若手の発想でヒット 特産ブドウで6次化商品 80万袋販売 想定の10倍超 JA山形おきたま
2018年04月11日

木村組合長(右から3人目)と商品開発について話し合う若手職員ら(山形県川西町で)
山形県のJA山形おきたまは、6次産業化商品を開発する若手チームを編成し、管内特産のブドウを使ったヒット商品を生み出した。大手メーカーなどと共同でグミを開発。2016年末の発売から現在までに、想定の10倍を超す80万袋を売り上げた。若者の柔軟な発想と外部の専門家との連携を通じ、特産品の特徴である甘酸っぱさと香りを最大限生かしてヒットに結び付けた。
JAは管内農産物を全国にPRしようと、16年から6次化商品の開発に着手。木村敏和組合長の直轄で専門チームを結成した。若者の発想を生かすため、各部署から選抜した20、30代の若手職員10人で検討を始め、さらに外部アドバイザーとして地元食品会社の元社長を招いた。
チームは管内特産の「デラウェア」に着目。「グミにしてはどうか」という意見が出た。
木村組合長の「内野安打ではなく場外ホームランを狙うつもりで」「JAの枠組みにとらわれず一流と組む」の指示を踏まえ、地元スーパーを通じて大手菓子メーカーのUHA味覚糖と連携。「デラウェア」を強く感じてもらえるよう、袋を開けた時に広がる香りと甘酸っぱい味わいの商品が完成した。
商品のインパクトを出すため、パッケージも重視。地元の東北芸術工科大学デザイン工学部の中山ダイスケ教授(現学長)に依頼し、白地に紫色の果実の絵が浮かぶデザインが出来上がった。
当初は地元で6万袋を目標に販売。予想以上の反響を呼び、全国のコンビニエンスストアでも販売して80万袋が売れた。
管内の高畠町のブドウ農家、近野裕一さん(58)は「日本一のデラウェアの産地だが、主に関西方面では知名度が低かった。イメージアップにつながり、生食の消費拡大にもつながるのでは」と期待を寄せる。
チームは定期的に集まり、新たな商品開発の検討を続けている。17年末には「デラウェア」のノンアルコールワインを発売し、売れ行きは好調だ。木村組合長は「6次産業化の土台を築くことができた。今後も新商品を生み出したい」と意欲を見せる。
JAは管内農産物を全国にPRしようと、16年から6次化商品の開発に着手。木村敏和組合長の直轄で専門チームを結成した。若者の発想を生かすため、各部署から選抜した20、30代の若手職員10人で検討を始め、さらに外部アドバイザーとして地元食品会社の元社長を招いた。
チームは管内特産の「デラウェア」に着目。「グミにしてはどうか」という意見が出た。
木村組合長の「内野安打ではなく場外ホームランを狙うつもりで」「JAの枠組みにとらわれず一流と組む」の指示を踏まえ、地元スーパーを通じて大手菓子メーカーのUHA味覚糖と連携。「デラウェア」を強く感じてもらえるよう、袋を開けた時に広がる香りと甘酸っぱい味わいの商品が完成した。
商品のインパクトを出すため、パッケージも重視。地元の東北芸術工科大学デザイン工学部の中山ダイスケ教授(現学長)に依頼し、白地に紫色の果実の絵が浮かぶデザインが出来上がった。
当初は地元で6万袋を目標に販売。予想以上の反響を呼び、全国のコンビニエンスストアでも販売して80万袋が売れた。
管内の高畠町のブドウ農家、近野裕一さん(58)は「日本一のデラウェアの産地だが、主に関西方面では知名度が低かった。イメージアップにつながり、生食の消費拡大にもつながるのでは」と期待を寄せる。
チームは定期的に集まり、新たな商品開発の検討を続けている。17年末には「デラウェア」のノンアルコールワインを発売し、売れ行きは好調だ。木村組合長は「6次産業化の土台を築くことができた。今後も新商品を生み出したい」と意欲を見せる。
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外国人農地取得2件 法律違反確認されず 農水省が初の調査
外資や外国人による農地取得が、2017年は2件で7・2ヘクタールに上ったことが、農水省の初調査で分かった。外資が出資した農地所有適格法人(農業生産法人)が7・1ヘクタールを、外国人個人が相続に伴い10アールを取得した。農地法の規定に違反して、農地が取得された例は確認されなかった。
