春の食品値上げ 特売や輸入代替を警戒

 この春、食品の値上げが相次いでいる。原材料価格の高値が要因との見方もあるが、それ以上に大きいのは、人手不足による人件費や物流費の上昇だ。スーパーの特売や外食の輸入切り替えなど、今後の流通・販売動向を注視する必要がある。

 身近な食品の値上がりは、消費者の大きな関心事だ。牛丼チェーン「松屋」は3日から主力の牛丼メニューを1割値上げした。大手納豆メーカーは4月以降、相次ぎ商品の出荷価格を1、2割引き上げる。米菓やヨーグルトで内容量を減らした実質的な値上げも目立つ。

 米、大豆、生乳といった原材料の価格動向はまちまちだが、食品関連企業の人件費は上昇が鮮明だ。民間調査機関の調べでは、2月のアルバイト・パート募集時平均時給は三大都市圏で1021円と5年前より7%上げた。特に食品関連業種は過去最高水準にある。物流費もトラックドライバーの不足を受け、近年は上昇基調だ。

 景気が上向いてきたとされるが、消費者の財布のひもは締まったままだ。将来的な収入の増加を見通せず、出費を抑えたい傾向は長期化しそうだ。

 スーパーや外食は集客維持へ対応策を模索する。一つが特売の目玉商材の設定だ。幅広い食品が値上がりする中で、購買頻度の高い一部商品を値下げすることで客寄せ効果を得ようとする。典型的なのが牛乳だ。総務省の調査によると、東京地区の3月の牛乳1リットル紙パック価格は平均208円で、10年ぶりの安値を記録した。原料の生乳価格は変わっておらず、現状はスーパーなどが利益を削っている形だ。安い価格がこのまま定着すれば、将来的に原材料の取引価格にも影響を及ぼしかねない。

 農畜産物や食品を安価な輸入品に切り替える動きも目立つ。スーパーの西友は3月末から、オーストラリア産の短粒種米「うららか」を売り始めた。価格は1キロ当たり319円で、国産米の平均小売価格(約400円)より2割安い。食味は見劣りするが、低価格を求める消費者の支持をつかむ恐れがある。国産品のシェア低迷に拍車を掛けないか、注視が必要だ。

 安易に食品の調達先を海外に委ねることは、食料安全保障の面で問題がある。国内の農業生産基盤の弱体化を食い止めるために、国を挙げた対応が急務と言える。経済のグローバル化、人口減少や高齢化社会の進展に伴い、食品関連業界は働き手不足と長期的に向き合うことになる。従来の大量生産・広域流通、低価格に依存した取引は転換期に差し掛かった。

 今こそ、地域の経済循環を育む時だ。生産と消費の距離を縮める経済行動は流通の効率性を生み、地方を活性化する。各地の特産品を堀り起こし、地域性を押し出した商品作りをすれば、値上げにも消費者からの納得感を得やすい。農家所得の確保へ、産地と需要者とが接近するうねりが起こってほしい。

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