家族農家をべた褒め 米農務省の報告書 特別編集委員 山田優

 米国の農業は家族農家が支えている。米農務省は先月にまとめた、過去30年間の農業経営の変化を分析した報告書の中で「家族」の大切さをうたい上げた。

 報告書そのものは、統計などを基に、「大規模農業経営がますます農業生産の多くを担うようになってきた」と結論付けている。元々筋肉質な印象の米国農業に、さらに磨きが掛かったというわけか。

 「面白くなさそう」というのが第一印象だが、「冒頭」の章を斜め読みして気が変わった。本文は次の文章で始まる。

 「米国のこれまでの歴史と同じように、米国農業は(現在も)家族が所有し運営する経営体が支配的だ」

 米国農業というと、巨大な農場を企業が所有していると考えるかもしれない。だが、実際には全米206万の農業経営体数の中で、99%が家族農家だ。農業生産額でも89%がやはり家族農家が稼ぎ出す。

 家族農家と言っても、法人化していたり、昔ながらの家業であったりと、さまざまな形態がある。この報告書が採用した定義は次のようなものだ。

 「経営主、血縁者、養子、配偶者が、経営資源の半分を握っていること」。家族が日々の農業経営を把握し、決断することを条件としている。血縁で強く結ばれる家族を重要視した定義だ。

 別表を除けば51ページの報告書の中で「家族農家」という単語が24カ所に登場する。結論も明快。作業の季節性、圃場(ほじょう)の特徴に合わせた知識、突然の気候災害への対応を考慮すれば、「米国農業が家族によって営まれることが有利であり続ける」と結ぶ。合理性を追求する米国でも、家族農業こそが望ましい姿だと報告書は言い切っているのだ。

 さて、日本。361ページある最新の「平成28年度食料・農業・農村白書」を取り出して眺めてみると、「家族農家」という言葉は出てこない。「家族」は18カ所に出てくるが、「家族経営を法人化して社員確保が容易になった事例」の紹介など、家族に重きを置いていない表現が目立つ。

 一方で「農地を所有できる法人に農業関係者以外の構成員を入りやすくする」「企業の農地取得を可能にする戦略特区の実現」などと白書は強調。「家族」の色彩をできるだけ取り除くことが農業の進歩と日本政府は考えているようだ。

 国連は来年から2028年までを「家族農業の10年」と決めた。持続可能な地球環境や社会にとって、家族と農業の結び付きが大切。家族農業が基礎だというグローバルスタンダードから、日本は明らかに外れているように見える。

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