同省は、外資による森林買収の拡大を受け、森林では毎年、外資の取得面積を調べてきたが、「農地の外資買収も進みかねない」との懸念の声を受けて調査に乗り出した。
具体的には①外国に本店がある法人(外資)②居住地が海外の外国人③農地が所有できる農地所有適格法人のうち、外資や外国人が議決権を持つなどした法人──を対象に、17年の1年間の農地の取得状況を調べた。
外資を含め、一般企業による農地取得は農地法上、認められていない。調査では、農地法に基づく許可書などを基に取得状況を調べたが、外資による農地の違法取得はなかった。
一方、北海道函館市では、フランスに本店があるワイナリーが49%を出資した農地所有適格法人が7・1ヘクタールを取得。醸造用ブドウの栽培に向け、地元農家と法人を立ち上げ、農地を取得した。農地所有適格法人は、農業者の出資割合が過半などを要件に、農地取得が認められている。
愛知県稲沢市では、中国人が10アールを取得。もともと日本人だったが中国人との結婚を機に中国籍にし、その後、親からの相続が発生し所有権が渡った。農地法では個人で農地を取得する場合、原則で年間150日以上農作業に従事するなどの要件がある。海外に住む外国人がこうした要件を満たすのは難しく、事実上、取得できない。一方、相続で所有権が渡った場合は、農地法の要件は対象外となる。
同省は18年以降も同様の調査を続ける方針だ。
2018年04月23日
干しシイ 燃費半減、うま味増 低温乾燥新手法 鳥取の組合 特許出願
鳥取市の日本きのこセンターと菌興椎茸(しいたけ)協同組合は19日、低温乾燥による干しシイタケの新しい製造方法を開発し、特許を出願したと発表した。作業の省力化に加え、乾燥に必要な燃料費を最大で7割削減する。調理面では、だしが15分程度で取れるため、使いやすさも向上する。生産コスト低減と需要拡大を実現し、産地振興につなげる。林野庁によると干しシイタケの生産量は、1984年の1万6000トンから2016年には2700トン程度まで減少。共働き世帯の増加による食の簡便化や、輸入品の増加などが背景にある。
5月ごろにほだ木で自然乾燥することで風味が特段に優れる「木干し状態のシイタケ」の風味を目指して開発した。
従来は一つ一つ柄を下に向けて重ならないよう並べ、45度から55度まで徐々に温度を上げて、25時間ほどで乾燥させる。新しい製造方法は、シイタケを山なりに重ね、指定した空気循環操作で22~28度で15~25時間乾燥後に、55度まで上げてさらに10時間乾燥させて仕上げる。乾燥時間は延びるが、重ならないように並べる作業時間が短縮されるほか、低温乾燥により灯油の使用量は従来より5~7割減らせた。
調理面では、沸騰寸前の湯に干しシイタケを入れて弱火で10~15分煮ることでだしが取れる。従来品では水戻しに5時間以上かかる。苦味や雑味が少なく、うま味成分のグアニル酸は従来の1・5倍になることも確認した。
同組合の下田秀一組合長は「今後を占う革新的技術だ。業界の魅力を高め、生産者の意欲向上や新規就農者の増加に加え、消費量も増やしていきたい」と意気込む。
2018年04月20日

金本兼次郎さん(ウナギ料理人) 「焼き方」は一生の修業 ご飯の出来おいしさ左右
ウナギの世界では、さばくのに3年、串打ちに3年、焼くのは一生といわれています。焼くのは一生かけてやり続ける修業だという意味だと思います。私は今日も焼きましたが、本当に納得できたのは最後のウナギくらいですかねえ。
ウナギというのは同じように見えて、一匹一匹皆違います。脂がのってるのもあれば、のってないのもある。その都度その都度、焼き方を考えないといけない。一回一回が勝負です。
今年の1月1日で90歳になりました。本当は前の年の12月27日か28日に生まれたようです。たぶん親は、私が兵役に行くのを延ばそうと思って、翌年の生まれにしたんでしょう。それで満州への徴用を免れました。12月生まれならいや応なしに行かされていたと思います。
