証人喚問と政局 農政運営への影響注視

 国会は、森友学園の国有地売却を巡る財務省の公文書改ざん問題で、きょう証人喚問を行う。真相の解明が待たれるが、「訴追の恐れ」を理由に沈黙を貫く可能性もある。この問題で内閣支持率は大幅に急落した。安倍晋三首相にとっても、秋の自民党総裁3選に向けて正念場となる。政局と農政運営への影響を一体で注視したい。

 証人喚問される佐川宣寿前国税庁長官は、交渉記録も森友学園との事前の価格交渉もないとした財務省理財局長時代の国会答弁や公文書改ざんへの関与が問われている。答弁や改ざんが理財局の判断なのか、政権ぐるみの隠蔽なのかが最大の焦点だ。安倍政権が真相究明に後ろ向きで疑念を晴らせなければ、支持率の一層の低落とともに政権運営が難しくなる。

 疑惑は「安倍1強」と呼ばれる強力な権力構造の中で起こったことに留意する必要がある。過度の忖度は、各省庁の幹部人事を官邸が握る人事制度に要因があると指摘する見方も強い。

 この間の農政改革は、「官邸農政」と形容されるように、同様の権力構図の中で行われてきた。その意味で政権の浮沈が懸かる政局の行方は、農政の在り方にも重大な影響を与える。

 自民党内に生まれた新しい動きに注目する。中山間地域を抱える地方選出の国会議員を主体に「地域の農林水産業振興促進議員連盟」が発足。会長は第3派閥の平成研究会を新たに率いる竹下亘総務会長、顧問に森山裕国会対策委員長らが名を連ねる。市場原理に偏重した農政の修正や、農協など地域経済に果たす協同組合の役割を評価する姿勢を示している。秋の総裁選を意識したものなのかは定かではないが、農政の根っこに一石を投じる動きは歓迎したい。

 安倍政権が森友問題の早期の幕引きに失敗すれば、党内の勢力地図が塗り替わり、「ポスト安倍」を巡る動きが一気に表に出てくる可能性もある。その際重要なのは、規制緩和によって「世界で最もビジネスしやすい国」(安倍首相)を目指すのか、必要な規制は残しながら地方とのバランスある国づくりを目指すのかの国家像である。大きな論点の中に農政がある。

 安倍農政は、食料の安定供給という大命題に向かって必要な施策や規制を講じるという伝統的なスタンスから、国家の関与を縮小し、民間の活力を引き出すため自由な経済環境を整える方向が強まっている。種子法廃止や卸売市場見直し論議に共通するが、農水省が法に基づく権限を自ら率先して手放すところに、これまでの農政とは異質な思考を感じさせる。その中で明らかに後退しつつあるのが、中山間地域の振興など地域政策の視点である。

 安倍政権は目下の最大の試練を経て、権力構図や政策決定プロセスが変質するのか。重大な局面である。まずは証人喚問の行方を見守りたい。

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