基本計画折り返し 官邸主導の功罪検証を

 現行の食料・農業・農村基本計画がスタートして3年がたち、5年ごとに見直してきた従来の日程からすると折り返し点を過ぎた。食料自給率の向上など目指した目標は達成できるのか、検証が必要だ。個々の政策の効果を判断するだけでなく、官邸主導の相次ぐ農政改革が基本計画の方向性や理念からずれていないか、その功罪を含めて原点からの点検を求めたい。

 現行の基本計画は2015年3月31日に閣議決定した。当時の林芳正農相は、成長産業化を進める産業政策と、農業・農村の多面的機能の発揮を進める地域政策を、車の両輪として展開していくと説明。決着済みの米政策見直しなどを取り込みながらも、「食料」「農業」「農村」の3分野に目配せした内容として始動したはずだった。

 焦点の食料自給率の目標は、前計画の50%から45%に引き下げて実現可能性を追求したものの、現実は38%(16年度)と1ポイント下げた。国民への食料供給の重要な基盤である農地は、基準とした13年の454万ヘクタールから10万ヘクタール減少の444万ヘクタール(17年)。基本計画で見通した440万ヘクタール(25年)の維持に黄色信号がともっている。

 生産基盤の弱体化は鮮明だ。2000年以降51万~52万トンで推移していた牛肉生産量(枝肉換算)は16年度に46万トンに急減。52万トンとした25年度の生産努力目標の実現が不安視される。野菜もそうだ。16年度の生産量は1163万トンとなり、基準年の13年度から32万トン減った。1395万トンに増やす目標とは逆方向に進んでいる。生乳、豚肉、果実なども同様の動きをたどる。

 農水省がこうした状況にどう手を打とうとしているのか、踏み込んだ姿勢が見えてこない。熱心なのは、農産物輸出や農地集積、農協改革などに関する進捗(しんちょく)管理である。官邸主導の農政改革で成長戦略に組み込まれた政策が多く、成果を見せるために、さらにねじを巻くという展開になっている。産業政策への傾斜と併せ、“育成官庁”より“監視官庁”の性格を強めている感がある。

 基本計画が示した3分野のバランスはもはや適正さを失いつつあるのではないか。農村の環境を守り暮らしを支える地域政策はとりわけ影が薄い。少子高齢社会の中で地域社会の持続性をどう確保するかという今日的な課題に対して、農の視点からの積極的な政策展開が弱い。

 基本的な疑問が湧く。官邸主導の農政と基本計画はどちらが重いのか──。基本計画は食料・農業・農村基本法に基づき、政府が閣議決定する。官邸農政は規制改革推進会議といった諮問会議での協議を経て、最終的には首相が本部長を務める農林水産業・地域の活力創造本部が決める。後者が強まるほど、農業者らの当事者が参画する本来の政策決定プロセスが空洞化していく。基本計画の位置付けから改めて問い直したい。

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