森林経営管理法案 現場の不安拭う審議を

 木の手入れができない森林所有者に代わって市町村や民間業者が伐採できるようにする森林経営管理法案は16日、参院で審議入りする。森林管理を大胆に変えるもので林業関係者から不安や反発も聞かれる。国民理解へ審議を尽くすべきだ。

 国土の3分の2を占める森林は、木材の生産に加え、二酸化炭素の吸収や水源の涵養(かんよう)、土砂災害の防止など多面的機能を果たしている。国民の貴重な財産でもある。

 きちんと維持・管理するには伐採や造林、間伐などの手入れが重要だが、木材価格の低迷や林家の後継者不足によって手つかずの民有林が目立っている。伐期を迎えた山でも主伐の予定がない所有者が半数に及ぶ。このまま放置はできないという林野庁の問題意識は理解できる。

 一方で、法案は市町村や民間の事業者に伐採のための「経営管理権」や「経営管理実施権」という新しい権限を与えるもので、これまでの林業政策にはなかった制度である。関係者に疑問や不安があって当然だ。

 伐採は所有者の同意を前提としながらも、同意が得られなかったり、所有者が分からなかった場合でも、市町村の勧告や都道府県知事の裁定があれば伐採できる特例を設けた。この点を巡り、森林管理が進むことへの期待がある半面、「過剰な伐採が進み丸裸の山も出てくる」「小規模林家の排除につながる」などの声が関係者から出ている。政府は不安や指摘にきちんと答える必要がある。

 大きな役割を担うことになる市町村からも懸念が出ている。衆院での参考人質疑で尾崎正直高知県知事は「林業専任の職員がゼロの市町村が半分以上」と林業行政の実態を説明した。専門的知識を備えた人材の確保をどうするか。また、実際に伐採や造林をする林業労働者の育成も大きな課題だ。人材が限られる地方自治体に押し付けるようなことがあってならない。

 政府は林業の成長産業化を意気込むが、せっかく成長した木材の「乱伐」で豊かな森林を荒廃させることにつながってはならない。造林しないまま「切り逃げ」することのないように、民間の伐採業者に対する国の監督責任を明確にすべきだ。 

 新しい森林管理のシステムを構築する過程で、関係者への周知や意見聴取が十分だったかも問われている。「(法案の)中身が分かったのは国会審議直前だった」(全国森林組合連合会)との声もあり、こうした進め方は現場軽視とも取れる。

 農政改革関連法と同じように、当事者との意思疎通が不十分なまま、規制改革推進会議と官邸主導で押し通す手法には批判が強い。参院は現場の声を踏まえ丁寧な審議を行うべきだ。

 この法案は2024年度から導入する森林環境税と深く関わる。政府・与党は今国会の重要法案に位置付け早期成立を目指すが、関係者の不安払拭(ふっしょく)も重要である。

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