TPP11署名式 拙速交渉国会で熟議を

 日本など11カ国は、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)に署名する。政府は今国会での早期承認を求めるが、この間の前のめりな交渉姿勢には疑問が残る。不安を大きくするのは、いまだ払拭(ふっしょく)できない米国の影だ。検証すべきことは山積している。国会までが拙速審議に終始すれば、大きな禍根を残しかねない。

 南米チリで現地時間8日(日本時間9日未明)に行われる署名式には、日本の他、オーストラリアやニュージーランド、カナダなどが臨む。農産物輸出で世界最大の米国は離脱したものの、そうそうたる輸出国がそろい、脅威は消えない。農産物市場を大幅開放する協定が署名で確定し、日本農業にとって歴史的な節目を迎える。

 TPP11交渉は急展開した。米国が抜けて求心力が一気に弱まる中、引っ張ったのが日本だ。修正・凍結箇所を絞り、まとめることを優先した。日本農業にとっては問題が大きく拙速な対応と言わざるを得ない。米国参加を前提としていた市場開放分を、他のTPP11参加国にみすみす与えることを意味するからだ。7万トンの低関税輸入枠を設けた乳製品は、米国が抜けた分の枠を減らさず、代わってニュージーランドなどが攻め込んでくると想定される。

 農業者の懸念に対し、政府は再協議が可能だとするが、見通しが甘いのではないか。農産物の輸入枠縮小を日本が求めても、メリットを得た輸出国が好条件を手放すわけがない。米国を含む12カ国での交渉では“攻め”の自動車をカードにできたが、TPP11再協議で駆け引き材料はあるのか。「しっかり担保すべきは担保した」(茂木敏充TPP担当相)と胸を張る根拠を政府は示すべきだ。

 再協議の問題は、米国との2国間協議と密接に関わる。TPP11で米国離脱分を修正できずに、万が一、2国間協議で米国から追加的な農産物輸入を認めることになれば、市場開放の水準は12カ国TPPを大きく上回ることになる。

 TPP11も米国離脱を受けた日米2国間協議も、元は12カ国TPPに端を発している。そのTPPに対しては、重要品目の聖域確保を求めた国会決議が重い約束として存在する。国会決議は、TPP11と日米2国間協議に対しても厳しい縛りをかけていることを政府はしっかり受け止めるべきだ。

 気掛かりなのは、日米2国間協議に対して政府が強い態度を貫けるかどうかだ。その姿勢が見えないために、TPP11単独では農業への影響を見定め難く、農業関係者の不安を募らせている。

 国会決議との整合性を問う視点が改めて重要だ。政府に必要なのは、まずTPP11の再協議の実現性をきちんと説明すること。その上で、日米自由貿易協定(FTA)など米国からの追加的な市場開放要求を断固阻止する姿勢を明確にすることだ。

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