家は5月25日の空襲でやられました。いつも私は2階に寝ていたんですけど、親父がその日に限って「今日は防空壕に入れ」と言ったんです。おかげで助かったんです。後で家に帰ったら、屋根が吹っ飛んでいました。
私たちにとって命の次に大事なのは、たれでございます。親父は家の前に防空壕を掘ってたれなど一式入れておきましたので、江戸時代から継ぎ足しで使ってきたたれは無事でした。
長年続く店の5代目として、常によそ様と比較して、ウナギの焼き方や蒸し方を勉強しています。3週間前に福岡に、1週間前に小倉に食べに行きました。来週は大阪に行きます。
大阪ではウナギを蒸しません。たぶん東京の人は大阪でウナギを食べて「硬い! これは俺の食べるウナギではない」と思うでしょう。でも1週間ほど食い倒れの街でたこ焼きなどを満喫した上でウナギを食べたなら「あ、そうか」と理解できると思うんです。
福岡のたれはすごく甘い。それが苦手な東京の人は多いでしょうけど、1週間いた上で食べれば、納得すると思います。
その土地の気候や生活習慣で食べ方が変わります。こういう食文化の違いをどう考えるか。
うちはパリにも支店があります。元になるたれを日本から送り、まったく同じ味でウナギをお出ししています。パリのお客さんは、箸を使って食べてくださいます。ナイフとフォークをくれとは言いません。皆さん、日本の食文化に敬意を持っていて、和食というものに挑戦しているんだと思います。
そのようなフランス人の食文化の捉え方が好きですし、おいしいものがたくさんあるので、10年くらいかけて、レンタカーでフランス全土の食べ歩きをしたものです。
中で強く印象に残っているのが、モナコで食べた子牛。まだ胎内にあるものを引っ張り出して調理したそうで、柔らかい食感といい、ミルクっぽい香りといい、素晴らしかった。
国内でも海外でもいろんなものを食べました。その上で私は、ご飯ほどおいしいものはないと思っています。確かにステーキはおいしいですよ。ウナギもおいしいですよ。でも毎日は食べられないでしょう。ご飯は1日3食、365日食べても飽きません。それも毎回、おいしく食べられるんです。
店でお客さんに「今日はちょっとおいしくなかった」と言われることがあります。そんな日は、ご飯の炊き方が悪かったんですね。ご飯が良くないと、ウナギが良くてもおいしくない。
こんなことを言うと怒られちゃうでしょうけど、たぶん農家の方が思っている以上に、ご飯の味は大事。農家の皆さんは素晴らしいものを作っているんです。これからもよろしくお願いします、と言いたいですね。
(聞き手・写真 菊地武顕)
<プロフィル> かねもと・かねじろう
1928年、東京都生まれ。寛政年間(1789~1801年)に創業したウナギ店「野田岩」店主。ワインと合わせたり、志ら焼(白焼き)とキャビアを組み合わせるなど新しい試みも提唱。著書に『生涯うなぎ職人』。
2018年04月22日

ブランド保護 JA率先 団体商標 本物の証し偽物に待った
農産物の差別化や知的財産の保護につなげようと、JAグループで地域団体商標登録をする動きが広がっている。福島県JA会津よつばは、アスパラガスを登録し、ブランド化を推進。北海道JA今金町は、粗悪品が同JAブランドとして出回るのを防ぐためにジャガイモを登録。類似品と差別化し権利を守るだけでなく、産地に誇りが生まれ、市場の信頼度が上がるなどの相乗効果も生まれている。(齋藤花)
箱の悪用防ぐ アスパラガス 福島・JA会津よつば
福島県のJA会津よつばは会津地方南部の3町で生産する「会津田島アスパラ」の差別化を図ろうと、地域団体商標に2017年2月に出願し、7月に登録が実現した。
従来の紫、緑、白色のアスパラガスに加え、同JAが開発し紫アスパラを遮光生産して薄付きピンク色に仕立てる「桜アスパラ」も加え、「会津田島アスパラ」として春限定で直売所や町内の飲食店でPRする。
「会津田島アスパラ」の登録は、同JAのブランド「南郷トマト」がきっかけだ。同JAの合併前、旧JA会津みなみは07年に南郷トマトを地域商標登録した。他産地が出荷箱を再利用し、「南郷トマト」として出荷することが数回起きたことがきっかけだ。
商標登録は偽物商品の発生防止に成果を上げ、ブランドの認知度も向上。トマトの年間売り上げは10億円を超える産地に成長した。
