農業白書の課題 自給率向上 道筋を示せ

 農水省は今週、食料・農業・農村審議会企画部会を開き、食料・農業・農村白書案を示す。問題は先進国最低の食料自給率をはじめ国内農業への危機感が薄いことだ。国内生産を大前提に、食料安全保障の確立と自給率引き上げの道筋をもっと前面に出すべきだ。

 同省は3月中旬、企画部会に農業白書骨子案を出した。この時の各委員の指摘や議論を踏まえ、修正を加えた上で週内に同部会を開き白書案を示す。先の骨子案では、農業分野のさまざまな新しい動きを取り上げた。複数の出席委員から自給率の記述のありようについて課題提起があった。農政上の重要な柱の一つである自給率引き上げへの強い決意が感じられないのは問題だ。同省は指摘を受け止め、自給率向上のより具体的な書き込みを行うべきだろう。

 特集の他、4章で構成されている。第1章のテーマが「食料の安定供給の確保」で、自給率などを取り上げている。先の企画部会でJA全中の中家徹会長は、カロリーベースの45%目標の実現への道筋を明記するように強く要望。東京大学大学院の中嶋康博教授は「なぜ38%にとどまっているのかが記述されるのかどうか」と指摘。45%目標実現に向けた課題を分析し、白書で明確化するよう求めた。中家会長は5日の理事会後会見でも「自給率の実態とこれからどうするのかの書きぶりが弱い。白書で国民に広く知らせる必要がある」との考えを示した。

 さらに、総合的な食料安全保障の確立の記述を巡り、「輸入農産物の安定供給を確保するための取り組みが重要」との表現が、輸入で賄って食料安保を確立するという、誤ったイメージをつくりかねないとの指摘もある。大前提は、国内生産を増大し自給率引き上げと連動しながら、食料安保を確立する道筋であることを明確に示すべきだ。

 先の骨子案がほとんど楽観論に終始しているのは、安倍晋三首相が1月下旬の施政方針演説で触れた「農林水産新時代」の記述と同じ流れだ。一定の“忖度(そんたく)”が働いていないか。首相は、農林水産物の輸出拡大や生産農業所得増、若手新規就農者の増加などは政権が旗を振る「攻めの農政」の帰結だとして、今後とも農政改革を加速すると述べた。だが、生産現場では矢継ぎ早の貿易自由化、農協改革など官邸主導の「攻めの農政」にこそ違和感と先行き不安が募っている。

 「この道」しかないのか。新たな発想で「別の道」も検討をすべきだろう。問われるのは、弱体化に歯止めがかからない生産基盤への支援と、それを通じた農業者所得向上、農業生産拡大による自給率の底上げ。第2章「強い農業の創造」のタイトル通り、「強い」ばかりを前面に出しても現場実態に即した課題解決にはならない。むしろ国連でも進める「持続可能」な地域農業こそが農政推進上の大きな方向と認識すべきだ。

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