難しい。

 TPPにしても、だいたい歴史も地理的条件も違うのに同じものさしを作れるわけがない。結果として大国に有利なものになっちゃう。あんなもの本当に日本の国益になるか、よく考えてみれば分かるはずだ。日本の利益をきっちり守っていく立場に徹していないね。

 憲法改正なんてできっこないのに皆、言葉遊びをやっている。日本は解釈でやっていけばいい。何も今、国論を二分する国民投票をやって言葉遊びで政治を空転させる必要はない。

 俺は晋三が続けた方がいいと思うが、赤信号がついている。岸田文雄(自民党政調会長)が総裁選に出て2、3位連合を組まれると3選はなくなる。全然、盤石じゃない。かげろうみたいなもんだ。(聞き手・西野拓郎)

<プロフィル> かめい・しずか

 1936年広島県庄原市生まれ。東大卒。79年衆院選で初当選、以来当選13回。運輸相、建設相、自民党政調会長などを歴任。郵政法案に反対し、2005年に自民党を離党、国民新党を結成。民主党の鳩山内閣で金融・郵政改革相を務めた。17年衆院選に出馬せず、政界を引退。81歳。

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