同JA田島営農経済センターの佐藤公生センター次長は「ブランド保護と顧客へのPR効果をトマトで経験しており、登録にちゅうちょはなかった」と強調する。
登録には3年を掛けて特許庁や県の知財アドバイザーとやりとりをし、周知度合いを実績として証明するため、メディアに取り上げられた件数や内容を明示した。会津田島アスパラガス部会長を務める湯田重利さん(70)は「ブランド化で、部会にプライドと責任が芽生えた」と胸を張る。
周知に力入れ ジャガイモ 北海道・JA今金町
北海道のJA今金町も、ジャガイモの「今金男しゃく」を今年3月末に登録した。今金町で栽培するでんぷん含有量13・5%の高糖度のジャガイモだ。
同JAは05年に今金男しゃくのロゴを段ボール箱や商品包装に使ってきたが、同じ名称を使った規格外品が市場やインターネットで出回り、消費者から「欠陥品を得た」などと苦情が寄せられた。
そこで、偽物を排除するために地域団体商標に出願。登録の要件を満たすために物産展への出品や車両広告などで周知性を高める工夫もした。
同JAは「今後は、ポテトチップスなどの加工品にも地域団体商標マークを付け、ブランド化のために有効活用する」と計画する。
全部で639件 JAグループで 3割超を登録
特許庁によると地域団体商標登録件数は3月30日現在で639件。JA全中によると、JAグループの登録件数は183件で全体の3割以上を占める。JAグループは第27回JA全国大会で、農業者の所得増大に向けた対策の一つとして、地域団体商標制度の活用に取り組むことを決議している。
JA全中はメリットについて「価格の上昇や売り上げの増加、品質管理の徹底、地域の知名度向上が期待できる。各JAに取得を進めてほしい」(輸出・知財農業推進室)と強調する。
特許庁地域ブランド推進室は「農産物や加工品は、商標登録することで市場での信用や競争力が上がる」と指摘。生産者の組織力も向上し、品質向上や安定につながると利点を強調している。
<ことば> 地域団体商標
地域名と商品名を組み合わせた地域ブランドを保護することを目的とした商標制度で、2006年に施行された。出願はJAなど地域に根差した団体に限る。権利を侵害した場合は10年以下の懲役か1000万円以下の罰金となる。損害賠償請求も可能だ。地理的表示(GI)保護制度は国が監視、取り締まるのに対し、地域団体商標では、自己で監視、権利を行使する。両者を組み合わせて利用することもできる。
2018年04月19日

「白鵬85の3」雌子牛2頭 鳥取で500万円超え
鳥取県琴浦町の鳥取県中央家畜市場で20日に開かれた4月の和牛子牛せり市場で、上場した雌の「ふくふくはくほう」が同市場過去最高の561万8160円でせり落とされた。全国トップクラスの能力を持つ同県基幹種雄牛「白鵬85の3」が父で、母の「ふくふく」も脂肪交雑育種価が県内2位の成績を持つ。父と母が同じ雌1頭も540万円の値を付けた。
2018年04月21日
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緑茶飲料「ぬまっちゃ」 売り上げで産地振興 1本につき3円 改植や食農教育に 静岡・JAなんすん
JAなんすんは4月、プライベートブランド商品の緑茶飲料「ぬまっちゃ」の売り上げから1本(400ミリリットル)につき3円を沼津茶の産地振興に充てる取り組みを始めた。集めた資金は茶生産者の改植など農業経営支援対策や、児童・生徒への食農教育などに役立てる。自己改革で茶業再生に向けた取り組みの一つ。CSR(企業の社会的責任)の一環として地域貢献活動に位置付けている。
「ぬまっちゃ」のブランド力と商品価値を高め、沼津茶の消費拡大にもつなげる。ぬまっちゃは富士山の麓、愛鷹山麓で育った茶葉を100%使用。沼津商工会議所の「沼津ブランド」にも認定されている。沼津市を舞台にしたテレビアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の制作会社と共同でパッケージをデザインし、店頭販売やネット販売を通じ全国のアニメファンや消費者に知られるようになってきた。
