中国向け米輸出 指定施設の拡大生かせ

 日中両政府が日本産米の輸出施設を増やすことに合意した。日本から巨大市場への間口が広がろうとしている。

 人口減や高齢化で米の国内需要が減退する中、米業界は海外、とりわけ中国市場に活路を見いだそうとしている。全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会によると、中国の年間米消費量は約1億5000万トンで日本の20倍。日本食レストランは2万3100店、在留邦人は13万人を超える。現地消費は長粒種米が主流だが、近年は生活水準の向上に伴い、短粒種の消費が急増中だ。日本産米の潜在的な需要量は他国より段違いだ。

 中国市場は検疫など非関税障壁が最大の課題とされてきた。米を輸出するには、中国側に認められ農水省が指定する精米工場での精米と、薫蒸倉庫での害虫駆除が義務付けられている。国内では2007年に、精米工場は全農パールライスの神奈川工場の1カ所、薫蒸倉庫は2カ所が初指定された。以来11年間、追加がなかった。今回の合意でそれぞれ計3施設、計7施設に増える。薫蒸能力は現状の年間7000トンから2万トンに拡大。輸出拠点が各地に広がり、産地からの輸送効率が上がる。

 米卸業界には歓迎ムードが広がっている。精米工場の指定を受けたホクレンは「中国市場に売り込みやすくなる」と評価。市場調査を進め、北海道産ブランド米「ゆめぴりか」などの販売計画を立てていくという。米卸・神明グループも「早ければ7月下旬から北陸産コシヒカリを輸出したい」と意気込む。25年度までに日本産米の中国向け輸出量1万トンを目指す。

 一方で、輸出施設追加の効果を巡っては「限定的」と冷静な受け止めも多い。中国は依然、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う輸入規制で、宮城や新潟など10都県からの農畜産物や食品の輸入停止を続けている。米の主産県が多く、輸出できる産地は限られたまま。規制の全面解除とは言い難い。政府は輸入停止措置の見直しを粘り強く求めていくべきだ。

 期待感が膨らむが、中国への米輸出量は17年が298トンで、燻蒸能力の1割にも届いていない実態がある。現地で生産される「あきたこまち」や「コシヒカリ」に比べ、日本産米は4倍もの値段でスーパーに並ぶ。食味の優位性があっても、この価格差はあまりに大きい。

 輸出にかかわる生産・販売の総点検に取り掛かる時だ。18年から輸出米に10アール2万円の新市場開拓助成が新設されたが、競争力を付けるには十分ではない。関係者の共通認識だ。中国で急速に広がる国をまたいだネット通販「越境EC(電子商取引)」への対応も求められる。

 政府は19年までに米輸出目標10万トンを掲げた。官民挙げた本気度が問われている。中国に開いた販路を太く、長続きさせるには産地を越えたオールジャパン戦略を磨くべきだ。JAグループへの期待も大きい。 
 

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