深まる森友疑惑 揺らぐ民主政治の根幹

 森友学園問題で問われているのは、この国の統治機構の在り方だ。なぜ財務省は公文書改ざんに手を染めたのか。国会を欺いてまで隠そうとしたものは何だったのか。やっと実現した証人喚問は、真相解明に程遠く疑念を深めた。問題を財務省理財局内部の行為に矮小化させることは許されない。関係者全員を国会招致し疑惑を徹底究明しなければ、議会制民主主義は守れない。

 この問題で解明すべき論点は大きく二つ。一つは、国民の財産である国有地の売却を巡る一連の手続きが適正に行われたのかである。「特例」とされる約8億円の値引きが妥当だったのか。そこに政治家や首相夫妻の関与はなかったのか。

 二つ目は、国有地売却を巡り財務省が作成した決裁文書が、問題発覚後になぜ改ざんされたかである。政府の公文書が改ざんされること自体、国家的犯罪行為である。しかもこの1年、改ざん文書を基に国会審議をしていたわけで、これは国権の最高機関国会を愚弄するもので、国民への背信行為だ。

 公文書管理法は、意思決定の過程が検証できるよう文書を作成するよう定めている。全ての国会審議や政策決定はその前提の上に成り立つ。公文書の改ざんは、民主政治の根幹を否定することにほかならない。なぜ政治家や首相夫人に関わる記述を削除する必要があったのか。財務省の一部官僚の判断で成し得ることなのか。

 当時の財務省理財局長・佐川宣寿前国税庁長官は証人喚問で、こうした数々の疑問に対し刑事訴追の恐れを理由に、明確な答弁を避けた。いつ、誰が、何のために改ざんを行ったのかという核心部分は答弁を拒否する一方、首相夫妻、官邸や政治家からの指示や関与、影響はなかったと明言。あくまでも理財局内部の対応だと説明した。

 一部局の判断で、決裁文書を14件、約300カ所も削除・改ざんできるのか。政府はこの間、佐川氏の国会答弁と整合性を持たせるために局内で改ざんした疑いがあるという筋立てで、責任を同氏に押し付ける構図を作り出しているように映るが、この日の証言もそれに沿ったものだった。

 佐川氏が証人喚問で、この問題の核心部分の説明を拒否した以上、関係者全員を国会招致するとともに、国政調査権を行使して行政府の不正をただし、全容を解明するしかない。むろん司法の立場からも大阪地検の迅速な捜査を求める。

 問われているのは、行政の不正を招く統治機構のひずみであり、三権分立や「政と官」の在り方である。「安倍1強」下での官邸主導政治が、不正の温床になっていないか、問題の本質はそこだ。行政から政権側への忖度やずさんな公文書管理が日常化し、政策の意思決定がゆがめられているとしたら、もはや法治国家ではない。疑惑解明はこれからだ。

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