東京のど真ん中で郷里の旧友に会って

 東京のど真ん中で郷里の旧友に会って心地よい方言に浸った。不思議と安らぐ▼生まれ育った地方の訛りは、なかなか消えないらしい。誘拐事件の脅迫電話テープが公開されると、言語学者の金田一春彦さんのところに決まってマスコミが取材に来たという。言い回しの中に、犯人の生まれ育った地域のアクセントが必ず“顔”を出す。『美しい日本語』(角川ソフィア文庫)で紹介している▼先日、レコーダーで自分の声を聴いて、その思いを新たにした。録音の中の声には、確かに10代まで過ごした地方の発音が残っている。柿と牡蛎、橋と箸に区別がない。「し」は微妙に「す」に近い。言い分けているつもりだが、再生された「じしん」は「ずすん」と聞こえる▼何も臆することはない。特徴ある言葉は人生の証し。芥川賞に輝いた若竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』は、宮沢賢治も使ったであろう岩手言葉を駆使して、人の心のひだに触れた。江戸での生活が始まったNHK大河「西郷どん」は、鹿児島弁の吉之助が道を聞くのに戸惑う場面が、ドラマに真実味を醸す。いずれも方言の力である▼韓国平昌ではきょうからパラリンピック。身体に障害を持つアスリートが技を競う。それぞれのお国言葉で大きな声援を届けたい。

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