世界遺産 バリの棚田 食、癒やし、運動 提供 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 インドネシア・バリ島へ棚田を見に行ってきました。デンパサール空港から車で2時間、ジャティルイの棚田は国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産に登録されています。標高700メートルの村に広がる見渡す限り棚田の大パノラマは壮観で、青々とした田の中にココナツの木が点在し、南国の楽園らしさを感じさせます。気温は32度、バリでは二期作から三期作が多く、棚田は英語でライステラス。観光客の多くが欧州からで、皆、田園トレッキングを楽しんでいました。

 ジャティルイが世界文化遺産になった理由は、壮大な棚田景観に加え、9世紀から続くかんがいシステムと水利組織への評価です。スバックと呼ばれる共同体は、水の公平な分配や、田植え時期の決定、農繁期の互助、季節ごとの宗教儀礼とも結び付き、その規範には「神と人と自然」の調和を重んじるヒンドゥー教の宇宙観があります。いわば人々の祈りと先祖代々の耕す暮らしが、欧米人を魅了する地球の楽園を築いてきたのです。

 バリにはもう一つ有名なライステラス、テガラランがあります。観光地ウブドに近いことから多国籍の人々でにぎわい、何十軒もの店が並びます。 

 棚田の頂上付近で目を引くのは、バリスイングと呼ばれる絶景ブランコ。バンジージャンプに変わり今、バリ中の森や農園に設置され、世界中のインスタグラマー(SNSに写真を投稿する人)の間でブームとなっています。迷う暇などありません。安全ベルトを取り付けてブランコに乗ると、ワンツースリー! 興奮とドキドキと開放感。揺れるたびに空中に放り出されるような遠心力が働き、アルプスの少女ハイジの気分で棚田を体感しました。値段は10万ルピア(約800円)。ちなみにスーパーで見掛けたお米は5キロ6万4000ルピア(約510円)でした。

 米を主食としない国の人々にとってアジアの水田は、絶好のエンターテイメント空間です。農村の価値とは食、癒やし、運動で人を丸ごと健康にできることです。ツーリズム、農泊、6次産業化など地域資源の活用として、もしも日本の棚田に絶景ブランコが誕生すれば、農園は遊園地になり得ます。

 田園トレッキングで運動し、絶景ブランコで遊べばおなかが減り、地産地消はおのずと進みます。棚田を歩いて巡り、心身ともに爽快になる農村ヘルスツーリズムが提供できれば、人は遠くからでも日本のライステラスを訪ねて来るはずです。

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