[ゼスプリキウイ 国内生産を急拡大 2]「話が違う」 NZ法人誘致で波紋 事前説明は放棄地を活用、農家に生産委託 実際は優良農地ばかり 直営園だけで栽培 宮崎県都農町

直営園地を見回るマイキウイのベネス・ヤン社長(宮崎県都農町で)

 ニュージーランド(NZ)の法人「ジェイス」がキウイフルーツ生産で進出した宮崎県都農町で、地元住民から期待だけでなく不安の声も出始めた。町が耕作放棄地解消や農家所得向上、雇用創出などの効果を強調した一方、その説明と異なる状況が生じているためだ。国内で「ゼスプリキウイ」の園地が広がる中、参入業者と地域農業の調和を図る難しさも浮かんできた。(松本大輔)
 

賃料手厚く“適地”進出


 誘致した法人が耕作放棄地を使い雇用を生む。地元農家が委託生産し、所得を増やす。法人からのリース料で町の独自財源を生む──。町はこんな青写真を描いていた。

 ジェイスはゼスプリの株主で、NZで約600ヘクタールを手掛けキウイ3万トン近くを出荷する。収穫期が異なる日本での生産を模索し国内5カ所で気候などを調査、“適地”に進出を打診した。その誘いに乗ったのが同町だ。

 「地元の担い手を育てるべきだ」との慎重論も出たが、河野正和町長は過疎化や農業衰退を打破する策として、2014年に同社の参入を決定。同社は日本法人「マイキウイ」を設け、現在約15ヘクタールで多収の黄色系「サンゴールド(G3)」を栽培する。農地は農地中間管理機構を通じて地権者から集めて貸し、果樹棚などは町が出資する第三セクターが整備して貸す仕組みだ。

 マイキウイは地権者に農地賃料を払う他、第三セクターに園地の賃料(年間10アール当たり約30万円)を払う。第三セクターはこれを原資に地権者に事業協力金(同3万円)を払い、農地を集めやすくした。
 

不利地に移動も


 だが現在、「ふたを開けたら町の説明と違う」と憤る地元住民もいる。

 町は当初、「G3」で10アール4トンの収量を見込み、マイキウイ直営園地と同じ面積で地元農家にも生産を委託するとしていた。だが、直営園地が広がる一方、委託は実現せず「立ち消え状態」(県関係者)にある。「G3」の栽培条件「1園地2ヘクタール以上」を個別の農家が満たすのは難しいためだ。

 「G3」の権利を持ち生産を委託する立場にあるゼスプリの日本法人、ゼスプリインターナショナルジャパンの安斉一朗社長は「現段階では、都農町で地元農家に生産を委託する話はない」と断言。「町は、(既に権利を持つ)マイキウイから農家に生産を委託してもらう考えなのかもしれない」としつつ、それは認めないとの考えを示唆する。

 町産業振興課は「地元農家も2ヘクタール確保すれば作れる」と説明。「現状が当初の説明と食い違うとは思わない」と話す。

 優良農地がマイキウイに集中する点にも、地元住民は疑問符を付ける。町長は町議会で「耕作放棄地も、これ(誘致)によって解消したい」と明言。地元のJA尾鈴幹部らも「放棄地を使うとした資料に基づいて説明があった」と振り返る。だが、実際に使っているのはほとんどが「特等地」(JA)だ。マイキウイは優良農地に固執した。

 その土地を借りて飼料作物を作っていた農家は、別の農地への移動を強いられた。町は「代替地など好待遇を用意し、喜んでもらっている」と胸を張るが、口蹄(こうてい)疫で殺処分した家畜の埋却地をあてがった例も。埋却地に移ったある農家は「生産条件が悪く、牧草の収量は半減した」と憤る。「今後もキウイ園地が広がれば飼料作物が減り、畜産に影響する」との声も上がる。

 同園では20人程度の日本人を雇用する。当初、町は集荷場を設けて多くの雇用を生むとしたが、実際には愛媛県の業者に選果を委託。「今後、建設に向けた協議をする」と釈明するが、具体的な見通しは示していない。
 

情報公開も“黒塗り”で


 マイキウイ幹部は「畜産農家から苦情がある」と認めつつも、「賃料や農地中間管理機構の協力金とは別に、10アール3万円の協力金が毎年出るので、地権者は好意的だ。地元に利益を還元している」と強調する。一方、ある地権者は「高額な協力金があるので貸したが、複雑な気持ちもある」と明かす。

 町は情報公開に消極的だ。関連事業に億単位の資金を投じたが、ジェイスとの契約内容などは開示を拒む。キウイについて議論した町議会は、町議の動議を経て秘密会とし、議事録は黒塗りにしてホームページに公開している。誘致を主導した河野町長は「何も話せない」と繰り返す。

 地元の農業関係者は「税金を使っているのに透明性がない」と口をそろえる。

 河野町長は昨年10月にマイキウイ園地で開いた「収穫お披露目式」後の取材に対して、地元の期待は大きいと強調した上で「心配や不安があるのは当たり前。解消しないといけない」とも語った。ある農家は「情報をきちんと開示してほしい」と要望する。

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