「担ぎ屋」と呼ばれる稼業が終戦直後にあった

 「担ぎ屋」と呼ばれる稼業が終戦直後にあった。“闇米”を官憲の目をくぐって消費地に運ぶ人たちのことを言った▼吉永小百合さんが120作品目となる映画「北の桜守」でその役を演じている。樺太(サハリン)から命からがら北海道に引き揚げた母と子は貧窮のどん底を生き抜く。礼節も矜持も飢えには勝てぬという場面が何度も出てくる。おにぎりを握るシーンのために150個作って特訓したという。食はこの作品の重要なモチーフである▼「北海道オタク」を自称する。「雄大な景色の中で演技をしていると、私自身もちょっとグレードアップするような感じがありまして」と作品発表会見で語った。北海道三部作の終章に当たる今作品も、女の生涯に真正面から吹きつける風雪が印象的である▼東日本大震災から丸7年。道半ばの生活再建と併せて、心の復興が問われている。強い精神的衝撃で起きる心的外傷後ストレス障害(PTSD)が疑われる人も少なくない。映画の主人公が戦争で負った心の奥深くの傷は被災者のそれとも重なる。発災7年に合わせて公開されたことに意味がある▼モーパッサンの『女の一生』はこんなせりふで終わる。「世の中って人が思っているほど良くも悪くもない」。そう思えるようになってほしい。

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