日中韓FTA 競争ではなく共生を

 東アジア情勢が急転する中、日本と中国、韓国による自由貿易協定(FTA)交渉が加速する兆しが出てきた。日本は北朝鮮問題で蚊帳の外に置かれるなど東アジアでの存在感が問われており、FTAを通じて同地域の経済連携を築けるか注目される。日本は自由化水準の引き上げを迫るが、柔軟な対応により、特に農業では各国農家の共存を重視すべきだ。

 3カ国の首脳は共同宣言で、日中韓FTAについて「交渉を加速すべく一層努力する」ことを確認した。同FTA交渉は2013年の立ち上げから足掛け5年以上続いており、妥結には強い政治的意思が必要だ。これまで合意ができなかったのは、関税撤廃の水準を高くしたい日本に対し、自国産業を守りたい中国と韓国が対立しているとされる。膠着(こうちゃく)を解きほぐす歩み寄りが欠かせない。

 日本が同FTA交渉への意欲を強めるのは、環太平洋連携協定(TPP)と同程度の高水準の自由貿易圏をアジアに広げたい一方、中国と韓国が2国間FTAを15年に締結し、遅れをとった焦りがあるからだとされる。中韓FTAの関税撤廃率(自由化率)は90%程度。日本が95%もの関税撤廃を余儀なくされたTPPと比べると、重要品目などに一定配慮する柔軟路線を選んだと言ってよい。

 にもかかわらず、日中韓FTAにTPP並みの自由化を迫ることは、3カ国の連携を強めるどころか、弱肉強食の関係を持ち込むことになりかねない。

 同FTAの歩みを、改めて振り返りたい。交渉立ち上げに当たっては、産官学共同研究で、①バランスの取れた成果とウィンウィンの状況を目指す②各国の慎重を要する分野に配慮する――ことを提起。15年の日中韓農相会合では、食料純輸入国という3カ国の共通点から「国内生産力の着実な増大が食料安全保障の確保に非常に重要との認識を共有した」とする共同声明を採択した。自由化一辺倒のTPP交渉にはなかった、相互理解の努力を重ねているのが日中韓関係の特徴であり、こうした視点を今後の交渉にどう反映するかが進展の鍵を握る。

 日本農業の立場からも、自由化一辺倒は危険が大きい。中国の米生産量は2億1109万トン(もみベース)で、日本の約26倍。国内消費がほとんどではあるが、対日輸出に意欲を持てば脅威となる。野菜や加工食品は低価格を武器に既に多くの中国産が日本市場に入り込み、さらに関税削減・撤廃されれば国内産地の打撃は免れない。

 こうした生産力の大きな違いを抱える一方、日中韓は家族農業が主体で1戸当たりの経営規模が小さいという共通点がある。国内生産の持続的な発展には過度な競争ではなく、バランスある協調が必要だ。米国追従の外交で競争ばかりを追う姿勢を改め、東アジアでの共生を目指した本来の日本外交に今こそ転じる時ではないか。 

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