特に信心深いわけではないが

 特に信心深いわけではないが、きょうぐらいは仏の前で手を合わせる▼仏生会(ぶっしょうえ)、お釈迦(しゃか)様が誕生した日である。各地の寺は、境内に色とりどりの花で飾った「花御堂(はなみどう)」をしつらえて祝う。花まつりとも言う。仏教では、悟りを開いた成道会(じょうどうえ)(12月8日)、亡くなった涅槃会(ねはんえ)(2月15日)と並び三大法会(ほうえ)の一つ。キリスト教のクリスマスに当たる▼誕生仏にかけるのが甘茶。ユキノシタ科の落葉性低木のアマチャの葉を発酵させ、甘さは砂糖をしのぐ。江戸時代までは“五色水”と呼ばれる香水を使っていたが、次第に甘茶が主流になったとされる。東京・浅草寺では参拝者にも振る舞われ、無病息災を祈る。きょうが命日の高浜虚子に秀句がある。〈和尚云ふ甘茶貰(もら)ひにまた来たか〉。甘い食べ物が少なかった頃、わんぱく少年が何度も甘茶をもらいに寺に来る情景がまざまざと浮かび上がる。花まつりは、子どもにも格別の日だったに違いない▼現世はカネや権力に振り回され、ついカッとなって怒鳴り散らしたくもなる。さすがに釈迦は違った。「怒に怒をもって報いるは、げに愚かものの仕業なり」と諭した。人間性を描いた武者小路実篤の『釈迦』(岩波文庫)にある▼全ての執着から解き放された無常の境地。凡人には及ばない悟りである。

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