悪質な公文書管理 1強が生む行政の堕落

 情報公開と公文書管理は、民主主義の基盤である。今それが危うい。政府による悪質な公文書管理が後を絶たない。隠蔽(いんぺい)体質も見え隠れする。国民の知る権利をないがしろにし、政策の検証にふたをすることは、行政の自殺行為である。

 もはや行政の緩みといったレベルの問題ではない。国会などで追及を受け、「ない」「廃棄した」「存在が確認できない」と閣僚らが公言してきた文書や資料が次々と出てくる。

 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報、国有地の取引を巡る森友学園との交渉記録、加計学園の獣医学部新設に際し内閣府から「総理のご意向」とされた文書、裁量労働制正当化の元になった不正確な労働時間調査の原票などの存在が明るみになった。こうした事案は、この2年間だけで防衛、財務、文部科学、厚生労働の各省に及ぶ。

 極め付きは財務省による国有地売却に関する決裁文書の改ざんである。さらに、陸上自衛隊イラク派遣時の日報が、「発見」から1年以上放置され、大臣らに報告されていなかったことも発覚した。組織ぐるみの隠蔽の疑いが強く、文民統制を揺るがす問題だ。

 これらの文書類は、役所の自浄作用によって発見・公開されたとは言い難い。各省とも国会議員や市民らの請求に対し消極的だった。提出された文書にしても肝心な箇所は黒塗りされ、特定秘密保護法ではねつけられるケースも少なくない。

 ずさんな文書管理の背景には、官邸主導による強引な政策決定があるのではないか。結論ありきで、決定過程を軽視する土壌が霞が関にはびこっていないか。関係省庁や利害関係者、議会との調整を軽んじ、規制改革推進会議主導で決めるやり方だ。一連の農政改革はその典型だった。農水省はまともに審議会すら開かなかった。政策内容以前の問題であり、民主的手続きに反する行政運営だろう。

 政府は一連の問題を受け、公文書管理のガイドライン(指針)を改正し、「保存期間1年未満」の文書の範囲を厳格化するとともに、記録の正確性を確保するよう促す。ただ、外部との協議記録の作成に相手方の確認を求めるなど、政府に「不都合な真実」が隠される懸念も残る。この見直しは決裁文書改ざんが露呈する前の決定であり、より厳格で実効性のある公文書管理法の改正を急ぐべきだ。

 公文書管理は行政の信頼性そのものだ。それが、これほど広範囲に隠蔽や不適切な管理が状態化しているのは、官邸主導の「安倍1強」政治と無縁ではあるまい。もし政府が「由(よ)らしむべし、知らしむべからず」と考えているなら、それは法治国家でなく前近代的な人治国家である。うみを出し切り、再発防止に全力を挙げなければ、行政の信頼回復は望めない。政府の責任は重い。

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは