新協同組合人へ 農と地域に誇り持とう

 JAの新人職員の皆さんへ。きょうから協同組合人の仲間である。「農と地域」を現場に働くことに誇りと志を持ち、協同の実践者となってほしい。

 まず、協同組合を巡って今、向きの違う二つの風が吹いていることを意識してほしい。

 国内では「官から民へ」の流れが加速し、特に農業でその傾向が強まっている。政府の関与をなるべく減らし、代わって民間企業の活力を呼び込もうという考え方だ。その中で株式会社が素晴らしくて、農協は時代遅れ、非効率といった見方が広まっている。でも、それは違う。

 農協もその一つである協同組合は、「助け合い」の共助を根幹に据えている。その始まりは150年ほど前だ。ドイツのライファイゼンという人が、経済的に力の弱い農民のために資金を提供する組合をつくった。当時、農民は銀行からまともに相手にされず、高利貸からの借金に頼っていた。ばか高い金利の返済にあえぎ、中には借金のかたに農地を手放す人もいた。今みたいに、過払い金を取り戻してくれる法律はなかった。

 このライファイゼンが「協同組合の父」といわれる。日本で言えば二宮尊徳みたいによく知られた人だ。3月30日に生誕200年を迎え、母国ドイツはもとより世界中でさまざまなイベントが企画されている。この人の思想を凝縮したのが「一人は万人のために、万人は一人のために」だ。スポーツのスローガンではない。協同組合の本質を表す言葉だと覚えておこう。

 実は、協同組合は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に一昨年登録された。遺産というと過去の遺物のように思うかもしれないが、本来の趣旨は後世にしっかりと引き継いでいくという意味だ。それが、次の世代を担う君たちの使命だと肝に銘じよう。

 ユネスコはこんな風に協同組合を見ている。地域の活性化や雇用の創出、高齢者支援、再生可能エネルギーなど、「さまざまな社会的な問題への創意工夫あふれる解決策を編み出している」。日本国内の評価もこう変えていきたいものだ。

 協同組合の組合員は日本だけで6500万人、世界には10億人もいる。国内の事業高は16兆円に上り、預貯金の4分の1が協同組合に預けられている。決して小さな存在ではないし、古くさい組織でもない。自信を持ってほしい。

 今、JAグループは自己改革運動に取り組んでいる。掲げる目標は「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」の三つだ。いずれも「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」を標榜するJAにふさわしい目標だ。

 農家と産地を元気にする事業は、最終的には国民への安全・安心な食料の供給に行き着く。「食料安全保障」という言葉があるが、農家の応援が国民・消費者の暮らしに寄与する。そこにやりがいを感じてほしい。

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