米中貿易摩擦激化 農業への飛び火に警戒

 トランプ米大統領の自国第一主義が世界を揺るがす。今回の鉄鋼・アルミニウムの輸入制限で万が一、報復合戦となれば米中貿易戦争に発展しかねない。農産物貿易に飛び火する可能性も高い。日本への一層の市場開放要求につながる恐れもある。今後の行方を注視すべきだ。

 トランプ氏の政治カレンダーは2020年秋の次期大統領選からの“逆算”である。これを念頭に、さまざまな政治判断で耳目を集める作戦だ。

 11月6日には米国議会中間選挙がある。16年大統領選でのロシア疑惑が消えない中で、訴追手続きの主戦場となる下院の過半数割れは、大統領の弾劾裁判に道を開く。13日には、その前哨戦として鉄鋼産業が盛んなペンシルベニア州で下院補選がある。政権内の対立も目立つ。関税反対派のコーン国家経済会議委員長の辞任表明は、政権内の保護主義傾斜を一段と加速しかねない。

 一方で安倍晋三首相は4月初めに訪米する。日米首脳会談の行方を注視したい。急転直下の朝鮮半島情勢も踏まえたものだが、逆に安全保障と通商交渉とを絡め譲歩を迫られないか。

 8日、世界の通商問題を左右する二つの出来事があった。米国の一方的輸入制限措置と、南米チリでの米国抜きの11カ国による環太平洋連携協定(TPP)11の合意文書署名式だ。

 トランプ大統領が鉄鋼とアルミニウムの輸入増が米国の安全保障を脅かしているとして鉄鋼25%、アルミニウム10%の関税を課す文書に署名した。発動は2週間後の23日。それまでに同盟国を中心に適用除外交渉を行う。標的は中国だ。いまひとつの動き。同日のTPP11署名式でチリのムニョス外相は「保護主義的な圧力に対抗する」と表明した。日本は主導的な役割を担ったが、万全の国内対策が欠かせないことは言うまでもない。

 二大経済国、米中の今後の行方はどうなるのか。

 中国は現在、20日までの日程で国会に当たる全国人民代表大会(全人代)を開催中だ。11日には国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正案を採択した。一層の強権政治が可能となる習近平政権が、トランプ氏の一方的な通商対応にどう言及するのか。習主席自ら旗を振る通商戦略「一帯一路」は、TPPへの対抗も兼ねインフラ投資と一体で中国の政治、経済的な影響力を増す。米国は、膨張主義を強める中国けん制へ最強空母をベトナムに寄港させた。

 注視すべきは、報復が報復を呼ぶ貿易戦争の懸念と、その悪影響だ。中国は、今回の輸入制限措置で、世界貿易機関(WTO)提訴の他、米国からの主要輸入品目である農産物への対抗措置も示唆。米国産大豆への輸入検疫も強化した。今は日米経済対話のさなかである。中国市場が制限されれば、再び日本への市場開放圧力が強まることもあり得る。鉄鋼だけでなく、農業分野への飛び火に警戒が必要だ。

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは