作家の山口瞳は

 作家の山口瞳は、50代半ばになっても進学や就職試験の夢にうなされた。夢の中で、自分だけが制服姿の中学生。級友たちは、東大や官庁へ。大企業の重役になったものもいる▼ここでようやく目が覚める。「ああ、よかった。夢だった」。枕カバーはびっしょりとぬれている。一家を成し、一流作家になった彼でさえ、こうである。就活前線のただ中にいる若者たちも、嫌な寝汗をかく日々だろう▼売り手、買い手という品のない言葉が飛び交う。人身売買ではあるまいし。だが内定をもらうことが、どれほど大変かもよく分かる。学生有利といっても、第一志望は常に狭き門である▼『ビジネス版悪魔の辞典』(山田英夫著)を引くと、【就活】は「キツネとタヌキの化かし合い」。【エントリー】は「人生を賭けて作成する学生と、10秒で処理する人事担当者との出会い」。【採用担当者】は「信じていた学生から、次々と内定を辞退され、病んでしまう人」。お互いツラい。就活中の学生にはこんな広告コピーを贈りたい。〈仕事を聞かれて、会社名で答えるような奴には、負けない〉▼人生の職場は東京のオフィスだけではない。会社員という名の職業はない。食や農業関連の説明会もたくさんある。地方も君たちを待っている。どうか良い出会いを。
 

おすすめ記事

四季の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは