百貨店で常設販売 イノシシ 400グラム4968円! ジビエは高級肉

高島屋洛西店でジビエ商品を選ぶ買い物客(京都市で)

5年間改善を積み重ねた衛生管理手順書を紹介する垣内代表(京都府京丹波町で)

 国産ジビエ認証の始動を7月に控え、農水省のジビエ(野生鳥獣の肉)利用モデル地区となっている京都府の処理施設が全国で初めて、大手百貨店と手を組み、高級肉として常設販売をする取り組みが注目を集めている。国産の安全・安心を売りにした高品質ジビエを安定的に供給するためには、狩猟から加工段階まで一貫して徹底的な衛生管理が不可欠だ。全国トップレベルの衛生管理が、品質に厳しい百貨店との取引を可能にしている。(猪塚麻紀子)
 

「安心感」前面に パネルでPR徹底 京都市の高島屋洛西店


 京都市の高島屋洛西店の食品売り場の一角に設けられたジビエの常設販売コーナー。冷凍ショーケースには、京丹波町のジビエ処理施設「京丹波自然工房」の十数種類のジビエ商品が並ぶ。鹿肉は「京都もみじ」、イノシシ肉は「京都ぼたん」のブランドで売り出し、「牡丹(ぼたん)鍋猪(しし)肉」は400グラム4968円と高級だ。

 市内から訪れた宇田聡子さん(38)は「ジビエはよく食べる。ホームパーティーで使う食材を買いに来た」と、鹿のスモークタン(100グラム1512円)を購入した。

 同店のバイヤーは「消費者が最も気にするのは衛生面や安全性」と明かす。ジビエの販売に向け、社内では衛生面について議論があったという。加工施設を視察して安全性を確認し、約1年かけて販売にこぎ着けた。百貨店でのジビエの常設販売は全国で初めて。売り場にはパネルやレシピを置いて生産者の顔が見える販売を工夫し、安全・安心をPRする。

 消費者から好評で、9月からは同市中心部の高島屋京都店でも常設販売を行う予定だ。若い人も多く訪れることから、売り上げ拡大を期待する。
 

とことん衛生管理 捕獲~出荷手順を厳守 京丹波町の工房


 「京丹波自然工房」は衛生管理を徹底し均質化して出荷することで、ジビエの商品価値向上につなげる。「商品として捕獲することが大事」と、垣内忠正代表は強調する。工房は2013年、民間の処理施設として設置。鹿、イノシシの捕獲から処理、販売を手掛ける。従業員は7人。垣内代表を含め男性4人は熟練の狩猟者だ。加工は、女性従業員1人が専属で担う。

 工房の衛生対策は全国トップレベルとされる。狩猟者は毎朝わなを見回り、かかった鹿やイノシシは電気ショックを与え生きたまま放血、施設に持ち帰り1時間以内に処理する。識別番号を付け、捕獲時の体温や体重、内臓の状態など細かくチェックし、異常があれば枝肉は全て廃棄。工程ごとに処理する部屋を分け、作業者は決められた方法で画一的に処理する。

 衛生管理をまとめた分厚いファイルは、5年間改善を繰り返してきた証しだ。垣内代表は「野生の物は品質を一定に保つのが難しい。だから家畜以上に衛生管理を徹底する。消費者目線の衛生レベルを求める高島屋の影響も大きい」と話す。
 

全国のモデルに


 政府は16年度に1283トンだったジビエ利用量を19年度に倍増させる計画。捕獲獣のうち16年度のジビエ利用は鹿10%、イノシシ5%だけ。農水省はジビエ利用の推進に向け、同施設や高島屋、商工会など多彩な業種が参加する「京都丹波・大阪北摂連携ジビエモデル構想協議会」をモデル地区に選出。処理数を16年度の400頭から19年度に1000頭にする目標を掲げる。

 ただ、品質を維持しながら処理頭数を増やすには、猟師が捕獲から販売までを担う体制では難しい。協議会では捕獲、搬送(狩猟者)、処理加工(同工房)、販売(高島屋、商工会)と役割を分担する仕組みを作った。

 垣内代表は「ジビエをさらに普及させるには、猟師が仕事として成り立つ仕組みが必要だ」と強調する。高島屋との連携を足掛かりに大都市でPRし、「ストーリー性で地域に人を呼び込みたい」と見据える。

 認証制度を進める上でも同省は「捕獲から販売までの連携や、高い衛生管理レベルは他の地域の参考になる」(鳥獣対策室)と話す。 

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