雨なかったのに山崩れ 長年かけた 岩盤の粘土化要因か 続く避難勧告 悩む住民 大分・耶馬溪

土砂崩れ発生から2日後に現場を視察したJAグループ大分緊急災害対策本部(大分県中津市で、JA大分中央会提供)

 大分県中津市耶馬溪町で突然起きた山崩れから、もうすぐ1カ月。「雨も降っておらず、地震も発生していなかったのに」と予兆のない災害に住民らは困惑するが、林野庁などは現地調査の結果、要因は長年の地下水の浸透で土壌が粘土化して軟らかくなっていたことにあった可能性があると分析する。梅雨に向け新たな土砂災害が発生する恐れもあり、県は応急的な復旧工事を早急に進める。林野庁は、詳細な調査を踏まえた造成も検討している。(木原涼子、齋藤花)

 4月11日未明の山崩れ。住宅4棟が土砂に巻き込まれ、6人の命を奪った。崩落現場は急な斜面の山麓に住宅が集まり、県が土砂災害特別警戒区域に指定していた。

 地元のJA下郷によると、現場周辺は米作りが盛んな場所。緩やかに蛇行して流れる川に沿って水田が広がる。

 被害者の捜索活動は4月下旬に終わり、自衛隊が撤退した今は、元の静けさを取り戻しつつある。だが、残った土砂に覆われた被災民家周辺は、今も規制線が張られている。崩壊直前の11日未明に土の崩れるパラパラという音を何度か聞いた人もいたが、予兆はなかった。

 中津市は今後も土砂災害が発生する可能性が高いとの理由から、金吉梶ケ原地区の5世帯13人に避難勧告を続けている。ただ、2日時点で避難所に人はいない。現場を巡回したJA職員は「突然の出来事に集落では今後を心配する声を聞く」と説明する。一方で「土砂災害特別警戒区域であっても、災害の前兆がないと避難のタイミングがつかみづらい」と住民の思いを代弁する。

 当初から自衛隊の待機場所や、助かった人が当面生活する住宅の世話などをしてきたJA。矢崎和廣組合長は「こんなときこそJAがあって良かったと言ってもらう取り組みをすることが、JAが地域に存在する理由」と強調する。

 例年6月5日ごろに梅雨入りする九州北部地方。大分の山崩れを受け、警戒の余波が広がる。福岡県は急傾斜地や地滑り危険箇所のうち、山崩れ現場と同じ溶結凝灰岩が分布する109カ所を緊急点検に乗り出した。斜面に亀裂や落石がないか目視で確認し、住民に予兆現象がないか聞き取る。必要に応じ対策工事を検討する考えだ。
 

「極めてまれなケース」 でも… 防災意識 常に持って


 林野庁、大分県と4月27、28日に現地調査した日本地すべり学会は29日、山崩れの原因を「地下水が土壌を軟らかくしたことが要因の可能性がある」と発表した。同会の落合博貴会長は「豪雨の影響などと違い、極めてまれなケース」という。崩れた斜面に地下水が湧き出ていて岩盤が軟らかく粘土化していたことから長年の地下水の浸透が深層部で進行していたためだろうと分析した。

 現地の地質は、火砕流が火山灰や岩などを巻き込んで固まった溶結凝灰岩などの火砕流堆積物が主体だ。崩れる直前2週間の雨量は合計6ミリで、調査チームは地盤が緩む降雨量ではなかったと判断する。

 同会長は「地下水は地表からは見えない。災害につながる要素が地下水以外に見つからない以上、災害発生予測は困難だった」と結論付ける。また「周辺の同じ地質・地形で同様の災害が起こるとは考えにくい」と話す。
 

詳細はこれから


 林野庁は事業費約2億円をかけ、同県と共に崩落部分の地質構造や地下水の状況などの詳細調査を始めた。調査結果に応じ、崩れた斜面上に格子状のモルタル・コンクリートを造成するなどの対策工事をする方針だ。

 同庁治山課によると、山地災害の発生件数は全国で毎年2000件以上に上り、9割が豪雨や台風が発生しやすい4月末から10月末に集中している。大雨などにより、山崩れや地滑り、土砂流出などの可能性がある山地災害危険地区は全国に18万カ所以上。近年はゲリラ豪雨なども頻発しており、災害が頻度を増す可能性もある。同課は「大雨や地震が起きたときに、土砂災害への警戒や避難の態勢を取れるよう、自治体や住民が防災意識を持つことが重要」と呼び掛ける。

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