缶入り1本140円で、行政などと連携して地産地消で販売を強化し、2018年度は2万7400ケース(1ケース24本)の販売を見込んでいる。7月からは、産地振興に売り上げの一部を充てる旨を缶に記載する。
JA営農生活部の新井孝太郎部長は「沼津茶の歴史は鎌倉時代にさかのぼり、先人の思いと技術が継承され、地域の基幹作物になった。生産者と共に安全・安心な茶の生産と消費拡大に取り組むに当たり、消費者にも地元の茶業を応援していただきたい」と話している。
2018年04月23日

トマト 2農場がGAP認証 全農みやぎ事務局 全国連支援の第1号
JA全農みやぎは20日、宮城県内の2農場がグローバルGAPをトマトで取得したと発表した。JA全中、JA全農、JA共済連、農林中央金庫の4者で取り組む「JAグループGAP第三者認証取得支援事業」を活用した農業生産工程管理(GAP)認証取得の第1号。全農みやぎが事務局を務め、団体認証として取得した。労働環境や経営などの改善につなげ、国内外への販路確保を後押しする。
取得した農場は、松島町のサンフレッシュ松島とマキシマファーム、山元町のやまもとファームみらい野の3法人2農場。申請面積は合計で2・66ヘクタール。
JAを超えて複数の大規模法人が参加したことから、全農みやぎが団体事務局を担当。今後も県内大規模法人の参加を呼び掛ける予定。
サンフレッシュ松島とマキシマファームの代表・内海正孝さん(61)は「農家が単独で挑戦するのは難しい。全農の支援により、専門家の指導などを受けられ、認証を取得できてうれしい」、やまもとファームみらい野の代表・島田孝雄さん(63)は「今後も全農と協力し、他の露地野菜でも認証を取得したい」と述べた。
全農みやぎの高橋正運営委員会会長は「輸出にもつながる第一歩。宮城の農作物の安全や安心をさらに高め、国内外にPRしよう」と強調した。
JAグループGAP第三者認証取得支援事業は、2017年度からスタート。GAP支援チームが産地に出向き、団体認証取得を支援する。
2018年04月21日

交流人口拡大へ連携 JR四国と包括協定 列車で地域農業PR JAバンクえひめ
JAバンクえひめはJR四国と連携し、農産物の情報発信や交流人口の拡大を強化する。互いの協力を深める包括連携協定を19日に締結。4月下旬から県外の乗客が多い観光列車で、愛媛県産農産加工品が当たるキャンペーンを展開し、県内農業を積極的にPRする。今後は地域農業を体験できる旅行商品の開発などで地域活性化を図る。
両者は人口減少や過疎化といった共通の課題に対応するため、農産物や加工品の販路拡大、情報発信、観光誘客、交流人口の拡大などで協力する。JRの旅客に県産の農産物をPRするなど、両者の得意分野を最大限生かす考え。JAバンクと地域の鉄道インフラが協定を結ぶのは珍しい。
松山市で同日行った協定の締結式で、JAバンクえひめを代表してJA愛媛県信連の山下学理事長とJR四国の半井真司社長が調印した。
山下理事長は「交流人口が増加し、地域活性化につながることを期待する」と強調。半井社長は「さまざまなイベントを展開し、事業の維持拡大に取り組みたい」と、地域振興への意欲を示した。
28日から、観光列車「伊予灘ものがたり」で県内12JAの農産物や加工品が当たるキャンペーンを展開する。懸賞付きパンフレットを乗客に配り、農産加工品を抽選で600人にプレゼントする。今年は各JAのホームページにアクセスできるQRコードを貼付し、地域農業のPRに役立てる。
今後は農業を体験できる旅行商品の開発や訪日外国人(インバウンド)誘致などで管内農業の振興を図る。山下理事長は「金融機関の農業参入が相次ぐ中、JAバンクとして地域農業の振興を支えていきたい」と強調した。
JAバンクえひめは16~18年度まで、組合員の経営やJA事業を後押しする「農業所得増大・地域活性化応援プログラム」を展開しており、協定はその一環で締結した。
2018年04月20日
職場改善へ「前進」 休息の場確保、営業時間調査 「働き方プロジェクト」 JAぎふ
