通勤時間を狙った卑劣な犯行だった

 通勤時間を狙った卑劣な犯行だった。慌てふためく人々の“地獄絵”がよみがえる▼きょうは地下鉄サリン事件から丸23年。あの日、通勤ラッシュ時の午前8時ごろ、営団地下鉄の電車内で、猛毒のサリンがまかれ、駅員や乗客が次々に倒れた。死者は13人、負傷者は6000人を超えた。犯行はオウム真理教幹部の仕業だった▼芥川賞作家で『もの食う人びと』を書いた辺見庸さんの経験談が忘れられない。通信社の夜勤明けから帰宅するため地下鉄の駅に向かう辺見さんの目に飛び込んできたのは、うずくまって苦しむ人の姿。そして、その被害者をまたぐように、通勤を急ぐ多くの姿もあったという。辺見さんはそんな日本社会の問題点も鋭く語ったものである▼松本智津夫死刑囚を含め13人の死刑が確定し、1月に一連の刑事裁判が全て終了した。上智大学の学生が作ったドキュメンタリー映像「今日もあなたと一緒に。」を見た。営団地下鉄に勤務していた夫を亡くし、被害者の会代表世話人となった高橋シズヱさんの素顔を追った。笑顔を取り戻したような表情の中に、苦悩がにじむ。長い代表世話人の生活。「息苦しかった」▼裁判が終わっても遺族らの痛みは続く。二度と悲劇を繰り返さないためにも、風化させてはいけない事件である。

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