旅の季節である

 旅の季節である。楽しみの一つに駅弁がある▼動き始めた列車に揺られながら、ひもを解き、掛け紙とふたを取る時のときめきがたまらない。思わぬ発見やこだわりとの出合いが、コンビニ弁当とは違う。どれから箸をつけたらいいか迷いながらのひと口、車窓からの眺めが“調味料”となる。ちょっとしたぜいたくである▼2500種もあるというから、1日1個食べても7年近くはかかる。バラエティーに富んだおかずが入った幕の内弁当から、地域の特産をふんだんに使ったもの、とてもシンプルなもの、芸術品のように豪勢なものまで。選ぶのに一苦労する。値段と好みと発車時間を気にしながら、焦る気持ちで探すのも旅の妙味かもしれない。「空弁」も加わり、米の消費が増えれば、なおいい▼映画評論家瓜生忠夫さんの『駅弁物語』(家の光協会)によると、駅弁発祥は宇都宮駅が定説。おにぎり2個とたくあんという簡素なもの。1世紀余りで立派な日本の食文化となった。弁当の文字は、中国南宋(なんそう)時代の俗語で、「便利なこと」を意味する「便當(べんとう)」が語源とされる。信長が活躍した安土桃山時代ごろから始まり、江戸時代には広く庶民が親しむようになったとも▼きょうは25回目の駅弁の日。東京駅には全国の味自慢が並ぶ。旅心が刺激される。

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