技能実習生の事故 雇えば労災保険加入を

 外国人技能実習生の農作業中の事故が絶えない。高齢化が進む農業は、他産業に比べて最も危険な仕事だが、監理団体や受け入れる農家による安全教育がないまま現場に入り、事故に遭うケースもある。外国人が事故に遭えば責任は受け入れた農家側が負わなくてはならず、国際問題にも発展しかねない。雇った時点で労災保険の加入が急務だ。

 国際研修協力機構(JITCO)によると、外国人実習生は毎年、農作業事故で死亡している。2009年度は4人、10年度は1人、11年度は2人、12年度は4人。性別では男性9人、女性2人。けがなどの事故は09年度は10件、10年度は15件、11年度は19件と増加しており、休業1カ月以上の重大事故が3割を占めた。

 無資格で道路をトラクターで走行中、土手から転落して亡くなったり、ハウスのビニールを張り替えている時に転落して負傷したり、草を取り除こうとして収穫機の回転部に手を触れて負傷したり。フォークリフトを運転していて溝にはまって負傷するなど、農家と同様の事故が目立った。法整備も含めて安全に作業できる環境が整っていないことを物語る。

 農業分野の外国人実習生の数は年々増加している。法務省によると16年は8787人と、07年(3288人)に比べて5000人以上が増えた。官民挙げた対策を取らない限り、農家だけでなく外国人実習生までもが命を落とすことになる。

 実習生の安全は受け入れ側の農家と、JAなどの監理団体が守らなくてはならない。実習生との雇用関係がスタートした時点で、農家は労働安全衛生法に基づく事業者となり、安全に配慮する義務が生じる。実習生は「労働者」となり、監理団体は入管法に基づく責任と監理が求められる。具体的には、農家は実習生の作業安全と健康確保に向けた対策を実施し、実習生が安全に衛生的に作業できるよう努めなくてはならない。

 1人でも人を雇った場合、欠かせないのが労災保険の加入だ。実習生が農作業中のけがや病気、障害、死亡した際、事業主に代わって補償する公的保険だ。だが制度が実態に追い付いていない。個人経営の農家の場合、雇用する実習生(従業員)が4人以下であれば、労災保険の加入は「任意」。掛け金がかさむからといって加入を怠ると、実習生が事故に遭った場合は治療費や入院費など全額、農家側が負担しなくてはならず、監理団体側の責任も問われることになる。もし、死亡事故が起きれば農業経営が立ち行かなくなることは明らかだ。

 深刻な人手不足の中、労働力を求めて実習生を受け入れる産地は多い。だが、尊い命を守れないようでは産地を維持することはできない。1人でも雇ったら労災保険の加入は欠かせない。コストをかけずして安全は守れない。

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