岐阜県のJAぎふが昨年度立ち上げた「働き方改善プロジェクト」が、働きやすい職場づくりに成果を上げ始めた。プロジェクトが職務上の問題点や改善策を検討して役員に提案し、役員がJAとして取り組むか検討して方針を示す流れを構築。職員の休息スペース確保や、店舗の営業時間の調査開始など、具体的な動きにつながっている。
JAは昨年5月、職員140人が参画する同プロジェクトを設置。支店次席管理者、窓口担当、渉外担当、営農経済担当など七つの分科会で、課題の洗い出しやその改善方法を検討した。昨年12月には、有給休暇の取得方法の改善や、残業を極力なくす職場環境づくりのための職務職制の変更、新たな担当の設置などを役員に答申した。
これを受け、役員らは実施の可否や実施に向けた詳細を検討し、改善策などを回答。担当課で整備を進める事案や、実施に向けて早期に動きだす案件などに分けて回答を示した。
プロジェクトを通じ、本店内で職員の休息の場を確保するためのレイアウト変更が行われ、金融店舗の営業時間の在り方を検討するための利用者数の調査などが動き始めている。JAの櫻井宏組合長は「仕事とプライベート、両方が充実しているJAぎふとなれるよう、改善を進めていく」と意欲を示す。
プロジェクトは今後も、実施状況の定期的な報告を求めていく他、改善策の実施により発生する課題への対処方法などを検討する。役員と意識を共有しながら、より効果の上がる方策をさらに考えていく方針だ。
2018年04月17日

対話強化へ出前研修 農業融資や対応方法 JAごとに資料作成 長野信連
JA長野信連は、自己改革の実現に欠かせない農業者満足度の向上のため、農業融資の知識や対応方法などを県内の各JAへ出向いて伝える“出前研修”を開いている。地域農業の実態に合ったカリキュラムを組むことができ、職員の負担も軽く、参加率が向上。金融部門以外からの参加も増えるなど「今までにない効果」(同連農業部)が出ている。
訪問の不安一掃 改革実現後押し
研修会は「農業融資パッケージ研修」と題し、1回2時間の全7回。同連農業部の職員が講師となり、JAの会議室などで開く。2017年度から始め、これまでに10JAで53回開き、延べ1495人が参加した。そのうち4割は営農や経済部門の担当者が占めた。各JAに出向くので、金融部門の担当者が窓口業務の終了後などに参加しやすい。
研修は、それぞれの地域農業の実態に合わせた内容を組む。同連がJAの担当者と打ち合わせ、JAごとに研修資料を作成。職員として共有したい情報を盛り込む。
初回は、目的である農業者満足度の重要性を説き、近年の農業やJAを取り巻く状況を解説。2回目は、水稲や果樹、園芸など各JAの主要品目に合わせて農機や作型、巡る情勢を盛り込み、農家と話すための基礎知識を体得させる。
さらに3回目以降で、農業資金や補助金の情報、資金計画書の作成法なども学び、農家訪問の模擬実習もして、すぐに要望に対応できる実践的な知識と技術を身に付ける。同部の栗山隼明さんは「明日にでも使える知識を得られる研修とした」と強調する。
受講したJA職員からは、「今まで訪問に不安があったが、抵抗がなくなった」「自分は農機屋ではなくJA職員だという自覚が持てた」と好評だ。
同連は18年度も研修を継続し、これまでに受講者から要望のあった「青色申告書・決算書の読み方」を加えた全8回で開く予定だ。栗山さんは「部門に関係なく農家と対話を深めることで、地域に必要とされるJAの役割を発揮できる」と話す。
2018年04月12日

若手の発想でヒット 特産ブドウで6次化商品 80万袋販売 想定の10倍超 JA山形おきたま
山形県のJA山形おきたまは、6次産業化商品を開発する若手チームを編成し、管内特産のブドウを使ったヒット商品を生み出した。大手メーカーなどと共同でグミを開発。2016年末の発売から現在までに、想定の10倍を超す80万袋を売り上げた。若者の柔軟な発想と外部の専門家との連携を通じ、特産品の特徴である甘酸っぱさと香りを最大限生かしてヒットに結び付けた。
JAは管内農産物を全国にPRしようと、16年から6次化商品の開発に着手。木村敏和組合長の直轄で専門チームを結成した。若者の発想を生かすため、各部署から選抜した20、30代の若手職員10人で検討を始め、さらに外部アドバイザーとして地元食品会社の元社長を招いた。
