大妻女子大学教授 小谷敏氏に聞く 対話して受け入れて 失敗包み込む地域の度量 

小谷敏氏

 自分の役割が確認できる環境や地域の再生に住民自らが動きだす現場に、居場所を見いだす若者たち。『21世紀の若者論 あいまいな不安を生きる』などの著者で、「若者論」の第一人者である大妻女子大学の小谷敏教授に、若者が居場所を求める背景や受け入れる鍵を聞いた。

 ──若者の特徴をどう見ますか。

 200万人を超す団塊世代に比べ、今年の新成人は120万人。数は力だ。パワフルな年長の世代に比べて、現代の若者を「ひ弱」と受け止める人もいるだろう。

 若者には大きく変化している社会の在り方が常に投影される。実像から懸け離れた若者像が流布してきた歴史を見れば、若者論も鵜呑みにすべきではない。目の前の若者と対話してほしい。

 世論調査では20代の自民党支持の高さが目立つ。それは就職も好調で、そこそこ快適な生活を送れる現状を変えたくない“生活保守”なのであり、右傾化しているとは一概に言えない。インターネットで右翼的な発言を繰り返す“ネトウヨ”という言葉はあるが、ネット上の掲示板「2チャンネル」が生まれた40歳前後が中心だ。

 今の若者は少子化の影響で、大学まで競争にもまれることが少なく、過保護に育てられてきたことは否めない。失敗しないよう、人に迷惑を掛けないよう見守られてきた世代。空気を読み人間関係に繊細な分、傷つきやすく、孤独を恐れている。景気の良かった時代の記憶を持たない一方、リーマン・ショック、東日本大震災、「改革」と叫ばれながら何も変わらなかった現実を知っている。だから社会に過度な期待をしていない。先が見えない時代、お金やものや地位ではなく、他者に必要とされることを無意識のうちに求めている。

 ──若者は都会と農村をどう見ていますか。

 長時間労働に非正規雇用。待機児童に1人で家事や育児をこなす「ワンオペ育児」。都会の暮らしには夢や希望を見いだしにくい。そして大企業など、強くて大きい組織ほど、若者を使い捨てにする傾向にある。

 若者たちは自分がかけがえのない存在として扱われ、心からくつろげる居場所を求めている。都会、農村という単純な比較ではなく、自分を受け入れてくれる居場所を求めている。

 農村に向かう若者の数は全体では一握り。だが、都会にいても土に触れ、生き物を育て、人々が緊密に協力し合う農村の生活に憧れを潜在的に抱いている若者は実は少なくないだろう。

 ──若者力を育む地域や社会の在り方を教えて下さい。

 日本は「昔はこんなに苦労した」「伝統を守れ」と大人が言いがちだ。これでは若者はいつかない。若者を見下し、使い捨てにしようとする組織や地域は例え大企業であっても、若者からいつか愛想を尽かされてしまうだろう。

 頼りないかもしれない。ものを知らないかもしれない。そんな若者たちを「失敗しても良いんだよ」と包み込む大人たちや地域の度量が若者力を育てる。(聞き手・尾原浩子)

<プロフィル> こたに・さとし

 1956年、鳥取市生まれ。大妻女子大学教授。社会学が専門。『若者たちの変貌―世代をめぐる社会学的物語』など著書多数。

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