米国の日本食事情 独自発展 見守りたい 特別編集委員 山田優

 「テキサス州の東京にようこそ」

 先週、米ニューヨークタイムズ紙の「食」を紹介するページに、テキサス州都オースチン市で急増する日本食レストランの記事が載った。それによると、おいしい地元レストランの順位付けで、上位25店のうち六つが日本食店になるほどの人気ぶりだという。

 日本人が同市の人口に占める割合は、わずか0・2%。日本人がブームに火を付けたというよりも、日本食を地元の人たちが受け入れたと報じている。

 同市の繁華街から車で10分ほどの所にある酒蔵を、2月に訪ねた。倉庫の一角に置かれた小さなステンレス製のたるで清酒を醸造する。小売店に卸す他、週末の夕方には工場の前で店を開く。普通の清酒の他、にごり酒、ウイスキーたるで香りを付けたものがあって、地元の若者や食通で混み合っていた。

 酒造りをするのは地元の若者たち。原料米はカリフォルニアの中粒種。こうじ菌でもろみをつくり、酒を絞る手順は日本と同じだ。店の価格は日本の居酒屋と同じような水準だった。

 彼らは日本で酒造を学んだ経験がない。温度計やタイマーを片手に手探りで酒造りに取り組んできた。たまたま通り掛かった地元に住む日本人女性が、実家のどぶろく造りの経験を伝授して、味が洗練されたと聞いた。だが、実際に口にすると、べちゃっとした甘さが口の中に残り、お世辞にもおいしいとは感じなかった。

 地元弁護士と相席になった。彼は清酒をうれしそうに口に運びながら、テキサスで広がる日本食ブームを解説してくれた。次から次に出てきた料理の名前はなじみがないものだった。タイムズ紙の記事でも、人気のレストランで提供される料理の多くが、地元の食材や調理方法と融合した「テキサス風日本食」だ。

 オースチンに限らず、米国各地で日本食の人気が高まっているのは事実だ。ただ、食文化が異なる場所で新たに裾野を広げるには、本家と異なる姿になることは珍しくない。日本の「中華」や「洋食」を見ても、オリジナルとは違う発展の道を歩んだ。「テキサスの東京」で広がる「日本食」の行方も目くじらを立てずに温かく見守りたい。 

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