チームは管内特産の「デラウェア」に着目。「グミにしてはどうか」という意見が出た。
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当初は地元で6万袋を目標に販売。予想以上の反響を呼び、全国のコンビニエンスストアでも販売して80万袋が売れた。
管内の高畠町のブドウ農家、近野裕一さん(58)は「日本一のデラウェアの産地だが、主に関西方面では知名度が低かった。イメージアップにつながり、生食の消費拡大にもつながるのでは」と期待を寄せる。
チームは定期的に集まり、新たな商品開発の検討を続けている。17年末には「デラウェア」のノンアルコールワインを発売し、売れ行きは好調だ。木村組合長は「6次産業化の土台を築くことができた。今後も新商品を生み出したい」と意欲を見せる。
2018年04月11日

茶専用肥料を販売 苦土硫安から全量切り替え 価格低減が実現 静岡・JAハイナン
静岡県のJAハイナンは今シーズンから、従来品より2割近く価格を下げたPB(プライベートブランド)の茶専用肥料「ハイナンマグ硫16」の販売を始めた。JA静岡経済連や肥料メーカーと連携し、全量切り替えるとの前提に予約を集め、価格低減につなげた。JAで扱っていた苦土硫安を全量切り替え、銘柄集約を実現した。
苦土硫安は茶農家が扱う化成肥料の中で最も扱う量が多い。芽出し用の肥料として、圃場10アール当たり60~80キロほど投入している。使用量が多く、農家から「もう少し安くならないか」との声が上がっていたため、同JA初のPB肥料として企画した。
開発した肥料は窒素16%、リン酸2%、苦土7%。施肥を指導するJAの営農指導員が構成をチェックし、管内の土づくりに合わせた。基幹銘柄と位置付けて栽培指導にも採用。肥料の注文をとる前には指導員同士を集めた検討会も開き、営農指導に生かせるよう効果的な使い方を共有した。
袋には富士山を背景に広がる管内の茶畑の写真を載せた。商品名は「ハイナンマグ硫16」。今シーズンは1万2000袋(1袋20キロ)を製造。JAは従来扱っていた苦土硫安を全て同肥料に切り替えて普及を進める。
2018年04月10日

推進品目の収益解説 兼業向けに特集記事 JAグリーン長野広報誌
JAグリーン長野は、JAが生産振興する「推進品目」について、組合員向け広報誌で詳しく解説する特集を掲載し、反響を呼んだ。自己改革で目標とする農業所得の増大を目指し、野菜、花き、果樹で、収量や収益、資材費などを具体的な金額を示して紹介。実際にJAに問い合わせて、新たに栽培を始める生産者も出てきた。
広報誌で推進品目を特集するのは初。これまで専業農家向けの営農懇談会や講習会などで栽培を呼び掛けてきたが、兼業農家や家庭菜園程度の規模で作る組合員には伝える機会がなかったことから特集を企画した。
特集タイトルは「作物選びで生涯現役農業!」。定年帰農者や高齢者にも新品目に挑戦してもらうことを意識した。2、3月号で合わせて8ページを使用。ピーマンや加工用トマトなど野菜3品目、ユーカリやスーパー向け小菊など花きと枝物3品目、桃やブドウなど果樹5品目を紹介した。
各品目で10アール当たりの収量、収益または販売額を明示。コストもできるだけ具体的に示した。栽培を勧める理由や省力的な栽培技術、JAの支援体制も解説した。対象品目を栽培する生産者からは「簡単ではない」といった批判的な意見も寄せられたが、特集をきっかけに「栽培に挑戦してみよう」と考える人も出てきた。
長野市稲里町の女性(56)は「空いていて荒れないように耕うんするだけの園地に、広報誌で見たユーカリを植え、少しでも収入につなげたい」とJAに問い合わせた。営農技術員は女性の農地を確認し、品種や作業時期、注意点などを説明。女性は実際にユーカリを栽培している現地も見学し、苗を注文した。
広報担当者と共に記事を企画した営農指導課の富澤繁男課長は「広報誌を入り口に、初心者も含め、より多くの生産者に栽培して収入につなげてもらえるよう、しっかりと指導やフォローをしていきたい」と意気込む。
2018年04月06日

