定年帰農者に柿託す 自園提供し技指南 静岡県函南町山本光男さん

柿の剪定(せんてい)について話し合う山本さん(左から2人目)と塾生ら(静岡県函南町で)

 優良な柿園地を良い状態のまま残していこうと、ベテラン農家が自分の園地を定年帰農者らに提供し、栽培や販売の経験を積んでもらう仕組みが静岡県函南町で定着してきた。機械を使い、第一線の専業農家とほぼ同じ環境が整っているとあって、優良果樹園を守る担い手“候補生”として約10人が管理に携わる。技術を持った人員を地域につくり、園地維持につなげる狙いだ。

 このベテラン農家は、農水省の「農業技術の匠(たくみ)」にも認定されている山本光男さん(83)。2001年から個人的に講座を開いたり、13、14年には静岡県東部農林事務所主催の農業塾の講師も務めるなど、人材育成に力を注いできた。

 講座や塾で山本さんから指導を受けてきた定年帰農者らが、栽培や販売の経験をさらに高めようと山本さんの条件の良い園地を借り、管理作業に励んでいる。こうしたOBらは14年に「農の匠塾柿部会」を発足させた。山本さんを顧問に招き、助言を受けながら園地の一部を管理する。

 定年帰農者が部会に集う理由の一つが、まとまった資金がなくても好条件の土地で、専業農家と同じ農業経営を経験できる点だ。園地は日当たりや風通しが良く、10アール当たりの木が18本程度となるよう植え付けている。部会は山本さんの農園の3分の1を担当。トラクターや高枝切りチェーンソーなどの農機具も山本さんから借りる。

 収穫した柿は部会員らで販売する。半分をオーナー制度でさばき、その他をイベントや直売所で販売する。売り上げから農薬や肥料の代金を捻出している。部会員の一人、内田進さん(78)は「高い技術を学びながら本格的な農業を実践できる。ここまで任せてくれる農家は少ないのでは」と喜ぶ。

 今年からはさらに3分の1に当たる70本を、塾生で柿園を持たない大橋正利さん(62)が引き受けている。大橋さんは「扱うのは、50年かけて高い技術で管理していた木。技術を学びながら将来に残したい」と意気込む。

 山本さんには息子がいるが、企業勤めで定年後に就農するかは分からない。就農しない場合は塾生らが管理し、就農する場合は塾生らが技術を伝え共に柿園管理を手伝ってもらうことを考えている。山本さんは「果樹園は一度荒れると元に戻すのに時間がかかる。技術と農地を引き継ぐ人を育てていきたい」と話す。

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