日米ゴルフ外交 成果出せるのか疑問 立教大学大学院特任教授 金子勝

金子勝氏

 「ゴルフ外交」──。メディアは、安倍晋三首相がトランプ米大統領と一緒にゴルフをする仲を、その蜜月関係を示すかのようにそう評する。安倍首相は昨年2月にフロリダ州、同11月には埼玉県川越市でトランプ氏とラウンド。今月17日には訪米し、再びフロリダ州でトランプ氏と「ゴルフ外交」を行う予定だ。だが、それで成果を出せるかは大いに疑問だ。

 日本の企業では接待ゴルフが行われているが、それを「外交」だとする話はあまり聞かない。国民のニーズに応じて相手国に主張し、相互の主張とすり合わせつつ、粘り強く交渉していくのが「外交」である。そうした基本姿勢がないまま、「接待」だけに血道を上げれば、かえって相手にばかにされる。

 実際、これまでの「ゴルフ外交」の成果は乏しい。「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)を掲げるトランプ氏は3月23日、「国家安全保障」を理由に、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置を発動した。追加関税は鉄鋼で25%、アルミで10%とした。

 ただ輸入制限措置の適用除外国には、主な輸入相手国である欧州連合(EU)や韓国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチンが名前を連ねた。一方で蜜月関係にあるはずの日本は除外対象になっていない。「ゴルフ外交」の不発は通商交渉にとどまらない。

 在日米軍は突然、事故が多発している垂直離着陸機、CV22オスプレイ5機の横田基地配備を実施した。事前に住民に知らせることもないまま3日に発表し、5日には到着する慌ただしさだった。安倍政権はこれについて抗議をしないどころか、逆に沖縄の辺野古新基地建設を推進し、夏にも埋め立ての本格工事を始める見通しだ。
 

北問題蚊帳の外


 北朝鮮の非核化問題でも、日本は蚊帳の外に置かれた。安倍首相は北朝鮮との「話し合いのための話し合い」は無意味だと、制裁強化を主張してきた。だが、韓国の文在寅大統領が北朝鮮に平昌冬季五輪への参加を促す中で、南北会談が実現し、5月までに金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ氏が会談する展開となった。金氏は3月25~28日に中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。

 河野太郎外相が3月31日に北朝鮮は核実験を準備していると発言したところ、中国外務省の耿爽副報道局長に「足を引っ張らないでほしい」と批判される一幕もあった。
 

情報隠し次々に


 森友、加計両学園を巡る問題や、自衛隊イラク派遣部隊の日報隠蔽問題、働き方改革と、情報隠蔽や文書改ざんが次々と露呈する中、安倍首相は17日に訪米する。鉄鋼などの追加関税の適用除外を要請すれば、トランプ氏は見返りに環太平洋連携協定(TPP)11や日欧経済連携協定(EPA)以上に、日本農業を破壊する日米貿易交渉を要求するのではないか。

 そうなった場合、主張すべきことを主張しない3度目の「ゴルフ外交」は、かえって米側に軽視される結果を招かないだろうか。少なくとも情報を国民に隠したり、改ざんしたりしないようにしてほしいと願うばかりだ。

<プロフィル> かねこ・まさる

 1952年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2000年から慶應義塾大学教授、18年4月から現職。著書に『金子勝の食から立て直す旅』など。近著に『日本病 長期衰退のダイナミクス』(岩波新書)。

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