情報発信は誰のため? 住む人が地域つくる 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 宮崎県小林市で新庁舎の落成を記念した地方創生フォーラムが開かれました。初代地方創生相の石破茂議員による講演もあり、会場には市民1400人が詰め掛けました。完成した庁舎の東館は、全国的にも珍しい木造3階建てで、市産材の杉とヒノキが使われています。先ごろ新燃岳が噴火し、農地などへの降灰が心配されましたが、式典当日は穏やかな霧島連山が満開の桜と共に姿を現してくれました。

 ところで小林市といえば、地元の方言・西諸弁がフランス語に似ていることから、フランス人男性を起用したユニークな紹介動画がネット上で話題になりました。240万回を超える再生回数は、自治体のPRとしては異例のヒットですが、そもそものきっかけは、市民の声でした。

 市を全国へ向けて発信する前に肥後正弘市長が考えたのは、市民によるまちづくりワークショップです。2年以上にわたり、小林市の特徴は何か、課題は何か、またどんな地域にしていきたいかを話し合ってきたのです。一過性の注目を集める派手な動画ではなく、今住んでいる市民や出身者がふるさとに思いをはせ、愛着を持ってもらうための発信です。

 地方創生課の柚木脇大輔さんは、「市民がまちの主役だ」と話してくれました。そんな中から生まれた“市民あるある”が、「西諸弁はフランス語に似ている」というコンセプト。タイトルの「ンダモシタン小林」は「んまあどうしたの」と、驚いたときに出る方言です。

 全国的に話題となった動画ですが、最も喜んで閲覧したのは、地域の人たち。最近は地元でさえ使われなくなりつつあった西諸弁の再評価は、郷土の誇り、シビックプライドを取り戻す原動力になったのです。

 地方創生とは、農業農村の創生にほかなりません。地域をつくるのは自分たちなんだと、人任せにせず、市民が自発的に参画する仕組み作りが欠かせません。そうした活動の一つが、「熱中小学校」。大人の学びを提供する取り組みで、全国8カ所で行われています。小林市にも、人材育成で地方創生を進める拠点「宮崎こばやし熱中小学校」があります。

 25歳から80歳の生徒75人の中には、酪農家や野菜生産者もいて、放課後には「焼酎一貫校」なるお楽しみまであります。自ら学び、行動する人が増えれば地域は自立します。正しい話に人はうなずくしかありませんが、楽しい輪は人をやる気にさせる力を持っているのです。

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