米中貿易摩擦 ヒートアップ 高関税で農業標的中国が“揺さぶり” 米国の業界団体 政権への不満募る

 米国と中国の貿易戦争が現実味を帯びる中、米国の農業団体がトランプ政権への不満を強めている。農産物に限ると、米中貿易は米国側の大幅な黒字。報復合戦で米国産の関税が引き上げられれば、巨大な中国市場を他の輸出国に奪われる恐れが出てきたからだ。米国農業団体の動向と、米中貿易の現状を探った。

 農村はトランプ大統領の強固な支持基盤。これまで良好な関係を築いてきたが、農産物輸出に具体的な打撃が及べば政治的な蜜月にひびが入るのは確実とみられる。中国は2日、米国産豚肉や青果物、ワインなどに最大25%の関税を上乗せした。4日には、大豆や牛肉などで同様に関税を上げる方針を表明。いずれも米国の制裁措置に対する報復措置の一環だ。中国政府は、政治的影響力の強い農産物を標的にすることで米国側の揺さぶりを図ったとみられる。

 パーデュー米農務長官は同日、「農家が貿易摩擦の被害に遭わないようにする」とのトランプ大統領の発言に言及。農家への支援策をまとめる方針を示唆した。
 

大豆


 “米中貿易戦争”で最も影響が大きいとみられるのが大豆だ。農産物の他、「航空関連」や「輸送機器」を含んだ米国の対中輸出総額は1156億ドル(2016年)。うち「穀類」が13%を占める。穀類の大半が大豆だ。農産物の中で大豆の輸出額は突出している。

 アメリカ大豆協会は4日、「ホワイトハウスはエスカレートする中国との貿易戦争を収めよ」と強い口調の声明を発表した。大豆輸出の3分の2が中国に向かうだけに、業界に懸念が広がる。

 米パデュー大学の研究チームは3月末、中国が仮に30%関税を上げると「中国向け輸出が7割減る」との試算をまとめた。研究者の一人、ワリー・タイナー教授は、今回中国側が表明した25%引き上げの場合も「ほぼ同様の大幅な減少が予測される」としている。

 中国の報復リストが発表されると大豆の先物価格が下落した。大豆作付けを減らしトウモロコシや米など他作物に切り替える農家も増えそうだ。幅広い農産物にまで影響が広がる可能性がある。
 

畜産


 畜産業界からも強い不満が出ている。「終わりのない報復措置は両国にとって良い道ではない」。全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は4日の声明でこう忠告した。

 中国は03年、米国の牛海綿状脳症(BSE)発生を受け、米国産牛肉の輸入を禁止。現在はブラジルやウルグアイ、オーストラリア産が中心だ。

 その中国が17年6月、14年ぶりに米国産の輸入を再開。トランプ政権の要請に応じて貿易不均衡を是正する「100日計画」を実行した結果で、米国の牛肉業界は巨大市場への進出へ踏み出したばかりだった。

 それだけに関税が引き上げられることになれば、中国進出に水を差しかねない。トランプ大統領は6月にも制裁関税を発動するかを判断するとされ、同協会は「5月末までにこの問題を解決すべきだ」と要求する。

 既に高関税措置を受けた豚肉業界は、措置撤廃を求める。全米豚肉生産者協議会(NPPC)は2日の声明で、「養豚農家の所得確保には輸出が極めて重要」「11万の労働者が恩恵を受けている」と、農村経済への打撃の強さを強調した。
 

青果


 米ワシントン州は全米最大のリンゴ、サクランボの産地。港が近い立地を生かし、中国向け輸出を増やしてきた。「われわれの希望はサクランボ出荷が本格化する6月を前に、米中が折り合うことだ」と主要園芸団体の幹部が地元メディアに語っている。この幹部によると、同州は中国向けに1億2700万ドルのサクランボを輸出している。(特別編集委員・山田優、岡信吾) 

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