[達人列伝 44] 木頭ゆず 徳島県那賀町・岡田宏さん 林業での知識を応用 毎年50本改植 GI銘柄維持

剪定作業をする岡田さん。労力の掛からない方法で品質を高める(徳島県那賀町で)

 四国で初めて地理的表示(GI)保護制度で認証を受けた徳島県那賀町の「木頭ゆず」。岡田宏さん(59)の出荷量はJAアグリあなん木頭果樹研究会の青果出荷の2割を占める。毎年改植を進める他、樹高を高く保ち1樹当たりの収量を増やすなど「岡田さんにしかできない」(JA指導員)工夫を凝らす。出荷量を確保することで、ブランド力を維持し、産地を後世につなぐ。

 岡田さんの園地には3メートルを超えるユズの木が並ぶ。同地域の他園地の樹高が約2メートル。あえて細長い樹形で上に伸びるように心掛けている。

 剪定(せんてい)であまり手を入れず、徒長枝を切って、木の中の枯れ枝を落とすだけ。枝を多く残し、着果量を増やすと収量が約4割増えるからだ。玉を肥大させると傷果になるリスクが上がるため摘果もあまりしない。京都の市場が求める13玉の割合が高くなるなど、有利販売にもつながる。

 香り高さと外観の良さが特徴。岡田さんは「田舎の懐かしい香りにほっとするんだろう」と、「木頭ゆず」にほれ込む。大学を卒業後、地元の林業に就いたが、材木の価格が落ち込み始め生計が立てられないと就農を決意。林業で使っていた重機を乗りこなし、山を切り開いて栽培面積を2ヘクタールに増やした。

 品質の高さと省力化を両立する秘訣(ひけつ)は、毎年40~50本の改植だ。園地の9割を改植し、樹齢の平均は15年ほど。「若い木の方が、病害の発生が少なく、蛍光色の黄色でつるっとした木頭ならではのユズに仕上がる」と四半世紀の経験に頼る。

 改植で収量も安定する。ヒントは木材の収量を毎年安定させるために、伐採する樹齢を均等に植える林業の「法正林」という考え方から得た。特にユズは隔年結果が激しく、収量の確保が経営の鍵を握る。合理的な栽培管理が、GIに選ばれた産地のブランドを支える。JAの担当者は「足りない等階級や量目があれば、まず相談する」と産地の大黒柱に信頼を寄せる。

 「先輩が築いてきたブランドは輸出で世界に羽ばたいているが、作り手がいなくなっては意味がない」と後継者不足に表情を曇らせる。だからこそ、品質と収量を両立できる自身の経営方法に可能性を感じている。「ブランドを維持してもうかる経営モデルを提示すれば、いつかは若い担い手が戻ってくる」と強調する。(丸草慶人)
 

経営メモ


 「木頭ゆず」を2ヘクタールで栽培し、年間約30トンを出荷する。労働力は自身と妻、母の3人。林業も行う。
 

私のこだわり


 「自身が作業しやすい園地環境をつくって、効率を良くする。品質と収穫量を維持する秘訣だ」
 

おすすめ記事

達人列伝の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは