送料上げ どう対応 農産物通販 農家・JAを直撃 価格転嫁―悩み深く

野菜の調製作業をする今川さん(中)。「送料値上げの影響は大きい」と話す(愛知県阿久比町で)

 宅配便の相次ぐ送料値上げを受け、農産物を全国発送する農家やJAが対応を迫られている。消費者に送料の上昇分を負担してもらうJAなどは「売り上げに響くのではないか」と、不安視する。送料の価格転嫁について、消費者にどう理解を求めるのか、農家が模索している。(猪塚麻紀子、尾原浩子)
 

まとめ買い提案


 「送料値上げの一部を商品価格に転嫁しても買い続ける」か「購入をやめる」か──。岐阜県白川町で「和ごころ農園」を営む伊藤和徳さん(40)は値上げを控えた2月、顧客にアンケートをした。9割から回答があり、全員が「買い続ける」と答え、安堵(あんど)した。

 同農園は関東や東海などの個人向けに、野菜セットを年間800個ほど配送料込みの価格で販売してきた。アンケートを踏まえ、5月に野菜セットの値上げに踏み切る予定だ。

 さらに送料値上げを逆手に取り、まとめ買い商品の提案も始める。野菜セットの箱の空いたスペースを生かし、野菜と一緒に米や調味料などの加工品、工芸品といった商品をまとめ買いしてもらう提案だ。

 「送料の値上げがなければ考え付かなかった。新たなビジネスの機会にするしかない」と伊藤さん。値上げをチャンスに変える考えだ。

 伊藤さんは、名古屋市で毎週土曜日に開かれる朝市「オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村」の一人。伊藤さんだけでなく、出店する農家の多くは宅配で農作物を売り出す。値上げに対し、今後の経営を不安視する農家は多い。

 朝市出店者で、愛知県阿久比町で野菜2・5ヘクタールを栽培する今川清司さん(55)も「卸価格に対して、送料の割合がより大きくなる。送料値上げは宅配に関わるさまざまな関係者に影響が出る。生産者も含めて対応策を考えていくことが重要」と模索する。 
 

相次ぎ 宅配大手3社


 大手宅配業者は、昨年秋から相次いで値上げを決行した。ヤマト運輸は10月1日、27年ぶりに基本運賃を40~180円上げ、事業者向けも個別対応で値上げした。佐川急便も、昨年11月21日から飛脚宅配便などの基本運賃を60~230円上げた。日本郵便は今年3月1日、平均12%送料の基本運賃を値上げした。10個以上同時に出すときに適用された数量割引も廃止した。

 3社とも農業法人など事業者が大量に送る場合は個別対応で、値上げの交渉を随時行ったという。いずれも「社員の労働環境の重視」「人手不足」などを理由にする。
 

“顧客離れ”心配


 マンゴーやパイナップルをJA全農が運営するJAタウンなどで販売するJAおきなわは、宅配大手を利用するJAタウンについては送料を上げた。JAは「沖縄は離島で送料が高く、消費者の負担は重い。売り上げに響かないか心配だ」(営農販売部)と話す。現時点で主要な契約先である沖縄の業者は値上げしていないが、「万が一、送料が上がれば非常に厳しくなる」(同)と不安を募らせる。

 ネット上の直売所で送料込み、もしくは送料無料で特産品を販売するJAふくおか八女は「送料値上げは仕方ないが、経営に影響はある。一部、商品価格に反映せざるを得ず、お客さんには申し訳ない」と話す。

 農産物を全国発送する北陸の農家は「送料上げは仕方ないが、経営には大打撃。政府も対策を議論してほしい」と嘆く。
 

問題は長期化


 流通経済大学の矢野裕児教授は「物流にかかるコスト全体が上がっており、問題は長期化する」とみる。これまでは「さまざまな業界で配送料を気にしていなかった風潮がある」と指摘。「地域でまとめて配送手段を考えるなど、対策を業界全体で講じていく必要性がある」としている。
 

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