“お役立ち”営農技術 篤農家の知恵 ネットで共有 成功招く“経営術”

オランダで主流の高軒高のハイワイヤ栽培に合うよう、自前で高くした柱部分を指す雨森さん(高知市で)

 これまで篤農家から教えてもらっていた優れた農業技術や経営のノウハウが、インターネット上でやりとりされるようになってきた。栽培マニュアルをネット販売したり、ネットで資金調達をするクラウドファンディングの仕組みで提供したりする事例も生まれている。
 

ヤフオク 3件1万円 高知市 雨森克弘さん


 高知市春野町で40アールのミニトマトをハウス栽培する雨森克弘さん(58)は、農業技術情報などをオークションサイト「ヤフーオークション」に出品している。ヤギの飼い方や、ハウスの軒を安価で高くし高軒高でトマトを栽培するハイワイヤ方式に対応させる方法など、約20項目を提供する。

 ヤフオクに情報を提供し始めたのは昨年6月から。落札価格を設定し、3項目セットを1万円で販売している。情報提供を希望する場合は、落札した人にPDFファイルで情報が送られる。疑問点や質問は雨森さんが電話で直接対応もする。効果がなければ返金するとしているが、返金された事例はない。

 雨森さんは「最初はまさか売れるとは思わなかった。反響があり、実際に売れて驚いた」と話す。台湾からも注文があり、今までに約50件の販売実績がある。

 他に、シャンプーの泡でハウスを保温する方法なども出品する。雨森さんは「以前は近所の篤農家などに聞いていた情報が売れる時代。自分が考案した情報が世界に発信できる。農家の持つ情報を提供する仕組みが確立し、少しでも農家の収入につなげたい」と話す。
 

「HPに」賛同者出資 宇都宮市 阿部英生さん


 宇都宮市の阿部梨園は4月、農業経営のノウハウをインターネットで無料公開する。同園が3年かけて取り組んできた経営や運営改善のアイデア約450のうち、汎用(はんよう)性のある300事例を掲載する予定だ。

 園主の阿部英生さん(40)は3年前、梨のブランド化と生産効率化を図り、外資系企業などで活動していた佐川友彦さん(33)を経営実行者として迎え入れた。

 以来、園地マップ作成や樹木に識別番号を付けて管理する方法、従業員の作業表の改善、顧客データ管理法、組織改善策などを実行した。こうした改善策が奏功し、ブランド梨として高級百貨店と取引するまでに成長した。

 4月には項目を整理して、ノウハウ集としてホームページ(HP)に掲載する。広く周知するためクラウドファンディングで運営資金を募ったところ、1カ月間で農家ら325人の賛同者から446万円の出資が集まった。

 農家が情報を購入するときの煩雑な決済手続きの手間を省くため閲覧は無料にしたが、出資者の半数は農家。返礼品として、梨やポロシャツの他、農家向けに経営ノウハウの出前授業を提供しているが、出資した農家からは出前授業への要望が多いという。

 佐川さんは「われわれが培ってきた経営ノウハウを公開することで、他の農家の役に立ちたい。農家の高い生産技術を生かすための経営の工夫を広く共有できれば、産地の振興にもつながる」と期待する。
 

特許取得ぜひ

 

 坂野雅敏・全国農業改良普及支援協会会長の話


 集落で伝承してきた農業生産や経営技術は、高齢化や離農者の増加で上から下の世代に直接伝えるのが難しくなってきた。インターネットで普及する動きは、自然な流れだろう。熟達した農家の小さな工夫は商品価値があり、需要が高い。情報提供者には、有償・無償いずれの場合も事前に特許取得することを勧める。転売や、そこから発生するトラブルを防ぐためだ。

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