消したい過去なら人後に落ちない

 消したい過去なら人後に落ちない。その日に戻れるなら、あれもこれもやり直したい▼米国のSF小説『リプレイ』は、そんな願いをかなえた物語である。主人公は何度も生まれ変わり人生をやり直す。だが書き換えのできない実人生では、悔恨を抱えて生きるよりない。でも霞が関の役人は例外らしい。財務省が森友問題を巡る決裁文書などの書き換えを認めた▼国会に示した文書を改ざんしたとなれば、国民を欺いたことに他ならない。よほど消したい過去があったのか。一役人の判断でできることなのか。稟議と決裁で生きる役人を追い込んだ「見えざる力」はなかったのか▼良くも悪くも日本は稟議社会。財務省はその頂点に立つ。「稟」の語源は米蔵、主君が家臣に授ける扶持(ふち)米に由来するという。上司の覚えめでたい部下が出世するのは世の習い。忖度も働こう。今回の一件で、公僕たる官僚が国民のしもべでないことはよく分かった。安倍政権では、官邸主導の政がまかり通ってきた。1強ゆえの慢心とおごりが、国家の米蔵をむしばんだか▼「築城3年、落城1日」は首相が戒めに使う言葉。「上書き」や「書き換え」を許さず結果に責任を負うのがトップの務め。よもや現場に責を押し付けて、この件を「初期化」することはないですよね。

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