市場より5%安く 肥育経営改善へ全国初 和牛子牛供給が本格始動 3年後年500頭供給めざす 熊本・JA菊池
熊本県のJA菊池は、和牛子牛を市場より5%安く肥育農家に提供する、全国初の取り組みを本格的に始めた。JAの施設で乳用牛に受精卵移植(ET)を施すなどして子牛を増産し、市場を通さずに安く売り渡す仕組み。子牛高騰による採算悪化に苦しむ肥育経営の改善につなげる狙いだ。3年後をめどに年間500頭を安価に供給することを目指す。
昨年、管内の菊池市に竣工したJAのキャトルブリーディングステーション(CBS)で子牛を生産し、約10カ月齢まで育成してから管内の肥育農家に供給する。1月に1頭、2月に4頭の出荷にこぎ着けた。
価格は、その月の県家畜市場の和牛子牛取引価格(雌雄平均)の5%安に設定した。乳用牛へのETにかかる費用や、出荷月齢までの管理などはJAが担う。CBSの御手洗直所長は「施設の運営を続けられる、ぎりぎりの水準まで安くして提供する」と強調する。
同市で和牛170頭の肥育を手掛ける山瀬欣也さん(42)は2月、CBSから子牛3頭を導入した。「いい牛が市場より安く手に入れば、とてもありがたい。期待している」と評価する。
JAの三角修組合長は「管内は全国有数の酪農地帯で乳用牛が多い。この武器を生かして和牛子牛を増産し、安価に提供する。組合員の所得向上へJAができることをやっていく」と意気込む。
CBSは現在、管内の酪農家から預かった乳用牛88頭、JAが所有する雌の和牛86頭を飼う。乳用牛を預かることで、酪農経営の労働負担を軽減する役割も担う。徐々に飼養規模を広げ、最終的に月40頭の子牛を出荷できる体制を整える。
2018年03月02日
共通目標掲げ効率化 部署間連携で改革加速 JAならけん 進捗管理 役員も共有
奈良県のJAならけんは、営農経済分野で3階層の部署間連携体制をとるとともに、部署共通の重点取り組み事項を設定し、生産コスト減や新規作物の振興などの自己改革を進めている。企画立案、実働、進捗管理を、関係部署や役員が共有。数値化した共通目標を設けることで各部門の連携をスムーズにしている。新規品目として生産拡大する、水田を活用した学校給食向けのキャベツでは、取り組み2年目の2017年産で目標の10ヘクタールを達成した。
県域JAとして効率的に改革を進めるため、重層的な部署連携体制をとる。企画立案は担い手サポートセンター、現場での実践はJAが独自に設置した担い手サポート室や各部署が担当。経営管理委員らでつくる「営農経済委員会」が進捗管理する。規模拡大や資材コスト低減などを支援する担い手対策、特産の柿や茶の販路拡大などを目指す販売対策、集落営農組織の育成などを後押しする地域対策の3分野で計31項目の戦略を立て、16年度から本格的に部署を超えた連携に乗り出した。営農経済事業は信用共済部門に比べると、目標の数値化や共有が難しいという課題もあった。営農振興部の南田裕次郎部長は「数値管理ができる共通目標を設けることで、生産から販売に関わる各部署の連携がしやすくなった」と話す。
水田を活用した学校給食向けのキャベツでは、販売部署が出荷先をあらかじめ確保し、需要量を生産部署に伝達。栽培講習や低コスト資材の提案、職員による定植支援、経営試算の事前提示など、各部署が連携して農家のメリットを追求することで生産拡大につながった。18年産の水稲用の肥料では、JA独自に銘柄を集約し、最大2割引きを実現した。
ハード面の支援として、JAの積立金を活用した独自の助成プログラムを用意し、規模拡大や新規就農を後押しする。面積要件の下限を低く設定。国の事業を使えない農家も助成を受けられるようにした。
プログラムを活用し、イチゴハウスを28アール拡大した辻本忠雄さん(62)は「助成があったので規模拡大に踏み切れた」とメリットを実感する。新規の生産者も増え、昨年11月には新たに出荷組合も立ち上がったという。
年に2回は、管内の2800人の担い手農家やプログラムを活用した農家を訪問し、アフターフォローにも力を入れる。担い手サポート室の植田重孝室長は「部署が違っても、農家にとっては一つのJA。組織に横串を刺すことで、共通認識を持って改革に取り組めている」と力を込める。
2018年02月06日