[達人列伝 40] 養豚 岐阜県高山市・吉野毅さん 地場栗与え銘柄販売 無薬こだわり 地域盛り上げ

餌の栗を手にする吉野さん(岐阜県中津川市で)

 岐阜県高山市の吉野毅さん(57)は、抗生物質や合成抗菌剤を一切使わない「無薬飼料」を使った養豚一貫経営に取り組む。「健康に育った豚は絶対においしい」という信念の下、衛生管理を徹底した生産を貫く。肉質を重視した四元豚は、しっかりとしたうま味が好評だ。岐阜県特産の栗を餌とした豚の飼育も手掛けるなど、安全・安心という基盤に立ち、さらに付加価値を高めた豚の生産にも力を入れている。

 吉野さんは同市の養鶏農家出身。高山市農協(当時)職員を経て、1989年に就農した。「やるなら一貫経営。生産を短いサイクルで回せることに魅力を感じた」(吉野さん)として養豚の道を選んだ。当初は特定病原菌不在豚(SPF豚)、2003年に無薬での生産に切り替えた。

 今でこそ無薬生産も増えてきたが、当時はまだ一般的でなく、そもそも無薬飼料がなかった。JA全農岐阜などと協力して、JA東日本くみあい飼料に製造を依頼。オリジナル飼料を作り上げた。

 外部からのウイルスの流入、病気の予防には細心の注意を払う。畜舎ごとに用意した専用の長靴に履き替えないと出入りできない。分娩(ぶんべん)室は床暖房を導入し、子豚がくしゃみやせきをすることはほとんどない。

 肉のうま味を引き出す餌や交配にもこだわる。餌は肥育段階の飼料に玄米を20%、麦を30%以上混ぜて与えてオレイン酸を高める。試行錯誤の末にたどり着いた交配は「WLDB」の四元豚。肥育日数は一般的な三元豚より延びるが、黒豚のバークシャー種が入ることで良食味でこくのある味わいに仕上がる。「飛騨旨豚(うまぶた)」のブランド名で、大手スーパーのイオンや東京の高級スーパーに流通している。

 14年から、新たなブランド豚として、餌に栗を与える「栗旨豚」の飼育を中津川農場で始めた。原料となる栗は、傷があるといった規格外品を活用。原料調達にはJAひがしみのが全面協力する。むき栗と甘味の強い蒸し栗を、仕上げの30日間以上食べさせる。まだ年間生産は250頭ほどで、地元でしか流通しないものの、昨年度から通年出荷にも取り組む。

 現在、世界遺産のある白川村に最新設備を備えた農場を建設中。吉野さんは「おいしい豚肉をつくることで地域に貢献したい」と力を込める。(岐阜県JAひがしみの=纐纈由衣特別通信員)
 

経営メモ


 妻の聡子さん(56)と2人で就農。2人の他に高山農場で6人、中津川農場で5人を雇用する。高山農場で母豚285頭、中津川農場は母豚245頭を飼育。両農場合わせて年間1万1000頭を出荷している。
 

私のこだわり


 「健康に育てた豚はおいしい」

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