森友問題と農政改革 近視眼の弊害検証を 新潟食料農業大学教授 武本俊彦

武本俊彦

 森友・加計問題などを巡る安倍晋三首相や政府の対応は、時代錯誤の縁故資本主義を体現している。官邸主導の名の下、適正な手続きを経ずに一部の権力者周辺に利益をばらまくトップダウンで、短期的成果を求める。その本質は農政改革とも共通しており、近視眼的な政策手法の弊害について検証することが必要だ。

 国民の食料を供給する農業は、動植物の養育を基本とし、生産要素に占める土地の比率の高い土地集約型産業である。その結果、地域の自然的環境に左右され、農村という居住の場で展開される。つまり、農業は地域条件を前提に展開せざるを得ないのだ。

 だが、安倍政権が官邸主導で進める農政改革は、現場で創意工夫をしている人々の存在を無視し、地域の多様性を捨象する政策体系となっている。全国の農業や農家を画一的に考え、同じように短期的成果や経済合理性を追求するという思考回路で政策を構築しているのだ。
 

地方にばらまき


 例えば、アベノミクスの目玉とされた地方創生は、地方への権限・財源の移譲よりも、補助金の活用によって中央政府の考え方に沿って地方の底上げを図ろうとするものになっている。人口減少・高齢化社会の到来、地震・災害の多発化といった不確実性が増す中、中央政府は本来、地方の創意工夫が発揮できるように、補完的役割に徹するべきである。だが、そうなっていない。これも短期的成果を求める観点から地域の諸条件を捨象する市場原理主義の考えに立脚している結果である。

 また、水田農業においては、規模拡大が進まず、農地をまとまった形で担い手に集積させることが急務の課題である。だが、安倍政権が力を入れる農地中間管理機構(農地集積バンク)を中心とする農地の流動化政策は、全国一律の農地市場が成立していることを前提としている。
 

適正手続き経ず


 お金の貸し借りでは、お金自体に「個別性」や「特定性」に関心があるわけではなく、その「価値」に着目する。一方、土地については、その「土壌」などの作物の生育に影響を与える条件など「個別性」や「特定性」を考慮して行うものであり、両当事者の意向が強く反映されることになる。お金のような「匿名性」を前提とする市場とはならない。そのことを無視すれば農地の集積・集約が進まないのは当然のことであろう。

 結局のところ、安倍政権の政策手法は、データの客観的分析と利害関係者の意見も踏まえた政策の評価を行った上で企画立案を行っていないのである。つまり政策決定過程の透明化と国民に対する適正な手続きに従って、政策の執行がなされていないということを示している。

 森友・加計問題などを巡る情報隠蔽(いんぺい)や文書の改ざんなどは、適正な手続きを欠いた安倍政権の政策手法の弊害やゆがみを露呈するものでもある。

 今国会で問われている森友・加計問題などの本質は農政改革とも共通で、それらを国会で解明するのは、農政改革の在り方を評価する上でも重要なのである。

<プロフィル> たけもと・としひこ

 1952年生まれ。東京大学法学部卒、76年に農水省入省。ウルグアイラウンド農業交渉やBSE問題などに関わった。農林水産政策研究所長などを歴任し、食と農の政策アナリストとして活動。2018年4月から現職。

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