訪日客「商機」 農畜産物 日本土産に

検疫代行サービスを紹介する英語やタイ語のちらし(大阪府の関西国際空港で)

免税カウンターや配送サービスなどでインバウンド向けの対応を強化する「但馬のまほろば」(兵庫県朝来市で)

 インバウンド(訪日外国人)に、日本産の農畜産物を土産として売り込む動きが広がってきた。和歌山市の事業者は、JAと連携し検疫済みの果物を旅行者が空港で受け取れる検疫代行サービスを開始。検疫が不要な国の旅行者にターゲットを絞り、厳選した農畜産物の専門店を設ける空港も出てきた。国や品目によって動植物検疫の条件が異なるため、販売を増やすには条件に合わせたサービスやPRが求められそうだ。(斯波希)
 

JAと連携検疫代行 和歌山の企業


 地域特産品のブランド戦略などを手掛けるスターフードジャパン(和歌山市)は2017年から、和歌山県特産のかんきつや桃、イチゴなどをインバウンドに持ち帰ってもらおうと、関西国際空港内での検疫代行サービスを始めた。

 大阪市内のホテルに申込書を設置し、注文のあった商品を同県のJA紀の里から調達。最短4日で、出国時に空港内にある同社直営の土産物店で検疫済みの商品を受け取れる仕組みだ。

 検疫が必要な国からの旅行者が農産物を土産として持ち帰る場合、帰国時に植物防疫所や空港内の検疫カウンターへの持ち込みが必要だ。代行で手間を省くことで、気軽に果物を持ち帰れる。

 今夏には、旅行者がインターネット上で検疫代行の申し込みや決済ができる電子商取引(EC)サイトを立ち上げ、利便性を高める。同社の新古祐子代表は「工場で大量生産されたものではなく、地域ならではの手作り品を海外に発信したい」と話す。JAは「産地を知ってもらい、実際に訪れるきっかけになればうれしい」(直売課)と期待する。
 

手間なし空港へ配送 兵庫の道の駅


 兵庫県朝来市の道の駅・但馬のまほろばは、直売コーナーの農産物をインバウンドに売り込もうと、検疫条件の案内と関西国際空港への配送サービスを16年に始めた。1件2000円で、事前にツアー会社を通じてちらしを配布するなどしてPRする。

 今後、シンガポールからの誘客に力を入れる方針だ。個人消費用の簡易証明書が添付されていれば、空港での手続きなしで牛肉を持ち込める同国向けに「但馬牛」などを売り込む戦略。福丸泰正支配人は「都市部の観光に飽きた外国人は、地方に流れてくる。収穫体験なども含めて但馬の食をPRしていきたい」と意気込む。
 

国際線エリア直営店で販売 中部国際空港


 愛知県の中部国際空港は、検疫が必要ない国の旅行者にターゲットを絞り、静岡県産の「クラウンメロン」や事前に検疫を済ませた三重県産「松阪牛」などを国際線の制限エリア内の直営店舗で販売する。購入者の7、8割が、検疫なしでほとんどの品目を持ち帰れる香港からの旅行者という。

 昨夏、岐阜、長野県産の桃を販売したところ、2カ月ほどで約600箱(1箱8個入り)が売れた。「ターゲットとする国の食文化や好みに合わせて品ぞろえしている」(営業企画部)と話す。
 

“食”の魅力 地方に誘客


 農水省の推計によると、インバウンドの滞在中の旅行消費額のうち土産代が最も多く、全体の約4割の1兆6398億円に上る。そのうち食料品等は3456億円(17年)で前年に比べ19%伸びた。食料品の中で菓子類が46%を占める。

 日本土産として農産物を持ち帰る場合、基本的に国や品目によって①そのまま持ち帰れるもの②輸出検査を受け、合格すれば持ち帰れるもの③持ち帰りできないもの──の3パターンがあり、条件に合わせた対応が必要となる。

 インバウンドの消費行動に詳しいジャパンショッピングツーリズム協会の吉川廣司事務局次長は「地方で食べたおいしいものを持ち帰りたいという人が増えている」と指摘する。同協会は17年の訪日旅行者数と各国の検疫条件などから、土産で農産物を販売できるインバウンド数を約1186万人と試算。「土産として特産品の人気が出れば、活性化の起爆剤にもなる」(吉川事務局次長)と話す。

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